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210 宮殿に忍び混む

 私たちはエンラント帝国の帝都に転移した。


「ここが帝都ナンだね」

 アークシュリラが周りを見ながら言った。

「そうだ。王都時代のウルイムと言うモノも居るが、普段は帝都と呼ぶようだ」

 ヴェルゼーアが答えた。

「ウルイムは帝都の名前じゃないの」

「違うらしいぞ。ナンでも帝都は一つだから、今は名前がないそうだ」

 帝国が全世界を統一すればそうなるが、まだ先のコトだ。

 この世界で他に帝国を名乗っている国が他にあるのかを私は知らないが、絶対に一つだとは思えない。


「ゼファーブルはここに来たコトはあるの」

「私は昔にこの傍を通っただけだよ」

「そうなんだね」

「あれが宰相府です。その周りに大臣たちの屋敷がいくつかありますね」

 レファピテルがいくつかの建物を紹介してくれた。


 だとすると、私たちは上級エリアに転移したコトになる。

 なんとも無用心な街だね。

 そこからも、皇帝の周囲に居る魔法使いのレベルが判る。

 なので、もうレファピテルたち三人で、魔法使いたちを片付けても良いとさえ私は思えて来た。


 無駄に長居をする必要はないので、私は言った。

「ビブラエスと合流して、さっさと終わらそうよ」

「そうだな」

 そう言って、私たちが帝都に居ることをビブラエスに伝えたヴェルゼーアが続けて言った。


「城へ行って、もし、皇帝が操られていない場合はどうする」

「そうですね。オブゼントの話では怪しい薬を飲んでいたらしいですが、皇帝が正常だったら魔法使いたちを捕まえても解決しませんね」

「そこはビブラエスなら調査をしていると思うから、確認をすれば判るよね」

「そうだな」


 私たちはビブラエスと落ち合った。

 そして今まで調査をしていて、判明して居ることを教えてもらった。


「そうか、宮殿内で皇帝の姿は確認出来なかったんだな」

 ヴェルゼーアが少しイラついた感じに言った。

「そうなんだ。どこを探しても皇帝は居なかったんだ。それに誰も皇帝の面倒を見ていないしな」

 ビブラエスが答えた。

「そんなことがあるの?」

 アークシュリラは、皇帝が宮殿にいないコトが本当にあるのかと言う疑問を投げかける。

「もしかしたら、もう生きていないのかもな」

 ヴェルゼーアがそう言ってからビブラエスが説明をした。


 ビブラエスの話によると、宮殿の中ではどこにも皇帝の姿を見つけるコトが出来なかったらしい。

 どこか違う場所に監禁されて居るのではないかと、近習や近衛兵などの周囲にも捜索範囲を広げたが、それでも手懸かりは一切無かったと言うことだった。


「それでは誰が、命令を発令して居るのですか」

 レファピテルが今の政治状況を尋ねた。

「魔法使いのリーダーであるゲランだな。一応、皇帝の執務室に入っては居るが、そこにはゲランしかいなかったな」

「オブゼントの話では、数名の魔法使いが交代で皇帝に会って居ると言っていたが……」

 ヴェルゼーアが、オブゼントの話とビブラエスの調べたことの違っている点を指摘した。

「オブゼントが宮殿に居たときは、皇帝がまだ居たのだろうな」


 今時点で皇帝の生死は判らないけど、これで皇帝の意思が正常で、あっちこっちへ軍隊を派遣していると云うコトは無くなった。

 それに、宮殿に皇帝がいないのなら、居るモノ全てをいつもの様に眠らせてから聞けば良い。

 やることも決まった。


「ゼファーブルとレファピテルは、魔法を使って宮殿に居るモノ全てを眠らせてくれ。魔法使いたちを捕まえて皇帝が匿われている所を聞き、そこから救出してオブゼントの所へ届ければ終わりだな」

 私たちはビブラエスの案内で、いつも宮殿に忍び込む所に行き、私とレファピテルが眠りの魔法を掛けた。


「これで掛かったと思うよ」

「私も掛けましたから、洩れはないと思いますね」

 門番の兵士が眠って居ても、正門は開いていないコトがある。

 それは正門が開いていると、大勢のモノに襲撃されて門番がやられたら、宮殿の敷地内に入られるコトにつながるからね。


「じゃ、中に入るか」

 ビブラエスがそう言ってから、手本とばかりに掘りなどを渡っていった。

 私たちも同様に掘りを渡って、今度は壁を越え宮殿の敷地内に入る。


 宮殿の敷地はさすがに広い。

 大臣の家みたいに壁際に宮殿は建っていないし、魔法使いたちが仕事をしている建物も壁際にはない。

 少し歩いてから、その建物の中に忍び込んだ。

 相手は寝ているハズなので、こちらが襲撃をされる心配はない。


 私たちは部屋の配置を把握しているビブラエスが先頭になって、建物内の通路を通って魔法使いの居る所へ向かって歩いた。


 さすがにここまで人に出くわすコトは無かった。

 誰一人として通路で眠って居るモノもいない。

「ちょっとおかしいと思うよ」

「ゼファーブル。ナニがだ」

「ヴェルゼーア。私とレファピテルで眠りの魔法を掛けたけど、通路で誰一人として寝ているモノがいないからね」

「そうですね。庭では何名かが寝ていましたから効いていると思いますが、この建物内には寝ているモノがいませんから……」

 宮殿の敷地内に作られた建物だけあって、部屋も通路も必要最小限でなくたくさんある。

 私たちはメインの通路を通ってはいないが、それでも今まで一人も寝ているモノが居ないのはおかしい。


「そうか、この建物内は対魔法(アンチマジック)が仕掛けられているのかもな。だとすると魔法使いが襲って来ないのはナゼだ」

「ヴェルゼーア。次の角を曲がると魔法使いの居る部屋だ。ここで悩んでいたら危険だ」

「そうだな。すまん」


 私たちは魔法使いたちが眠っていないと仮定して、魔法使いがいる部屋の前に立った。

 対魔法(アンチマジック)は一定の空間内で魔法が効かない様にするモノだから、私たちの魔法は効かなくて、自分たちの魔法だけが効くと云うコトはない。

 なのでこの宮殿内の建物全てで、魔法が使えないと思う。だから魔法使いたちは、私たちを攻撃して来ないのかも知れない。

 イヤ、出来なかったと言う方が正解かもね。


 もし、部屋の中で魔法使いたちが眠っていなくても、アークシュリラとヴェルゼーアならきっと峰打ちで相手を制圧することが出来る。

 ここで悩むコトはない。


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