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222 ホムンクルスたちで、実際にテストをする。

 私はアークシュリラに頼まれて、数体のホムンクルスを製作した。

 アークシュリラはそれに知っている料理を教え込むと、レファピテルやビブラエスにも依頼して、更に作れる料理のバリエーションを増やす。

 数日の間、私たちの食事をそれに作らせて、味に問題がないことが判ると食堂の厨房を任せるコトにする。

 もちろん、今まで食堂で働いていたモノたちには、確認を取って実施した様だ。

 ホムンクルスが実際の作業でどこまで対応出来るかとか、出来ないかを実際に確認しだした訳だよ。


 ここの食堂で提供される料理は、麺類とパンなどの軽食、それに定食の三種類しかない。日によって提供される料理の品目は替わるが、その日に出されるのは基本的に各種類で一品だけだ。

 その上、料理は種類別にカウンターが別れているので、並んだモノたちに決まった料理を提供するだけで良い。

 なので、客ごとに注文を聞く必要はないし、お店の様にいくつもの料理を作るコトもない。


 そうなので、命令もこの料理を作ってと至って簡単だから、ホムンクルスだけでも対応が出来ると考えた様だ。

 それにホムンクルスは人間と違い、24時間休みなく作業をやらせるコトが出来る。

 仕込み作業も夜とかの客のいない時間にやれば良く、寝る前や早起きしてやる必要はない。

 そう、その料理を提供するまでに終われば良いので、人がやっていたときの様に時間を気にしなくて済む。

 それでも、さすがにホムンクルスは料金の計算は出来ないので、元厨房の人が会計だけは行っているけどね。


 ここも、食堂だけを整備した訳ではない。

 エンギルたちが抜け出た穴は、奥の院のモノや私たちで残骸などを取り除いたり、スロープを作ったりして整地を行い窪地の公園にした。

 地形を生かして、所々に滝もあるよ。

 今、そこを維持するタメの作業をしているのは、主にレファピテルの作ったゴーレムたちだよ。

 こっちも、どこまで複雑なコトが出来るかの実験を兼ねている様だね。


 私も実験に協力するために魔法を使わずに、前からある滝をゴーレムたちに改良させて、湖とか川を作ってクーリツァを放し飼いにしている。


 そんなコトをしていると、ハルメニア王国の国王が西の拠点をガララバ、ここをイルーツと名前を決めたとヴェルゼーアたちが言って来た。

 そもそも名称について気にしてなかったコトもあり、ファリチスでも別に反対をするモノはいなかったらしい。

 それを伝えに行ったヴェルゼーアたちは、ファリチスに残していた私物をまとめ、家を(おさ)に譲ってイルーツを居所に定めた。


「ヴェルゼーア、あなたたちはファリチスにいても良かったんだよ」

「もう、蒸留はファリチスのモノだけで出来る。それに周辺の国や村との間に問題もないから、私たちがあすこに居てもやるコトはないよ」

「ここでも蒸留酒を造るの?」

「それはゴーレム次第なので、今は判らんな」

「ゴーレム次第かぁ。それじゃ、判んないよね」


「ゼファーブルたちは、また旅をするのか」

「すると思うよ。少しの旅でもいろいろと経験出来たしね」

「そうだな。ガシララ王朝や神々についても多くを知ることが出来たし、私も魔法を使える様にもなったしな。同じ処にいたら無理だったかもな」

「私の薬や治療が必要な人たちを救いたいんだよ。それに少しでも多くのコトを見聞きして、知り得たコトを後世に残すのも錬金術師(アルケミスト)として必要だと思うの。私の中でも、そう云う気持ちも大きくなったんだよ」


 もともと錬金術師(アルケミスト)は、研究をするのが好きなモノがつく職業だ。

 定住してそこで薬を作るコトもあるが、旅をしている人も結構居る。

 私の両親もそうだった。


 それは、自分の作った薬で多くのモノを救いたいと言う、その職業に就いた根本的な理由だ。

 または、本当に書物に書いてあるモノで、きちんと薬が作れるかとか、違うモノや方法で作れないかとかを知りたいと云う場合もあるよ。


「剣士も自分の技を磨くため旅をするモノもいるし、誰かに仕えるモノもいるな。なのでゼファーブルが旅をするのを止めないし、止める権利は私にはない」


 “そうだよ”と答えれば良いのか、“じゃ、一緒に行こう”と言えば良いのか、私はヴェルゼーアの発言した真意をはかりかねて、話題を変えた。


「ハルメニア王国は、イルーツをどう云う感じにするつもりなの」

「特に決まってはいない。この地にエンギルたちが封印されていたのは事実だが、魔力が他の場所と比べて強い訳ではないらしい。それに、ガララバもそうだが、ここもハルメニア王国の領土と云う訳でもないからな」

「国から人々を派遣しているから、飛び地にすると思ってたよ」

「領土にすると、管理や治安を維持するモノなども派遣しないといけない。それなら反抗的でなければ、今のままで充分だ」


 ハルメニア王国としては、領土が欲しい訳ではない様だ。それにこの地が、戦略的に重要とか政治的に必要と云う訳でもないらしい。

 それならお金を使って、この地を統治する必要はないのは判る。

 その上、派遣して居るモノを、いつでも国へ呼び戻すコトも出来るよね。


「そうなの。じゃ私たちが好き勝手にやっても、特に国王とか重鎮から文句を言われるコトもないんだね」

「そうだ」


 それから私たちは、滝やクーリツァとかを見て別れた。


 レファピテルやアークシュリラの実験は、可もなく不可もない状態が続いている様だった。

 そもそも、そのモノたちがやれる作業は限られているので、両方とも数自体も増えてはいない。

 増えたのは、クーリツァぐらいだね。

 なので、卵を使った料理が提供される頻度が、とても多くなった。

 もう少ししたら、クーリツァ自体が出て来るかも知れないね。


 アークシュリラが料理の仕方を教えているので、ホムンクルスの作る料理は美味しい。

 しかし、毎日玉子料理を食べるのは、さすがにキツイよ。

 まぁ、イルーツの住民以外も食堂で食べるコトが出来るから、それでナンとか消費をしている感じだ。

 最近はクッキーとかプリンなども作って、傍でお茶と一緒に提供もしている。


 ゴーレムたちは公園や通路となる道などの整備をする以外に、周辺に広大な畑も作ってもいる。

 こっちも24時間休みなく作業が出来るので、食べきれないほどの作物が出来たら、レファピテルやビブラエスが村人と一緒にどこかに売りに行っている。

 道とか広場や公園に日陰を作るタメに植えた木々も、実をつけるモノを中心に選んでいるので、最近は小動物たちがやって来ることもあるよ。

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