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213 魔法使いたちを捕まえる

 私たちはヴェルゼーアの割り振った場所へ、それぞれ向かった。


「ゼファーブル、この建物だね」

 私たちは通行人のふりをしながら、周囲の建物などを見回した。


「そうだね。このまま押し入るには、少し大きいね」

 建物は三階建てで、普通の宿屋くらいの大きさがある。

 多分、部屋の数も10は有るだろう。それに食堂なども有るかも知れない。


「魔法は効くかなぁ」

「ここでは使えるけど、建物の中は判らないね」

「それじゃどうするの?」

「今回は眠らせる以外の方法で行こうと思うよ。もし魔法が効かなかったら大変だしね」


 私はアークシュリラにその方法を語った。

 ここから魔法を掛けて万が一にも効かないで、何処かに逃げられたらとても面倒だ。

 確実な方法で行きたいからね。


 私たちは透明になって建物の中に入り込んで、進めるだけ進んだ。

 透明に成っても扉は開ける必要があるので、今のところは各部屋の調査はやらない。

 天井付近に張り付いて様子を見るコトにした。


《私たちが透明に成れたから、魔法は使えるね》

《そうだね》

《外へ行くものから捕まえようか》

《ここに20人以上が暮らして居るんだよね》

《そう言っていたね。26人の魔法使いだとね》


 私たちはしばらく天井付近に居たが、誰一人として廊下へ出てこなかった。

 私の考えだと、廊下へ出て来たモノを一人一人捕まえていくハズだったけどね。


《私が外に出れなくするから、アークシュリラは峰打ちでおとなしくさせてよ》

《良いよ》


封鎖(ヴェルヤージュ)!》

《掛かったの?》

《建物自体で無く、ここから外へ出れなくしたから大丈夫だよ》

 施錠(ロック)の魔法も考えたが、窓や出入り口の鍵を掛けるより、建物自体から出られなくした方が良いと感じた。

 それは各部屋の窓に掛けるより、感知されにくいからだよ。


《じゃ、行ってくるよ》

 アークシュリラは近くの部屋に入り込む。


「誰?」

 女性の声がして、直ぐアークシュリラが扉から顔を出す。

「この部屋は終わったよ。私は次の部屋に行くから、ゼファーブルが縛っておいてね」

「ゆっくりやってね。そんなに早く縛れないからね」

「考えておくよ」

 私はアイテム袋からロープを出して、ベッドに横たわる二人の女性を縛り上げた。

 もちろん、口には猿ぐつわもしたよ。


 私は、次々に部屋のベッドで眠っている女性を縛っていく。

 それにしても、まったく騒がれないで作業をしているアークシュリラには、脱帽だね。


「これで全員だね。それにもう部屋もないしね」

「26人居た?」

「居たよ。縛っていたのに、ゼファーブルは数えてなかったの?」

「数えてなかったよ。その前に全員居るか確認しようよ」

「そうだね。食堂などに、他のモノが居るかも知れないしね」


 一応、寝室に使っていた部屋以外の部屋や通路などを隈無く探して、他に誰も居ないコトを確認した。

 それで食堂で、みんなの食事を作る当番表見たいなモノも見付けた。

 仲良くみんなで作っていたのかなぁ。

 もしかするとちゃんとした食事は宮殿で出ていたので、ここでは簡単なモノを作っていただけなのかも知れないけどね。


 そして、各部屋にロープで縛り上げた魔法使いたちをバラバラに置いておくのは不便なので、一番広い食堂に全員を移動させた。

 確かにアークシュリラの云う通りで、魔法使いたちは26人居たよ。

 そして私たちは一人一人が所持しているギルドカードに記載されている名前と、オブゼントから聞いた名前の突き合わせをして全員が居ることを確認した。


「ゼファーブル、全員居たね」

「そうだね」


 私たちが宮殿から直ぐにここへ来ないで、オブゼントと話し合いをしたコトにより少し時間が掛かった。そのタメに魔法使いたちは自分たちが襲撃されたのではないと判断した様で、それが良い結果を招いたよ。


 私はヴェルゼーアたちに、魔法使いたちを全員捕まえたと連絡をした。

 そしたら、ヴェルゼーアがオブゼントに確認したのか、宰相府に捕らえたモノたち全員を連れて行くことは無理なので、ガーゼルの居城に連れて行くことになった。


 私たちはガーゼルの居城へ、捕まえた魔法使いたちと一緒に転移した。


「眠って居るけど、このままで良い?」

「魔法か?」

「イヤ、アークシュリラが剣で気絶させたんだよ」

「そうか。オブゼント、どうしたら良い?」

 ヴェルゼーアはオブゼントに尋ねた。


「起きないのなら、このままで良いでしょう」

「じゃ、一応魔法でも眠ってもらうよ」

 私がそう言うと、ヴェルゼーアとオブゼントがうなずいた。


眠り(ドルミール)! 眠らせたよ。これで一日経つか、起こさない限り大丈夫だよ」

 私がそう言うと、アークシュリラが言った。

「ヴェルゼーア、皇帝は居なかったの?」

「イッドデラの別荘には居なかったな。今、ビブラエスが調べている」

「そうですか、イッドデラの処だと思ったのですが……」

 オブゼントは済まなそうに言った。

「オブゼント。こいつはゲランではないぞ」

 一人一人、魔法使いたちを確認していたガーゼルが言った。

「ギルドカードではゲランだったよ」

 私たちは顔は知らないけど、カードに書かれていた名前はゲランだった。


「確かに所持しているカードではそうだが、ワシが会ったゲランは男性だったぞ。オブゼントはどうだ」

「ワシも男性だったな」

「ゲランが二人居るの?」

「アークシュリラ。多分ですが、どちらかが偽名ですね。可能性として、オブゼントやガーゼルに会ったモノがウソの名を使っているのでしょう」

「ナンで偽名を使う必要があるの」

「この国で本名を名乗れない……例えば犯罪者とかですね」

「犯罪者ですか? 我々に会って居るので、それはないと思いますよ」


 私はレファピテルを見てから、言った。

「じゃ、レファピテルの魔法で私たちの姿を変えるから、本物のガーゼルを見付けてね」

「私がやるのですか」

「そうだよ」


化身(メニシュワード)!」

 私たち全員がガーゼルの姿に変わった。

「どうですか?」

「見ただけでは、さっぱり判らないな。しゃべり方なども気を付ければ、これなら成りきるコトも不可能ではないな」

「今回のゲラン……別人になっているのですから、特徴的な訛りがあればそこだけ直すことが出切れば、しゃべり方はそこまで注意する必要はありませんよ」

「確かにそうだな。元々ゲランをワシらは知らないのだからな。それにしゃべり方が似ていても、性別や年令が違えば同一人物とは思うことはないですね」

 オブゼントがそう言ったので、レファピテルは魔法を解除した。


「でも、ゲランの偽物が居ると判ったけど、そのモノが誰だかは判んないよね」

「そうですね。我が国で国外追放になったモノと云っても、家族や関係者なども入れると何十では足りませんね。ですから名前の特定は無理かと……」

 恨むのは犯罪者だけではない。その家族や使用人なども入る。

 罪を犯したモノの仕事仲間たちで、売り上げが激減したモノと云うコトもある。

 私たちだって皇帝を恨みこそしていないが、兵を派遣してきたコトで憎んでいる。イヤ、憎んでいた。

 ナニで悪意を相手が抱いているかが判らない状態では、その点から捜索するのは不可能だ。

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