206 エンラント王国のモノと話し合い
私たちはエンラント帝国軍の全兵士を捕まえて、名前などの情報を調べ上げた。
そして封印と同じ様に閉じ込めた
もしそこから逃げる場合は、私とレファピテル以上の魔力を使って自力で解除するか、封印が劣化して出てこられる様にならない限りはありえない。
ヴェルゼーアはビブラエスに捕まえた兵士の名前や役職を記したメモを送って、エンラント帝国の政府機関に届けて貰う様に依頼した。
これで黙殺されない限り、何らかのアクションが届く。
当方の要求は、エントラント帝国以外の地域に派遣している兵士の完全撤収だけだ。
もし黙殺……イヤ、兵士を見殺しにする場合は、他の地域に派遣されている兵を更に捕まえるか、皇帝を捉えに行くしかない。
「反応があるといいよね」
「10,000人ですから、無視はしないでしょう」
「ところで、レファピテルは不死や不老ってどう思う」
「エントラント帝国の皇帝のコトですか? それとも一般論ですか?」
「一般論の方」
「一時的な不死は出来ると考えますが、不老は無理ですね」
「それって老衰はどうしようもないってこと?」
「そうですね。今の私が剣や魔法による攻撃とか、毒などによってダメージを負わない不死の体にすることが出来たとしても、時間によるダメージはどうしても防ぎ様はありませんよ」
「そうだよね。私も薬で不死じゃなくて延命は出来ても、若返りの薬は作ったことも試したコトもないからね」
「しかし、作り方はあるのですか」
「書物によるとあるらしいけど、若返りに成功したモノは誰一人としていないよ」
幾つかの本には若返りの薬と言うモノはあるけど、どれも眉唾物であって信用出来ない。
中には入手困難な材料を書いてあるモノすらあるので、常識的な錬金術師なら時間の無駄なので試すことはしない。
「エントラント帝国の皇帝は不老不死を目指しているのかなぁ。ただの不死だけでは仕方ないよね」
「足腰が弱ってしまえば、生きていても辛いだけですね」
「脳はどうだろうね。記憶力は低下したら、周りにいる人が判らないコトになるよね」
「いくら死なない体になったとしても、脳が劣化してくると自分が皇帝だと判らなくなりますよ。なので不老も考えていると思いますね」
それから数日の間、私は不死と不老について、ヴェルゼーアやアークシュリラとも話し合った。
その内容は彼女たちの生死観や宗教観に近いモノであるので、私と考えが違っていても否定するコトはしていないよ。
全員の生死観は違っていたが、みんな不老不死の体は必要ないと云うコトだった。
「ビブラエスから、エントラント帝国のモノが私たちと話がしたいと言って来たと、連絡をもらったがどうする」
「その言い方だと、私的で公式じゃないの」
「そうなるな。でも、相手は帝国の宰相であるオブゼントと旧辺境伯であったガーゼル王だ」
「一緒になの」
「別々に言って来たらしい。話の内容も同じかは判らないな」
帝国になって辺境伯や領地を持っていたナン名かの貴族などは王に成ったらしい。それは呼び名だけの変更ではなく、帝国内に存在はするモノの普段は独立した地域と云うコトだ。
「だったら、ここから近いガーゼルの所へでも行くの」
「捕らえたモノのリストを見たとしますと、両人とも会う目的は捕虜の釈放でしょう。だとするとガーゼルよりオブゼントの方が先ですね。しかし、公式でないとすると、帝都で会うのは危険ですかね」
「判らんな。宰相府なら人目も気にする必要はないと思うぞ」
「だったらオブゼントの処へ行って、帰りにガーゼルの所に寄ったら。同じ話だったら一度に解決するよ」
宰相と国内の王の二人が、わざわざ非公式に会って話たい内容が同じとは思えない。
でも、捕虜にしたモノの名前を教えたコトによるリアクションなので、そんなに違うとも思えない。
「ヴェルゼーアとレファピテルのチームとアークシュリラと私のチームで二人に同時に会うってのはどう。念話で連絡をすれば一緒に居なくても平気だよね」
「そうだな。私のチームはオブゼントの方へ行く。レファピテル、それで良いか」
「良いですよ。もし話を聞いて、アークシュリラが言う通り同じ様な内容なら、別々に話すより一緒に話した方が早いですね」
「それもそうだな。ビブラエスからは、夜なら日程の調整は不要と言って来ているから直ぐにでも行くか」
非公式の面談なので、日中にわざわざやる必要はない。
逆に私たちが出入りしたとバレない、夜間の方が都合が良い。
しかし、諜報のモノがいつも見張っていると思うので、夜とは言え目立つ様なコトは当然しないよ。
ヴェルゼーアとレファピテルはビブラエスを呼んでから、オブゼントに会うためにエントラント帝国の帝都に転移した。
私はガーゼル王に会うために、アークシュリラと一緒にガーゼル王が暮らすウズラパへ転移をする。
「昔に数回来ただけだけど、建物なんかは変わってないね」
「昔っていつ頃?」
「私がこの大陸へ来た頃だよ。当時は薬を高く売る方法とか、イロイロ知らなかったしね」
「ゼファーブルにも、そんな時があったんだね」
「今もそうだけど、私も知らないことが多かったよ」
経験したことや書籍で得た知識などが増えて、出来るコトも増大した。でも、今の私にも知らないコトはある。
この世の中の全てを知るコトは不可能でも、もっとたくさんのコトを理解したい。
そして知ったコトをまとめて後世のモノに引き継ぐのも、錬金術師としての大事な使命と思う。
「あの大きな建物がガーゼルが居る城だよね。守衛に言って、入れるのかなぁ」
「ビブラエスからもらった手紙があるから、今回は平気だと思うけどね」
ガーゼルとオブゼントらと出来るだけ同時に話し合いたいが、相手の都合もあるので全く同時進行と言うわけにはいかない。
それに、いくらいつでも良いと言われたからと言っても、今日行って直ぐに会談をするコトが出来るかは判らない。
なので今日で無ければ、会談を行う日を2日後と事前に決めている。
私たちは守衛に手紙を渡して様子を窺った。
私たちの心配がウソの様に、守衛から連絡を受けた家のモノが王城の応接室へ案内をしてくれた。
ヴェルゼーアからも、これから面談が出来ると言って来た。
相手は私たちとの接触を待っていたようだ。