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212 魔法使いたちの居所

 魔法使いたちが作業していた部屋の中で隠し通路などを探し終えて、私たちは魔法使いたちが部屋の中に居ないコトを話し合っている。


「それでこんなにたくさんの実験機器が有るんだね。レファピテルでもこんな数の機器を使わなくても、抽出することは出来るの?」

「魔法で抽出するだけなら、こんな数の道具を使わなくても出来ますよ」


 レファピテルが特別と云う訳ではない。魔法が使えて抽出するだけならば、こんなに多くの機材は必要ない。

 それは質問したアークシュリラでも同じだと思う。


「宮殿の傍だから魔法が使えなかったのかもよ」

 私が言った。

「そうですね。魔法が使えないのなら、ある程度の機材は必要ですね」

「そうか、ここでは魔法が使えないコトを忘れていたよ」

 アークシュリラは一人納得をして、そう言った。


 宮殿と別棟であるが、私たちの掛けた魔法は効かなかった。

 実際には魔法を使えるが、ここでは使えなかったと考えた方が良いかも知れない。


「アークシュリラとレファピテル。魔力をたどることは出来そう?」

「ゼファーブル、無理だね。魔力は残ってないんじゃなく、使ってないからね」

「ヴェルゼーア、どうする。魔力から追えないと、この後の捜索は面倒だよね」

「そうだな。しかし、ここに居たモノが逃げたのだから、相手は何者かがやって来たと知った訳だ。私たちとは知られてはいないが、悠長なことは言ってられないぞ」


 通路を通って行ったのならビブラエスが手掛かりを発見できる可能性がある。しかし、護符では足跡などの手掛かりはないだろう。

 また、それではアークシュリラやレファピテルでも、そのモノたちがドコへ行ったかを探ることは無理だね。


「ヴェルゼーア、一度オブゼントに細かいコトを聞いた方が良いな。住んでいる所とかは知っているだろうしな」

 ビブラエスが一度仕切り直しをしようと提案した。

 このまま闇雲に捜索を続けるよりかは、その方が早く目的に近づく場合も有る。

「そうするか」


 私たちはオブゼントに判ったコトとか、聞きたいコトを訪ねるタメに宰相府に向かった。


 宮殿内に皇帝がいないことなどを話して、魔法使いたちの住んでいる所とかを聞き出した。

「もしかしたら、皇帝が居るところは判っているのか」

「宮殿内に()られないのなら、多分だがイッドデラ公爵の別荘だろう」

「どうして、そう考える」

「この国……いや、街で陛下のご尊顔を知らないモノは居ない。それに門番が居るので街の外に連れ出すのも考えにくい。別荘なら普段は人の出入りも少ないです」

「イッドデラとあなた方は仲が悪いのか」

「貴族同士だからな」

「そうか」

 そう言って、ヴェルゼーアはオブゼントを見てから天を見詰めた。


「他の場所……イヤ、イッドデラ以外にそういったコトをするモノは考えられないか」

「陛下に危害を加えるようなモノは……」

 オブゼントは様々なモノを思い浮かべているようだ。

 私たちはエンラント帝国内の実情を知らないので、彼が答えるのを待つしかない。


 私がガーゼルの方を見ると、ナニか思いついた様だったので尋ねた。

「ガーゼルはどうなの? そう言ったモノは」

「ワシか。そうだな、何人かは思い浮かぶな。確かに自分が権力を持ちたがっているモノは他にも居るが、実行力がともなわない小物ばかりだ。この様なことはできないな」

「そうなのね」


「本当に魔法使いたちは魔法が使えたのですか」

 今度はレファピテルが尋ねた。

「一応、テストは私と第二宰相のヌーバムで実施しました。それで今回必要なのは攻撃魔法ではないので、薬を作ってもらいました」

「材料は各自で用意したのですか」

「水は当方で準備をしましたが、材料は各自で揃えてもらいました」

「材料に何かしていないかのチェックはしたのですか」

「変なモノを持ち込んでいないかは確認をしましたが、材料自体に何かをしているかまでは確認していません」

「判りました」

「じゃ、もしヌーバムが敵だったら、自分の駒を採用することが出来るの」

 一応、名の出たモノは聞いておいて損は無いから、私は聞いた。

「出来ますね。私も全員の試験を監視していた訳ではありません。それぞれの部下も含めてテストをチェックして、その結果の報告を見て合否の判断をしているだけですからね」

「ヌーバムは信用して良いの」

「良いでしょう。ワシらとも良く相談してくれます」

「そうなんだね」

 今のところ私たちが知りたい内容は、ほとんど聞くことが出来た。


 それ以外に、オブゼントたちは私たちが頼むまで、絶対にイッドデラらにナニもしないコトをお願いした。

 政治的な駆け引きや依頼は仕方ないが、お互いが動くと取り返しの付かないコトになると話した。

 オブゼントもその点は理解してくれて、私たちも適宜情報をオブゼントたちに伝えると云うことになった。

 それと、魔法使いたちの名前と人数なども聞き出して、今回の面会は終わった。


「ヴェルゼーア。オブゼントは勝手に手出ししないと言ってくれたけど、ゆっくりヤルのは得策でないな」

「ビブラエス、そうだな。イッドデラとオブゼントがどう言う関係かは確認するすべはないが、仲がよいとは感じなかったな。だとすると蹴落とすタメにナニかをするかもな」

「そんなことをされたら困るよ」

「アークシュリラ、貴族とは自分の家系が繁栄することを第一に考えて行動をする」

「そこは国家じゃないの?」

「悲しいが、そう言うモノだ。私もハルメニアでは貴族だったからな……」


 ヴェルゼーアの家はハルメニアでは大貴族だった。それで楽しいコトもあっただろうが、自分ではどうしようもない経験もしている。


「それでは魔法使いが暮らして居る所へ、急いで行きましょう」

「ゼファーブルとアークシュリラは、魔法使いたちが居る処へ行って捕まえてくれ」

「判ったよ」

「ビブラエス、イッドデラが変な動きをしてないか身辺を調べてくれ。魔法使いたちから要らない情報が入って居るとオブゼントらが怪しまれる」

「判った」

「私とレファピテルでイッドデラの別荘から皇帝を救出する」

「居ると思っているのか?」

「判らん。しかし、街の中に居ることだけは事実だろう。ならば今は、僅かな可能性でも試す価値はある」

「そうだな。私もイッドデラや魔法使いたちの様子を随時連絡するよ」

「ゼファーブルとアークシュリラが捕まえられなかった魔法使いたちは、ビブラエスが捕まえてくれ」

「ヴェルゼーア、私たちが逃がすと思うの? 一人も逃がさないよ」

 アークシュリラは少し怒った様に言った。


「イヤ、すでにイッドデラの処へ行っていて、いつも暮らしている所に居ないかも知れないからな」

「そうかぁ。居なければ捕まえられないなぁ」

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