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227 ナニか光るモノが

 私とアークシュリラがイルーツから南の方にカヌーで飛行をしていると、砂漠地帯でサーブルヴェールドゥテールやサーブルミルパーツとスコーピオンの三匹が戦って居る所に遭遇した。


「アークシュリラ、どうする? 見ていく」

「うん。砂が来ない位置で見ていようよ」

 私たちはカヌーの高度を上げて、三匹の戦いを見学するコトにした。


「サーブルヴェールドゥテールは、この二匹が相手だと分が悪いね」

「そうだね。サーブルヴェールドゥテールはあんな大きいモノは食べないからね」


 サーブルヴェールドゥテールはミミズの魔物なので、通常は口から大量の砂を吸い込んで、それに混じる小さな生き物などを食べている。

 その為に、サーブルミルパーツやスコーピオンたちの様な凶悪な武器を持っていない。

 サーブルヴェールドゥテールが出来るコトは、砂を吸って相手に吐きかけるくらいだ。


 なのでサーブルヴェールドゥテールは幾度となく、砂を吸ってはその二匹に向かって吐きかけている。

 サーブルミルパーツやスコーピオンも砂漠に暮らすモノなので、砂を浴びたからと言って目の前に居る獲物を諦めるハズはないけど……でも、目くらましには有効な様だ。


 サーブルミルパーツは鋭いキバで、スコーピオンに噛みついている。

 スコーピオンもサーブルミルパーツへハサミで体を切ろうとしている。

 それらの攻撃も、両者とも素早い動きで、幾度となく躱してもいる。

 この二匹は一進一退だね。

 もともと、この二匹が戦って居たのかなぁ。


 三者三様の攻防を繰り返している。


「結構、動きが速いね」

「そうだね。砂の上であれだけ早いと、アークシュリラでも苦戦しそうだね」

「そこが問題だよ。普通の地面なら良いけど、砂の上だと駆けたり踏ん張ったりするのは大変だよ。それに跳ねるのもね」

 アークシュリラはそう言いながらも、視線は三匹をずっと追っている。


 サーブルヴェールドゥテールは二匹が戦って居る隙に逃げようとしたのか、動いた際にスコーピオンの長い尾がサーブルヴェールドゥテールの体に突き刺さる。


 サーブルヴェールドゥテールの体は、他の地域に住むヴェールドゥテールと違い固い。

 だがしかし、スコーピオンのハサミやサーブルミルパーツのキバによる攻撃を受けていたので、ケガもところどころしている。

 いくら固くても、何度も攻められては耐えられる訳はない。


 次第にサーブルミルパーツとスコーピオンは、互いを攻撃するのをやめてサーブルヴェールドゥテールに目標を定めたみたいだ。

 5分も経たないウチにサーブルヴェールドゥテールは動かなくなった。


 そして、二匹は喧嘩をするコトもなく、サーブルヴェールドゥテールを食べ始める。

「食べられちゃったね」

 アークシュリラが悲しそうに言った。

「仕方ないよ。相手が悪かったからね」

 私はそう答えた。


 おこぼれをもらうつもりだろうか、鳥や小さな生き物たちも直ぐにやって来た。

 連絡をもらっている訳ではないから、ここにエサが有ると分かる才能には驚くばかりだ。

 私たちでは少し離れたら、絶対に食べ物があるかは判らない。

 この距離で有っても、私はまったく匂いは感じないのだからね。


 私たちは、しばらく空中でその様子を見続けた。

 そして、サーブルミルパーツとスコーピオンはしばらく食べていたが、あるていど食べると食事をやめて別々の方角へ去っていった。

 今まで周囲で待っていた生き物たちが、残りを食べ始める。


 倒したモノが去るまでは、誰も手出しをしなかった。

 下等と思われる生き物にはルールなどないと感じる時もあるが、きちんと決まりごとは守っている。

 これは生き物たちのルールなのだろう。

 イヤ、マナーと言うのかも知れない。


 それに、サーブルミルパーツとスコーピオンも、サーブルヴェールドゥテールを食べ尽くすコトはしなかった。

 普段は気にもとめないことだが、ゆっくり観察をすると、自然界は決まりごとだらけなのかも知れない。

 それを、私たちがナニも理解していないだけなのかもね。


 小一時間も経たないウチに、サーブルヴェールドゥテールは外骨格だけになった。

 しかし、これもいつかは無くなる。


「ゼファーブル。それじゃ行こうか?」

「アークシュリラ。真剣に見ていた様だけど、どうだった」

「魔物同士の戦いばかりに目を盗られるけど、倒されるモノには悪いけど、あれ程の生き物たちの命を紡いでいるから倒す意味があるんだね」

「そんなコトを考えていたの」

「そうだよ」


 私たちはカヌーをUターンさせ様と進んだ。

 さっきはここで砂が来たんだよねと思い、私は地上を見る。

 三匹によって砂が掘られた所に、ナニかが光っている。

 それは、自分から光り輝いている訳ではなく、ちょうどこの場所で太陽光の反射が上手く私の目に届いただけだ。


「アークシュリラ。待って、地上にナニか光り輝くモノがあるよ」

「えっ、どこ?」

「あのへこんだ所」

「あっ、あれだね」


 私たちはその光り輝くモノがある場所に下りて行った。


 それは半分以上が砂に埋もれているけど、金属で出来たナニかの円形プレート? だった。

「鏡かなぁ」

「それっぽいよね。鏡か、ただのプレートかは、裏を見れば判るよね」

 私はその金属プレートを手にとって裏返してみたところ、砂の中に有ったとは思えないほどキレイに私の顔を写していた。

 やはり鏡の様だ。


「アークシュリラ。全くキズが付いていないよ」

 そう言って、鏡をアークシュリラに渡した。

「これって、金属だよね」

「削って成分を調べた訳じゃないけど、非常に軽いしキズが一つも付いていないコトから、鉄などの普通の金属ではないと思うよ」

「そうかぁ。でも魔力は感じないよ」

「そうなの?」

 アークシュリラは鏡面部分や裏側にも、手を副えて魔力が残って居るかを調べた。


「うん。魔力は込められてもいないし、前の持ち主も魔法はこれの周囲では使っていない感じだね」

「その図柄って見たコトがあると思うけど、ナンだっけ」


 鏡の裏側にある文様は、中央に四重の円が有って、その中央にある円の内側は若干丸みを帯びている。残りの円はそれぞれ違う金属が貼り付けられていて、一番外側の円に接する様に十六個の細長い二等辺三角形が囲んでいる文様が大きくデザインされている。

 これは、きっと太陽を現しているのだろう。

 マークを囲む様に蔓草や花もあるが、これはただの意匠かなぁ。

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