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201 エンラント帝国の侵攻

 私たちが建物に向かっていると、向こうからヴェルゼーアたちがやって来た。

「鳥小屋は作り終わったよ」

「こっちも話は終わった。後は三人次第……イヤ、ここに居る人たち次第だな」

「上手く行けば良いですね」

「そうだな」


 私たちが話している間に、院長たちも話していた。

「じゃ、私たちは次の目的地に行くから、当分は来ることはないと思う」

「なんだか寂しいですね」

 最初と違って、今は話すことはイロイロある。

 私たちは会話を切り上げて、孤児院を出た。


「クーリツァはまだ居るよね」

「居るな」

 孤児院で一日に必要なタマゴの量を産む分のクーリツァは渡したが、まだビブラエスのアイテム袋にはクーリツァが居る。

 今、全部を渡すことは、孤児院に要らない負担を与えるコトになる。

 販売することになるなら、タマゴを孵化させて育てれば良い。

 そもそもクーリツァはナン十年と生きられる訳ではないから、売らないとしても必ず孵化させないといけないからね。

 それでクーリツァは離れ離れになるが、今回作った鳥小屋に全部を置いていくコトは出来ないからね。



「一旦、ファリチスに帰るか」

「そうですね。私もハルメニア王国へ行って、見付けた本を渡したいですしね」


 私たちはファリチスに転移し、(おさ)であるアリマーズにファリチスでクーリツァを飼うか尋ねた。

 アリマーズの回答は、今はファリチスには不要とのコトだった。


「じゃエルドマは? ルルグスに言えば村長に言ってくれると思うけど」

 私がみんなに言った。

「あすこにはチーズがあるから、タマゴもあれば美味しい料理が出来るね」

 アークシュリラは、ルルグスたちにチーズとタマゴを使った料理を教える気なのかなぁ。それとも自分たちで作るのかなぁ。


「それではこのあとにでも行ってくるか。ルルグスの顔も見たいしな」

 ヴェルゼーアは孤児院のコトと云い、やっぱり子供が好きなんだと思った。

「ヴェルゼーア、どこも引き取り手が無ければ、ハルメニアに持って行けば良いぞ」


 どこでもクーリツァが要らなければ、ビブラエスの云う通りでハルメニアに持っていけば済む、イヤ国王に献上して国内に広めてもらうコトも出来る。

 しかし、ハルメニアに持っていく前に、エマルダのダルフさんやセグールのベガトルにクーリツァが欲しいかと聞いた方が良いと感じる。

 持っていった後で欲しかったと判ったら、あげたモノを再度譲り受けなければならない。

 そんな二度手間はしない方が良い。

 ファリチスで飼わなくても、この周囲のみんなが食べられるようにするためには、近所に育てる場所があった方が便利だ。


「私も気になる処があるから聞いて見るよ。そこもダメだったらハルメニアに持っていって良いから待ってね」

 ビブラエスからクーリツァを少し分けて貰い、私は先ずエマルダに行くことにした。

 ヴェルゼーアはビブラエスやレファピテルとエルドマに行った。


「アークシュリラはどうする」

「一緒に行くよ」

 私たちはエマルダに転移してダルフさんの店を訪ねた。


「ダルフさん、居る」

「お前さんたちか、戻って来たのか」

「うん、ちょっとね。それでお土産じゃないけど、タマゴって食べるの?」

「食べるが、なんたって高価だ。その上、自分たちで取るとしても採取も簡単でないから、そんなに頻繁には食べんがな」

「だったら、クーリツァをこの村で飼わない」

 私がクーリツァを一羽取り出してみせる。


「それは暴れたりはしないのか」

「しないよ。でも池が傍に無ければ飼えないんだけど……」

「そうか、それなら(おさ)に聞いてやる。明日でもまた来てくれ」

「忙しいの」

「あぁ、北にあるエンラント王国で戦いが頻繁に起きていて、ここでも今は防具や武器を毎日作っているが、それでも追いつかん状態だ」

「急がないから、後でも良いよ」

「どうせ今日も会合があるから、聞いて見る。それにタマゴは栄養もあるから、疲れた我々には必要だしな」

「じゃ、お願いね」

 私たちはダルフさんの店を後にした。


「ゼファーブル。私たちが居ない間に、とんでもないことになっていたんだね」

「そうだね」

 ベガトルのセグールはもっと北にあるが……

「じゃ、ベガトルの所へ行こうか」

 私たちはゼグールに転移をした。

 ゼグールに着いて直ぐにベガトルの家へ向かったが、広場にベガトルと村長がいた。


「村長にベガトル!」

「んっ」

 ベガトルがこっちに振り向いた。

「やっぱりお前らか」

「変な挨拶だね」

「済まん。それで用事はナンだ」

 ここでも変な感じがするが、それを聞くのは先ず私たちがここに来た目的を果たしてからだ。

「クーリツァって鳥を、この村で飼わない」

「今日来たのは、鳥を持って来たのか」

「そう、これだけどね」

 私がアイテム袋から一羽のクーリツァを取り出して、ベガトルに渡す。


「これを飼えと云うのか」

「そうだよ。タマゴを産むんだよ」

「タマゴは確かに欲しいが、今はそれどころではないから、済まん」

 村長が言った。

「ナニか問題でもあったの」

「西にあるエンラント王国……今は帝国だったな。その使節が来て、この村を併合すると言って来たのだ。ただ併合されるだけなら村人のコトを考えて拒否する必要はないが、新たに併合された村は100人の兵を出さないといけないらしい、我が村にはそんなコトをやるモノはおらんからな」

 ゼグールに居る成人の殆どが、兵士に取られるコトになる。

 そんなことを許したら、村が立ちゆかなくなることは火を見るより明らかだ。


「判ったよ。私とゼファーブルたちで、そのことはなんとかするから詳しく聞かせて」

 村長はベガトルに家にある書類を取りにいかせて、エンラント王国の使節から云われた内容を教えてくれた。

 ベガトルが戻って書類も見せてくれたので、話が誇張されていないことも確認が出来た。

「これの複写を取っても良い」

「良いぞ」

「ありがとう」

 私はベガトルが持って来たモノ全ての複写を取って、アイテム袋にしまった。

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