214 宮殿内部へ
私たちがガーゼルの居城で、今まで判った事や宿泊所で捕まえた魔法使いたちの引き渡しをした。
そして、オブゼントから幾つかの情報を聞き出したが、それでも暗礁に乗り上げそうになっている。
そう云った中、ビブラエスからゲランが宮殿に現れたと連絡が入った。
私たちはオブゼントとガーゼルに断って、宮殿にある魔法使いたちがオキトラムを抽出していた部屋に転移をした。
「あれっ ゼファーブル、転移が出来たよ」
部屋に着いて直ぐにアークシュリラが言った。
「どうして魔法が使えるのに、魔法使いたちを眠らせられなかった」
ヴェルゼーアも同じ感じで、私とレファピテルに聞いて来た。
「多分ですが、私たちが他の所に行っている間に、相手が結界を解いたと思います」
「そうだね。私たちと戦うタメに、偽ゲランかイッドデラが解いたんだね」
「やっと戦えるの」
「アークシュリラ。戦うと云っても、今回は魔法だけどね」
「そっかぁ。残念だなぁ」
《ビブラエス。どこにいる》
《私は謁見の間だ。別の男も居るな》
《その男の名前は判るか》
《貴族の様だが、名前は判らん》
《判った》
「謁見の間と云っているけど……」
「行くしかないでしょ」
「そうだな」
私たちは渡り廊下を通って宮殿の本館へ入り込んだ。
廊下で戦い始めるのは相手に覚られるだけなので、一応、透明になって天井付近を進んで行く。
目的の場所は応接や会議をする部屋でないので、そんなに分かりにくい変な所に作っては居ないハズだ。
案の定、正面入り口から直ぐの場所でビブラエスを見付けた。
《アイツらか》
《そうだ、あの二人だ》
二人は正面入り口から外へ出て行こうとしている様だ。
庭に出られると、近衛兵や衛兵が来て面倒くさくなる。
絶対にここで捕まえた方が都合が良い。
《外に行かれると面倒だよ》
《そうですね。じゃゼファーブルは外へ行けない様にして下さい。私が動きを封じます》
「封鎖!」「拘束!」
二人の男性の動きは一瞬で止まった。
すかさずアークシュリラとヴェルゼーアの二人が、鳩尾を剣の鞘やポンメルで突くと相手はその場に倒れた。
「さすがだね。二人とも、ついでだから縄で縛っておいてよ」
私はそう言って魔法を解いた。
そして、思考読解で皇帝の居所とかを聞き出した。
私たちが知っても仕方がないが、ナン度も魔法を掛けるのは可哀想なので、この際幽閉した目的や偽ゲランの本名なども聞き出した。
皇帝はイッドデラの別荘ではなく、この男性……第二宰相のヌーバムの別荘に幽閉されているらしい。
「ヌーバムってオブゼントとかの仲間じゃ無かったの」
「オブゼントたちは仲間と思っていたのだろうな。しかし、実際は敵でイッドデラに情報を伝えていたんだな」
「ビブラエス、ヌーバムの別荘は判るか」
「私は情報屋ではないぞ。そんなことは知る訳がないだろう」
オブゼントやガーゼルはヌーバムを味方と思っていたから、話にも出てこなかった。だからビブラエスも調査していなかったんだね。
「仕方ないなぁ。本人から別荘の場所を教えてもらうよ」
私はそう言ってから、ヌーバムから皇帝の居る場所の詳細情報を聞き出した。
「別荘は宮殿の裏手にあるそうだよ。向かいが近衛府で川沿いにあると云っていたから、直ぐにでも判るかなぁ」
ヌーバムの説明通り別荘は直ぐに判った。
「結構良い場所に建っているな。ヌーバムはこの国では重鎮なのかもな」
宮殿に近い上、別荘の周囲も近衛府やその駐屯地である。
それらは、まるでヌーバムの別荘を守って居る感じすらする。
「じゃ、行こうか」
「ちょっと待て! アークシュリラ、正面から入るのか」
「だってここは誰も居ないよ」
「えっ」
建物が朽ちたり草木が生え茂ったりしている訳では無い。
きちんと手入れさえされている。
「なぜ、誰も居ないと言うのだ」
「そんな気がしただけだけど……」
「気がって、お前なぁ……まぁ良いか。出てきたら気絶させれば良いのだから、ここから入るか」
「今から進入路を探すとなると、時間も掛かるからな。ヴェルゼーア、それで良いぞ」
玄関の扉を開けて中に入るとアークシュリラの感じたのと違い、数名の兵隊が別荘内にいた。
「何者だ。ここをヌーバム殿下の別邸と知っての侵入か」
「そうだ。しかし、お前らに名乗る名は残念ながら持ち合わせていない」
「カカレ!」
兵隊の隊長がそう言うと、兵士は一斉に私たち目掛けて突進を始めた。
剣の音が聞こえたのか、甲冑を身にまとった兵士が別荘の奥から次々に出て来る。
アークシュリラはここまで欲求不満なこともあり、複数の敵を一度に相手をしている。
その顔からは、時折笑みすらこぼれている。
ヴェルゼーアも応戦をし出した。
「二人とも、支援は要りますか」
「要らないよ。逆に相手を強くして欲しいくらいだけどね」「私も不要だ」
「必要になったら言って下さいね」
二人は5分もしない間に、出てきた兵士を全て気絶させた。
まさかとは思うけどアークシュリラにとって、この兵士たちは“居る”うちに数えてすらいないのかなぁ。
「これなら用心する必要は無いな。皇帝を探すか」
「ヌーバムは地下牢って云っていたよ」
「そうだったな」
その後も幾人かの兵が現れたが、玄関ホールよりかは少ない。
その数では、アークシュリラとヴェルゼーアに勝てる訳がない。
私たちは、地下牢で倒れている皇帝を発見した。