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20 アンデッドって

 昨日の夜中にモランデティスの遠吠えが聞こえたと思う場所へ、私たちは向かっている。

 町中では周囲を確認するのに充分だった月明かりも、ここでは木々の間から僅かに差しているだけだ。

 私たちが暗闇でも見える薬を飲んでいるとは言え、魔法の暗視(ビジョナクチョゥム)みたいに付近がよく見える訳ではない。

 それに相手に見付からない様にランタンもスライドシャッターを下ろして暗めにしているので、さすがにその辺りにナニがあるかを識別できる程度しか確認することが出来ない。


「ゼファーブル。何かが来るよ」

 アークシュリラは、私がその灯りを見付けるより先に言った。

「何人か判る?」

「足音がしないから判らないね。でも、気配からすると10人くらいかなぁ」

 10人か。昨日と同じくらいだね。

 何をしているかだけでも知りたい。


 灯りは私たちのそばを通り過ぎて先に行った。

 通り過ぎたので私はアークシュリラに尋ねた。

「今のは人じゃないね」

「そうだね、絶対にアンデッドだよね」

 私がたいまつと思っていたのは人魂で、それに続いて肉体が着いて行った。


「アンデッドだと戦える?」

「どうだろう。ゾンビやスケルトンみたいに物理攻撃が効けば戦えるけど、エレメントの様に物理攻撃が効かないと無理だよ」

「肉体の方は物理攻撃で撃破することが出来ても、人魂はまず無理だろうね」

「戦う以前に、あのモノが何をしているのかだよ。モランデティスとどう関係があるのか、はたまた無関係なのかが判らないしね」

「そうだね。跡をつけよう」


 私たちは人魂が見える範囲内で、その行進しているモノたちの後に続いた。

 余り近づいて襲って来られては仕方ないが、離れすぎると何をしているのかが判らない。

 所々で木々の枝や葉のために、月明かりがここまで届いていない。

 安全に進むのには、どうしても足下を照らすランタンの灯りが必要となる。

 私たちはシャッターを少し開けて、その灯りで地面を照らすことにした。


「ゼファーブル。止まって、何か巨大なモノがやって来るよ」

「そうだね。モランデティスかなぁ」

 人魂の行進はモランデティスと対峙した位置で止まっている。

 ナニが始まるのかなぁ。

 考えられるのは、人魂たちがモランデティスと戦うか、エサになるかだね。

 アークシュリラもナニも言わずに、成り行きを見守っている。


 私たちが見ていると肉体の方が展開して、モランデティス目掛けて突進した。

 今まで普段着だった肉体はフルアーマの戦士に変わって、モランデティスの四方から攻撃をしている。


 モランデティスも、ただ一方的に攻撃を受けてくれる訳ではなく、巨体に相応の太い腕で戦士たちを払い除けている。

 そして、剣を振って戦士たちにダメージを負わしてもいる。

 そのモノたちはどちらが優勢ということもなく、互角に戦っている。


 そばにいるアークシュリラは戦いたいみたいで、双方の攻撃がある度に体が自然と動いている。

 しかし、私たちがどちらの側で参戦するかによって、この戦いは確実に終わる。

 戦士たちがドワーフの村を守っているなら戦士側だが、モランデティスがナゼこんなに人里の近くに現れるかも理由を知りたい。


 随分長い間、両者は戦っている。

 東の空が徐々に白みだした。

 どちらも決定打を与えられずに、来た道を引き返しだした。


「アークシュリラはどっち側で戦う?」

「どっち側?」

「戦士側かモランデティス側?」

「難しいね。毎夜ナゼここで戦って居るのか理由が判らないからね」

「確かに、モランデティスがドワーフの村に来ないように戦士たちが守って居るのか、あの戦士たちがそれ以上進まない様にモランデティスが防いでいるのか判らないよね」

「そうなんだよ。モランデティスは基本的に夜行性じゃないので、戦士たちがやって来るから防いでいると考えるのが普通だよね。戦士たちはアンデッドなので夜間に行動するのは理解出来るけど……」


 アークシュリラが言う様に、本当に戦士側が侵攻しているのかなぁ。

 それにあの戦士たちは、ドワーフとどういうつながりがあるのだろう。


 私たちは門が開くのを待ちながら、どうするのが良いか検討をしている。


「ゼファーブル。この村の人々が、もしモランデティスに襲われても平気なの?」

「悲しいけど、アンデッドを利用して、他国に攻め入っているなら仕方ないよね」

「そう、それを聞いて安心したよ。是が非でも村を守るって言われたらどうしようかと思ったよ」

「アークシュリラはナンか感じたの?」

「ナンにも。でも、調べる前から片方を支援すると考えていたら、調べる意味がないよね」

「そうだね。今日はあの戦士たちを調べる? それともモランデティス?」

「宿屋で朝食を食べて戦士たちを調べようよ。来た方向は判ったからね」

「判った」


 門が開いたので、私たちは宿屋へ向かった。


 朝食を食べ終わって、座談を装って店員に聞いた。


「この村ってドワーフが多いけど、国って言う訳じゃないよね」

「ここはドワーフの国じゃない。イファーセル国の一部だ」

「イファーセル国? その国に騎士や戦士って居るの?」

「国内の治安維持のためには居るが、余りここまでは来ないな」

「首都はどこにあるの?」

「街道を馬で4日くらい西に行けば着くが、行くのか?」

「いかないよ。聞いただけだよ。東はイファーセルじゃないの?」

「東はあの山もイファーセルではない」

「じゃ、あの山の周囲に墓はあるの? 特に戦士たちのヤツだけど」

「街道を進めば見える位置に墓地がある。昔に国境沿いで起こった戦没者のモノだ。管理はそこにある教会が行っている」

「判ったよ。ありがとう」


 私たちは部屋に戻った。

「アークシュリラ。どう思う」

「私としてはモランデティスが、戦士たちからナニかを守っている様に思うよ。そうなると誰が戦士たちのアンデッドを操っているかが判らないけどね。神殿か教会なのか、それとももっと上位のモノなのか、あるいは全く関係がない第三のモノかだね」

「アンデッドたちが自分でやっているってことはないの?」

「無くはないけど、可能性は低いと思うよ。私たちが昨日みた状態だと隊長がいなかったからね。だから私たちを襲っても来なかったんだよ」

「意思のあるアンデッドなら、モランデティスより私たちを襲って来てもおかしくは無いよね。でも、それって私たちに気が付かなかっただけかも知れないよね」


 戦いに関しては、私よりアークシュリラの方が詳しい。

 地球でアークシュリラが、どういう戦いを経験しているかは私には理解出来ないけど、地球に居たときの経験が生きている感じがする。

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