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223 ホムンクルスって

 イルーツのある処は、旅人たちが良く通る街道沿いにはない。

 それに一番近い街でも、ここから何日も行かないとならない。

 ないない尽くしだから、光のモノたちは戦いによる被害を減らすタメに、この地で闇のモノたちと戦い、そして封印した訳だけどね。


「アークシュリラ、ホムンクルスたちはどんな感じ?」

「決まった作業は確実にやってくれているよ。考えられないとゼファーブルは言っているけど、料理は出来るから判断力は有るんじゃないの」


 確かにホムンクルスやゴーレムは、判断が必要な作業も行える。

 そもそもナニかを守るタメに作られるコトが多く、それらを守るタメに戦う場合もある。

 戦闘と云う相手とのやり取りは、臨機応変の対応が必要なコトだ。

 それが出来るのだから、ホムンクルスたちが喋らないと言うだけで、私は大いなる勘違いをしているのではないだろうか。


「そうだね。喋れる様になれば、もっと活用の範囲は広がるよね」

「そう。あいつらがナニを考えているかは、読解系の魔法を使えば判るけど、その度に魔法を掛けるのは手間だよ」

「喋らす方法ねぇ……」


「その方法だけど、鳥や動物たちと同じ構造を作るのは大変だから、その様にしなくてもいいと思うよ」

「だとするとエレメントなどが使う、思念系の会話になるけど」

「それだと大勢のモノにも聞こえるよね。一対一での会話には向かないよ」


 思念系の会話は、ある範囲内にいるモノに語りかける方法だ。そして、その音が聞こえる範囲は決して狭くはない。

 私たちの使う念話と違って、脳へ直接的に語りかける訳ではないからだよ。

 それは、空間の一部が語りだす感じかなぁ。

 だから食堂で複数体のホムンクルスが喋り出したら、音声が室内で重なり合うので言っている内容を理解するコトは不可能だろう。


「ホムンクルス自体から、音声が出る様になれば良いんだね。口からだと少し難しいけど、作って見るよ」

「口とはいかなくても、最低でも頭部から出ていると良いよね」

「挑戦してみるよ」


 私はアークシュリラと別れて、窪地の公園にある滝が見えるベンチに向かった。

 そして、一人になって考えてみる。


 ホムンクルスは、通常だと動物の肉から抽出したアイヴァイスや化石を加工したコーレンシュトッフなど、いくつもの材料を調合して作る。

 そして出来上がったままだと見た目が悪い場合も有るから、外骨格と言うか、ガワを見栄え良く整えるんだよ。


 なので、内臓は基本的に作っていないから、声を発する器官もない。

 でも、脳みそがない状態で考えられている……

 一応口があるのだから、もしかしたら食事も出来るのかも知れないなぁ。


 しかし、話すようにしたら、うるさくないだろうか。

 もしかしたら、昔のホムンクルスは喋れたけど、人間より賢くって今の様になったかも知れないね。


 喋れれば便利だけど、アークシュリラやヴェルゼーアと互角に近い戦いが出来るモノたちだ。

 考えれば考えるほど、人間に近いモノを作ってはいけない様な気もする。

 それは、云うコトをきかなくなる恐れがゼロではない現状では、作るべきではないと思う。

 もしかすると、材料の中に、所有者に刃向かわない成分があるのかなぁ。

 さすがに成分の分析はここでは出来ないので、私の部屋に行くことにした。


 アイテム袋に入っているホムンクルスの素材を取り出して、一つ一つの分析を始めた。

 アルコールランプを使い、加熱をしたり蒸留をしたりもしたし、杖を使用して分離や加圧もしたよ。

 それでも、これだと云う物質は発見出来なかった。

 いったい刃向かわない成分って、ナンだろう。


 成分分析では、私の求めている結果を得られなかった。

 このままこの実験を続けても堂々巡りをするだけなので、私は気分転換をすることにした。

 実験道具を隅に追いやり、私は頭だけのホムンクルスを作った。

 それで、ホムンクルスが本当に見たモノや聞こえたコトを理解しているかの調査を始める。

 手足がなければ、刃向かって来たとしても対処することは出来る。


 先ずは、目で見たことや耳から聞こえた音が判っているかだ。

 その頭部に思考読解デンクンレーザファスタンダスをかけた。

 そして、様々な音を聞かせたり、文字を見せたりを幾度となく繰り返した。

 更に朝や夜など時間を変えて、この実験を幾度となく繰り返したよ。

 その作業に私は数日を要した。


 ホムンクルスの目も耳も、ただの飾りで無くきちんと機能している。更に、目や耳から入ってくる情報を理解していることが判った。

 やっぱり判っていたんだね。

 でも、ナゼ目や耳が機能して、更に理解が出来るのか不思議だなぁ。


 そこでレファピテルにゴーレムを一体、こっちは頭だけとはいかないので、手足のないモノを作ってもらった。


 魔法使いが作るのがゴーレムで、錬金術師(アルケミスト)が作るのがホムンクルスと云う訳ではない。

 土や金属などの無機物に魔力を込めて作ったのがゴーレムで、アイヴァイスやコーレンシュトッフなどの有機物から作ったのがホムンクルスだ。

 なので、私もゴーレムは作れるが、今回はレファピテルのゴーレムで実験をしたかったんだよ。


 ゴーレムにも思考読解デンクンレーザファスタンダスをかけて、同じ様に調べ始めた。

 こっちも何日かをかけて調べたよ。

 やはりと言うのか、本当にと言った方が良いのか、ゴーレムも目や耳からの情報を理解しているコトが判明した。


 まぁ、ゴーレムも戦う場合があるのだから、相手がどこにいるのかが判らなければ話にならない。

 なのでホムンクルスと同じ様に飾りではなくて、それぞれの器官が機能をしているのは理解出来る。


 だとすると、目や耳などの器官だけが機能するのか、それとも神経なども機能しているのか知りたくなった。

 そこで、私は杖やダガーをホムンクルスやゴーレムに、軽く当ててみる。

 私の思った通り、ナニかが触れた感じも判っている様だった。

 それを、一回だけでなく何回も行った。

 天気や時間によって変化がないかを知るために、これも数日をかけたよ。


 これは新発見だ。

 どの書物にも、ホムンクルスは痛みを感じないと書いてある。でも、実際は痛いとは言えないだけで、しっかりと感じている。

 でも、それが痛いと云う感覚はないのかも知れない。


 それなら子供の様に時間をかけて教育をすれば、喋れる様にも計算も出来る様になる。

 しかし、ホムンクルスやゴーレムを作るモノたちは教育をしないから喋れないし、計算なども出来ないだけだ。


 この問題は時間こそ掛かったが、簡単に片付いた。しかし、刃向かわない方はまだナニも判っていない。

 幾度となく素材を分析しても、一向に原因は判らない。


 考えるコトが出来るのなら、命令が不条理だったら、やらなくても良さそうなモノだけど……

 これが解決したら、イルーツ周辺の警備など、もっとたくさんのコトを任せられる。


 そこで、今までにホムンクルスやゴーレムで判ったコトを、レファピテルにも教えた。

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