199 タマゴ料理を食べて貰う
私とヴェルゼーアは、そのまま院長と話を続けた。
「そうか、これは私がとやかく言う筋合いではないな。しかし、もし、あの二人が鳥を飼いたいと言い出したら、許可を出してくれないか」
「鳥は危険で……」
ビブラエスが出しっ放しにしているクーリツァが、この室内に居るコトが今ごろになって院長は気付いた様だ。
「クーリツァは大人しいから、そんなに危険じゃないよ」
「確かに大人しいですね。判りました、二人が飼うと言って来たら許可をしましょう」
私は念話を三人に繋げた。
《料理を作って盛り付けたら、子供たちの前には行かないでね。それといつもの様にイルナルとロステムルが作ったコトにして》
《私たちが作ったコトがバレると、問題があるの?》
《子供たちや職員の反応を見たいんだよ。多分、子供たちにとっては、初めての料理だからね。それと、一人でも倒れたり湿疹が出たりしたら、直ぐに私を呼ぶようにも伝えといて》
《判ったよ。イルナルとロステムルに言っておくね》
「院長。もう料理が出来ると思うので、いつもの様にして頂いて構いません。子供たちと食事をとるのでしたら、食堂へ行って下さい。私たちはいないモノと思ってもいいです」
「そうですか。それでは私は食堂へ行きます」
院長が部屋を出て行くのと交替に、三人が戻って来た。
「ナニを作ったの」
「相談をしてホッペルポッペルと溶きタマゴのスープを作ることになったよ。ジャガイモがなかったから私たちのを使ったけどね」
「子供たちが喜んでくれるといいね」
私は建物内の物音に意識を集中している。
職員たちがドタバタとしてないから、子供たちがタマゴを食べても平気だったのかなぁ。
イルナルとロステムルもやっては来ない。
もう、良いかなぁ。
後片付けをしていたのか、随分経ってから院長と二人がやって来る。
それとも、本当に私たちが居ないモノと考えて、他の仕事を片付けて居たのだろうか。
「すみません。子供たちや職員の反応がスゴくて、遅くなりました」
「職員の中には、タマゴを食べたことのあるモノも居たのですが、今日の料理はとても誉めてくれましたよ。私が作ったと言うのは恥ずかしかったですね」
「ロステムルは、ちゃんとホッペルポッペルを作ったんだから胸を張って良いぞ」
「でも、分量とか手順など、全部が言われるがままですから……」
「料理って、そんなモノだ」
「それに皆さんの手際の良さは、スゴかったです」
「イルナルだってスープの盛り付けは、速かったじゃん。それにどれも同じくらいの玉子が入っていたしね」
「そうですか……」
イルナルとロステムルが、院長に続いて興奮気味に言った。
「食べた人で、体調が悪くなった人は居なかったんだね」
「居ませんでした」
「で、子供たちの反応はどうでしたか」
「とても美味しそうに食べていました」
「ですから、鳥を分けて頂きたいです」
イルナルが言って、直ぐにロステムルが続けた。
「院長、良いですか」
「許可をしましょう」
私たちはお互いに顔を見合った。
でも、これからの方が大変なので、歓声をあげたりハイタッチをしたりとかはしないでいた。
「でしたら鳥小屋を作った方が良いですね。どこに作るか三人で決めて下さい」
院長たちは、鳥小屋の場所を決める相談をしだす。
何羽の鳥を飼うかにより大きさは変わるので、今日の料理で使った量を目安に、いろいろとアドバイスをした。
また、鳥のタメに池を作るので、敷地を広げても良いかって確認しておいた。
「決まりました」
ロステムルが言ってきた。
「じゃヴェルゼーアとアークシュリラは、院長に再度説明をしてね。私たちで作って来るから」
イルナルとロステムルは牛のいる所へ行った。
「この柵の外側でお願いします」
「ここなんだね」
「ここは随分と日も当たるし良い場所だな」
レファピテルが土魔法で建物を作ろうとするのを私はとめた。
「ちょっと待ってレファピテル。折角だからイルナルとロステムルの二人に作って貰おうよ」
「そうでした。私たちが作っても、壊れて直せなかったら仕方ありませんね」
「絶対に無理です」「そんなコトは言わないで作って下さい」
イルナルとロステムルが同時に言って来た。
「平気な様に、少しずつ教えながらやりますからね。先ずは柵の移動をしましょうか」
初めはイルナルとロステムルに、土から真っ直ぐな棒を作ってもらうらしい。
レファピテルが最初に見本を見せてから、二人が同じ様にそれを行う。
攻撃魔法が使える二人なので、コツさえつかめば後は簡単にできる様になると思う。
しかし、初めの一本が作れる様になるまで、何度も私たちは同じコトを言葉を換えて説明することになった。
そして強度など、なんとか使えるレベルのモノが作れる様になった。
やっぱり、一本が出来ると後は早い。
建物などの大まかな大きさを決めて、今作った棒を魔法を使って配置していく。
これは魔法を放出するのと感覚が似ていたようで、二人でも簡単に出来た。
「今設置した棒を柵と同じ形にするよ」
先ず、私がやって見せた。
しかしこれは感覚なので上手く説明が出来ない。
なので一人ずつ体内にある魔力を私が操作しながら、二人に交互にやって貰う。
そして、私がアシストをしないでやってもらう。
いつもなら移動しないが、慣れない二人なので棒の傍に行って魔法を掛けている。
初めこそぎこちなかったが、最後は立派なモノになった。
外周が終わったので、私が最終点検をする。
一番壊れてはいけないモノだから、二人に断ってから強度アップも実施した。
その際、他の柵も同じ様に確認と強度アップもしたよ。
「魔法で慣れは大切だよ。しかし、慢心や油断は最悪の事態を招くから注意も必要だよ。使うのに慣れは必要だけど、いつもやっているって変な自身はいらないよ」
「そうですね。逆にいつもと違うことをするのも、良いですね。私たちも私がこう言うモノを魔法で作ったら、ゼファーブルに確認してもらって間違いのない状態を目指します」
「そうなのですね。とても勉強になります」
ロステムルが言った。