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204 どうしようか

 私たちから打って出ることはしないし、エントラント帝国軍も攻め込んでは来なかった。

 それでしばらくの間、このにらみ合いは続いた。

 その間にビブラエスは何度か戻って来て、私たちにエントラント帝国内の情報を与えてくれた。

 そのどれもが直ぐにこの場所から軍隊を引かせることは、簡単に出来なさそうだった。


「今日も、攻めて来ないね」

 アークシュリラがつまらなそうに言った。

 この間にエマルダへ行って鶏小屋なんかも作ったけど、エントラント帝国軍とのにらみ合いは全く変化はしていない。


「攻めて来ないのなら平和で良いじゃん」

「ゼファーブルならば、エントラント帝国に元々いた軍人だけ眠らすとか出来る?」

「それは無理だよ」

「やっぱり無理なんだね。なんにもしないで睨み合っているだけでは、無駄に時間だけが過ぎて行くよ。それに、ビブラエスの持ってくる情報をやると、犠牲者が出るよね」


 私たちが各占領地でゲリラ的に反乱を起こすのが、一番やり易い。しかし、それをやると反乱をしていない、他の街や村の監視が厳しくなる。

 私たちが、各街や村を守りながら、国の方針が変わるまでそれを続けることは出来ない。

 次がオーラガニアなどからの船を行かせない様に依頼をしたり、海上で襲ったりして少しずつ物資の供給を減らすことだけど、これは時間が掛かる。

 まして、国王や好戦的なモノを排除しても、雨後の筍の様に次々に現れるから、どれも決定的とは言えない。

 やっぱり、軍隊を叩くのが良いのかも知れない。

 兵士が死なない程度に叩いて、私たちには勝てないことが判れば、一旦はこの場所から軍隊を引いてくれるかも知れない。


 ヴェルゼーアとアークシュリラはポースレンゴーレムやホムンクルスと練習試合をして、時間を潰していた。イヤ、剣の技術が落ちない様に訓練に明け暮れている。

 ホムンクルスが魔法を使うことは二人にも判っているので、今は用心して戦っているから、先日の様なことは起きないと思う。


「レファピテル。ビブラエスの情報では兵を引かせることは出来なさそうだけど、私たちで軽く魔法を放っちゃう」

「昨夜、ヴェルゼーアもそんなことを言ってましたよ」

 ビブラエスが調べれば調べるほど、この地に居るのがエントラント帝国の正規兵でない軍団なので、引き返させることが出来そうになかった。


「だったら隊長を捕まえられれば、交渉してくれるかもよ」

「一人では見殺しに成ることも考えられますね」

「やっぱり、正規兵は全て捕まえたいよね」

「これほどの人数ですから、二人なら眠らすことは出来ても、捉えて置くのは面倒ですね」

「そうだね。交渉をしている間は、食事を与える必要があるよね」


 人数が1,000人くらいなら捕まえて、ゆっくりと交渉も出来る。

 しかし、10,000人となるとホムンクルスやゴーレムをもっと作る必要が出るし、捕まえておく建物も巨大なモノが必要になる。

 そんなモノを作るのは現実的ではない。


 私たちがここで出来そうなことも、ビブラエスが入手して来る情報と同じで、突き詰めると様々な問題が出て来る。

 実際には、エントラント帝国が昔の様な王国に、自発的に戻ってくれるのが一番良い。


「でしたら、元々エントラント帝国の兵士以外を解放したらどうでしょう。それなら1,000人も居ないかも知れませんよ」


 確かに複数の村から徴収した兵士を、少ない数の正規兵で指揮や監視をして居ると思う。そうで無ければ人数は少なくなるけど、正規兵で攻めた方が練度も高いし忠誠心もあるのだから都合が良い。

 例えば500人を一つの軍団としたら、20コの軍団がある計算に成る。

 500人の兵士なら正規兵が10人もいれば、一人の分担は50人を監視すれば良いコトになる。

 単純計算だが、正規兵は200人しか居ないコトになる。

 監視以外にも正規兵が居るかも知れないが、この数のナン倍も居るとは考えられない。

 そうでなければ、国内での人材が足りなくなる。


「そうだよね。でも、ここで解放して平気かなぁ」

「確かに、エントラント帝国内を通って、無事に出身地に戻れるかは不安ですね」

 ここで正規兵だけを捕らえて併合された処の人たちを解放しても、無事にその人々が戻れなければやる意味が半減する。

 エントラント帝国内の街や村で、捕まらない様にしないといけない。

 そのためには他の正規兵や警察などを機能停止にするか、捕まらない様に国家の中枢から指示をだすコトをやらないとならない。


「エマルダで武器や防具の注文が増えたってことは、イファーセル国でもエントラント帝国の侵攻に備えているのかなぁ」

「エマルダで作られたモノがどこに出荷されているかは知りませんが、備えていると思いますね。ここから少し西へ行けば、イファーセル国に行きますからね」


 エントラント帝国も軍隊の強いイファーセル国を攻める前に、兵士の数は多くしたいだろう。

 攻め込む人数が多ければ、戦う前に相手が諦めることもあるよね。

 そうなれば、張り子の虎の様な人数だけの兵士を連れて来た、エントラント帝国としては上出来だと思う。

 もしイファーセル国と開戦になった時に、オーラガニアが船で本国を攻めて来たら二方面で戦うコトになりとても面倒だ。


 イファーセル国がオーラガニアやハルメニア王国と交流しているとは、聞いたことはないけどね。

 でも今時点で、エントラント帝国を止められる軍隊を持っているのは、イファーセル国くらいなのも確かだ。


「イファーセル国が攻め込まれる前に戦うかや、エントラント帝国もイファーセル国に攻め込むかも判らないけど、さっきの正規兵を捕まえたら誰と交渉するの」

「通常は、派遣させた国の外交をしている部門ですね」

「そうなると、交渉に時間がかかるかなぁ」

「私たちと話して、書類とかで皇帝に許可を得るのですからね。それだけでも日数がかかりますね」

「その間は食べ物を与える必要があるよね。支給ナンかしてくれないよね」

「当然、食べさせる必要はありますね。後で実費を請求することは出来ますが、一部でも支払ってくれれば良いと思いますよ」

「一万人の食事だよ。一日ぐらいなら良いけど、本国に問い合わせているってナン日もかかったら大ごとだよね」


 皇帝と直接話すことは捕まえるか、押し入らない限りできない。

 それで話したとしても、釈放した後で約束を反故されることが多い。

 イヤ、今度はナニかにつけて、目の敵にされる様になるよね。

 なかなかベストな方法がないけど、私たちがここに居ることでセグールなどへエントラント帝国軍がやって来ないのも事実だった。

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