220 レファピテルに確認をする
私たちはレファピテルを見付けて、疑問点を聞くことにした。
「レファピテルなら私たちの協力がなくても、巨大なカヌーは造れるよね」
「出来ますが、私たちが勝手に造って良いのですか」
「別に構わないけど、もしかしたら造りたくはないの」
私たちが造らなくても、きっと巨大なカヌーはいつか造られる。
それは国王とか貴族が乗船する場合だよ。
今の様に一人乗りだと、そう言う人が乗った舟が急に落下した場合など、緊急時に対応するコトが出来ない。
なので、操縦するモノがいた方が安心ができる。
ついでに、側用人や身の回りの世話をするモノも乗船するかも知れない。
さらに空中と云うことでスパイとかも入りにくいことから、移動だけで無くて密談とかもし出すかなぁ。そうなると王様の身を守る、近衛兵も乗るコトになるよね。
移動するのに要らないモノをイロイロと乗せていくと、その舟は巨大化するしかなくなる。
「そうですね。気持ち的なモノですね」
気持ち的って、造りたくない理由なのだろう。
どう言うことなのか、レファピテルに詳しく尋ねても平気だろうか。それとも触れられて欲しくはないから、こんな曖昧な答えなのかなぁ。
言いたくない場合でも、レファピテルなら聞けば答えてくれると思う。
でも、云いたければ聞かなくても、話し出すよね。
それで、私はカヌー以外の方法を聞くことにした。
「じゃ、転送装置は?」
「ヴェルゼーアが嫌がってますね」
「レファピテルはどうしたいの? ハルメニア王国とエントラント王国との交易はイヤなの」
アークシュリラが、正面から両手をレファピテルの肩に添えて尋ねた。
「良く判りません。以前でしたらハルメニア王国の発展が期待出来るので、寝る暇も惜しんで良い方法を探していると思うのですが……」
「そうかぁ。それだったら、考えるのをやめたら良いよ。オーラガニアもきちんと運んでくれるハズだしね」
「そうですか」
「レファピテルは自分の気持ちにウソをついてまで、頑張る必要はないよ。私もゼファーブルもだけど、イヤなことや気乗りしないコトはやらないからね」
レファピテルにこの件を聞き続けるのは悪い様な気がするので、私たちは聞くのをやめた。
「ところで、ヴェルデムベゼラに作ってもらったケース何だけど、この魔法陣が描かれていたんだよ」
私はアイテム袋から、ヴェルデムベゼラにもらった布を取り出して言った。
「その魔法陣は、私も頂きました布にありましたから知っていますよ」
「これって卵の中で雛の形が出来ていても、孵化するまでなら黄身と白身になるんだよ。ヴェルデムベゼラは逆にしてもダメだと言わなかったけど、無理みたいだったよ」
「ゼファーブル、違うよ。ヴェルデムベゼラに上手く話の流れを持っていかれただけだよ。で、これを参考にして、レファピテルは親鳥になるまでの時間を短縮出来ると思う?」
レファピテルは自分が所持している布をアイテム袋から取り出して、そこに描かれている魔法陣を調べだした。
私たちがその様子を見ていると、しばらくしてレファピテルがしゃべりだす。
「逆にするだけでは難しそうです。それにここいらが悪さしそうですね。なので、もし短期間で産まれたとしても長く生きられないでしょう」
「やっぱり無理なのかなぁ」
「アークシュリラはナゼ、これを逆に使いたいのですか」
レファピテルが問いかけて来た。
「これって時間を操作しているんだよね」
「上手く説明は出来ませんが、時間を操作するのとは違うと思います」
「そうなの」
「私の考えでは、この魔法陣は復元魔法の系統か、その応用と思います」
確かに復元魔法なら雛の形になっていても、黄身と白身の状態に戻すコトは出来る。それなら逆転させても、産みたての卵を直ぐに孵化させる様な効果は期待出来ない。
さすがはレファピテルだ、なるほどね。
「今日はありがとう、勉強になったよ」
そう言って、私たちはレファピテルと別れた。
レファピテルも今までの様にヴェルゼーアの言うことに闇雲に従う訳ではなく、自分の気持ちに素直に行動をしたいのだろうか。
やはり様々なコトがあったし、出来るコトも多くなったしね。
でも、決して遅い反抗期と言う訳じゃない。
だから、本人もいろいろと悩んでいる様だ。
どんな生き物だって、時間の経過にともなって成長をする。
今までやっていたコトとかやらなかったコトに疑問を持って、考えたり試したりする。
私もいろいろなコトがあったし、出来ることも多くなった。
それに伴って、やらなくなったコトややり出したコトもある。
それが良いコトなのか、悪いコトなのかは分からない。でも、それが進歩だし、成長だ。
少しでも成長をしなければ、生き物は存在して居る意味を失うからね。
これは私たちがとやかく言っても仕方ない。
でも、アドバイスを求められたら、答えればいい。
それを参考にして、レファピテル自身で解答を見つけないといけないからね。
それから数日が過ぎた頃、アークシュリラがやって来た。
「ゼファーブル。ホムンクルスって、幾つの料理を覚えられるの」
「教えれば幾つでも覚えるよ。アークシュリラの剣術相手だって突きや切り込みなど出来るでしょ。それに訓練をする度に、覚えていくよ」
「そうだったんだね。どおりで最初と比べて強くなったと思ったよ。で、料理は私がオムレツと言えばそれを作るの? それとも依頼をすることは無理なの?」
ホムンクルスやゴーレムは最初に指示を与えるが、度々指示をしないといけないコトはない。
特にホムンクルスは、自分で考えて行動をする。
「コトあるゴトに依頼はしたことはないけど、判断は出来るから注文を聞いてそれを提供するコトは出来ると思うよ」
「そうなんだね。でも、返事はしないんだよね」
「そう。だからホムンクルスが理解しているかは、料理が出て来て初めて判るよ」
ここを守れとかの簡単な指示を与えて、それを実行させるコトは出来ても、私の留守の間に掃除や洗濯をさせるコトは難しい。
ましてホムンクルスは洗ってはいけないモノとかの判断はしないから、きちんと洗うモノと洗わないモノを事前に分けておく必要がでるよ。