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21 教会を見学に行く

 私たちは徹夜でアンデッドとモランデティスの戦いを見ていたので、宿で少し横になって体を休めてから山へ行くことにした。


「アークシュリラ。山に行ってどうするの?」

「アンデッドがいると判ってるのだから、墓地を確認に行くんだよ。だってその墓に眠っているのは戦士って言うんだからね、だから先ずは教会だね」

 神殿ではナニも引っかかることはなかった。

 教会が自分たちの管理している墓地に眠る遺体を使っているとはアークシュリラは云ってないが、その言外にそれがにじみ出ている。

 私は宗教についてはよく理解していないが、宗教はそんなことはしないと思う。

 だから、その感じが信じられなかった。


 私たちは街道を歩きながら、墓地を眺めている。

 ここから見える墓場は、どこも雑草が生い茂ってはいない。

 教会がしっかりと管理している感じだ。

 と言っても街道から見えない墓も有るだろう。

 だから全ての墓を一つ一つ確認することは、ここからは出来ないけどね。


「ゼファーブル。あの墓は最近掘り直したね」

 その一角だけが、土の状態が明らかに他と違うことに私も気が付いた。


「あすこに眠っていたモノを使ったの?」

「棺桶が腐って土が埋没したから、直したかも知れないけどね。私たちが聞いても、『アンデッドとして活用しました。理由は……』って教えてくれないよね」

 教えてくれるなら一番楽だけど、それに期待するのは先ず無理だろう。


 少し歩くと教会の建物が見えて来た。

「ゼファーブルはこの祭神って判る? どんな宗教とかも」

「確かこの地方のほとんどの街や村は、光の神を祭神にしているエノミン教だったと思うよ。教義は万人を愛せと云う感じかなぁ」

「そう、判ったよ。ありがとう」


 私たちが教会の建物を見ていると、神父が一人やって来た。


「何か、私どもの教会にご用ですか?」

「いいえ。私たちは旅の途中で、歴史がありそうな教会が有ったので、失礼と思いましたが少し建物を眺めていただけです」

「そうですか。説明をしてあげたいところですが、私はお務めがありますのですみません。中も時間があれば見ていって下さい」

「ありがとうございます」

 神父は建物の中に消えた。


「ゼファーブル。さっきエノミン教って言ったけど、看板によるとここはサバラン教だね。サバラン教って知っているの?」

「全知全能の唯一神を祀っている宗教だよ。唯一神だから自分たちの神以外は存在を認めないよ」

「ここにも唯一神の宗教が有ったんだね」

「サバラン教以外にも、唯一神の宗教は他にも有るよ」


 私たちは建物の外観を見てから中に入った。

 そこは狭いホールになっていて、玄関の反対側に3つの扉が有った。


 神父が『中も見てくれ』と言ってたけど、扉が閉まってるね。どの扉が正解何だろう。

 アークシュリラは、一番近くの扉をためらいもなく引いた。

 ビックリしている私に向かって、アークシュリラは言った。


「折角来たんだから、礼拝堂も見ようよ」

「アークシュリラ、来たこと有るの?」

「教会って大きさによって、どこも同じ作りだからね」

 扉の中にあった部屋には、たくさんの長椅子が整然と並んでいる。

 周囲の壁には幾つもの絵画がかけて有った。

 アークシュリラは近くの絵画から見ていく、私はその跡を追った。

 アークシュリラは絵画を見終えて、祭壇の前に来た。

 その祭壇にはサバラン教のシンボルが掲げてある。

 私たちは、少しの間それを見続けて、そして、その前を通って反対側の絵画も見ていく。

 私たちは壁沿いを一周して、元の処に戻って来た。


「絵画は宗教画らしいモノで素晴らしかったけど、ゼファーブルはどうだった」

「私は絵画は良く分かんないよ。でも、どれもキレイだったね」

 アークシュリラは微笑んで言った。

「教会がこの絵を私たちに見せて何を伝えたいのかは、私にも判んないよ。でも、見て違和感があるかもって思ったけど、全くなかったね」


 私たちは別にお祈りをするためにここに来た訳ではない。あくまでもアンデッドを操っている主犯と思ったから来ただけだよ。


「じゃ、アークシュリラ。モランデティスの方へ行こうか」

「そうだね。向こうも見ないとね」


 私たちは、昨日の夜にアンデッドとモランデティスが戦っていた場所の先へと進んだ。

 モランデティスが通った所は枝が折れているから、聞かなくてもある程度は居場所が特定できた。


「ゼファーブル。モランデティスは、この付近からやって来たんだね」

「アークシュリラ、あすこに街があるよ」

「ナンか大きな街だね」

 遠くから見ているが、砦らしきモノが見える。


「あの砦ってエンラント王国のモノだよね」

「エンラント王国?」

「アークシュリラが私に出会った所も、エンラント王国の領土だよ」

「ゼファーブルは砦を見ただけで、よく国名が判ったね」

「ごめん。砦じゃなく旗を見たんだよ。そうなると、ここはガーゼル辺境伯の領地だね」

「その辺境伯って知っているの?」

「私は会ったことはないけど、民に愛されている伯爵だよ」

「そんな貴族はいないと思うけど……」


 ガーゼル伯爵の領土なら、人々を襲わない限りモランデティスが逃げ出さないといけない状態になることはない。

 それに、ガーゼル伯爵の領地って、確か山とか海はないと聞いていたけどなぁ。

 しかし、この山はイファーセル国でもないらしいから、この山はドワーフのモノでもないと云うコトになる。

 そうなると、サバラン教が勝手にやっているのかなぁ。


 幾つかの国境線では、国同士が隣接している所も有る。しかし、大体の国境線は、それを越えると誰の支配地域でもない所がほとんどだよ。

 自分の領土でなければ、そこにある街道などを整備する必要はないからね。

 それを誰も支配していないからと広げると、その分、整備する街道や魔物退治をする所も多くなる。

 だから各国は、無理をしてまで国土を広げないんだよ。

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