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192 展望フロアー

 室内に散らかしたモノを片付けてから、私たちは、また、四階の室内にある扉の前に戻って来た。


「レファピテル、どうやる」

「このドアノブですよね」

「杖をドアノブに当てて流す?」

「ドアノブに触れていれば良いので、片側ずつ触れますか」

 ドアノブは、基本的に二人が同時に同じ方向から握る様には、考えられていない。

 それならと反対側からとも考えたが、それではダメだった。


 結局、私とレファピテルはドアノブを半分ずつ触って、魔力を流すコトにした。

 もう、アシエゴーレムはいないから、ちょっと多く流しただけで、扉の傍にある石畳の床が金属の床に変わった。


「階段じゃないのか。それに、この床はナンだ」

「本によると、この床に乗れって上か下を思うだけで良いみたいだよ」

「これが消える前に上へ行くか」

 私たちはその床に乗った。


「みんな乗った?」

「乗ったよ」「乗ったぞ」

「それじゃ、私が念じるよ」

 私が上と念じると床がそのまま上がって行く。


「これなら、アシエゴーレムでも他の階に行けるな」

「アシエゴーレムはしゃべらんし、念じるとも思えないが」

「アシエゴーレムだけで使うコトは無いと思うよ。使う際には、必ず魔導師(ソーサラー)が居たと思うからね」

「そうか」


 そして、床は四階に着いて停止した。

 そこは周囲の壁や天井の全てが無色透明で、まるでガラスの様だった。

 その透明の壁の前には、この空間を囲むように何種類もの花が咲いている。

 そして部屋の中央にも綺麗な花の咲いている花壇がある。

 それ以外の床は石畳が敷かれていた。


 何処から入って来たのか、それとも魔導師(ソーサラー)が連れて来たのか、小さな蜜蜂が数匹飛んでいた。

 花壇を囲む様にその周りに作られたベンチには、杖を脇に置き、衣装のローブから云って魔導師(ソーサラー)がミイラ化して座っている。


 長く伸びたヒゲが印象的な顔をしていて、とても穏やかそうだ。

 きっと生きていれば、この人とは良い付き合いが出来たと感じた。



「ここに居たんだね」

「どうしますか」

「花が好きみたいだから、花が咲くところに葬ってあげようよ」

「そうだな。ギルドに有った依頼書では、ゴーレムの退治だけだしな」

 この塔の近くにも、花が咲いている場所は沢山ある。


 レファピテルが魔導師(ソーサラー)の目を魔法で閉じさせた。

 その行動は、レファピテルが偉大な魔導師(ソーサラー)に敬意を持って接している様だった。

 もう、二度と目を開けて、世の中を見ることはない。

 イヤ、もうこの人は、楽しいこともあるけど、理不尽なことも多いこんな世の中を二度と見る必要は無い。

 やはり、好きな花に囲まれた所で生活を送って貰いたい。


「レファピテル。何処が良い」

 ヴェルゼーアも私と同じ様に感じた様だね。

 レファピテルはそのヴェルゼーアの質問に答えずに、壁の方へ歩いて行く。

 ヴェルゼーアも答えを急かさないで、レファピテルに着いて行く。

 私たちも一緒に行く。


 透明な壁から周辺を眺めてみると、街やその向こうの森や山も見える。

 海も、遥か北に有る湖すら小さく見えた。

「ここからの眺めは良いな」

魔導師(ソーサラー)も、好きだったのかも知れませんね」

「好きな所で死ねたのだから、幸せだったかも知れないな」

「そう思いたいですね」


 私たちは、とりあえずこの空間も調べたが、特段なにも発見出来なかった。

 蜂は、空気を入れ換えるタメに作られた小窓から出入りをしていた。

 他のムシたちも出入りしているのかも知れないが、ここには小鳥などは居ないのでそれらにとっても生活しやすい場所だと思う。


「この塔は壊されるのでしょうか」

「これを維持するのは大変だし、傍に街道も有るから倒壊したら事件だ。多分、壊すと思うぞ」

「そうですよね。でしたら道の向こう側に葬ってあげましょう。そこなら塔も見えるでしょうし、少し丘にしても平気ですからね」

「そうか」


 私たちは道を挟んで、塔の向こう側に転移した。


「ここなら塔が見えますね」

 私たちが振り返って塔を見ると、塔の一階部分が透明になっていて中が見える様になっていた。

「一階が……」

「ギルドでゴーレム退治の依頼が有ったのは、この状態でゴーレムを見たからだな」

「そうですね。魔導師(ソーサラー)はゴーレムが中に居るので、無闇に入って来ないようにしていたのですかね」

「きっと、優しい人だったんだね」


 そして、私たちは魔導師(ソーサラー)のタメに小さな円墳を作って葬った。

 壊されない様に“偉大な魔法使い、ここに眠る”と掘った石碑も立てた。

 最後に花壇に咲いていた花から取った種を円墳に撒いて、私が魔力を込めて花を咲かした。


「ギルドへ行こうか」

「そうだな。早めに報告はしないとな」

 ギルドへ向かう前に、塔の出入り口扉の鍵をビブラエスがした。


 私たちはカヌーでギルドへ行き、掲示板からゴーレム退治の依頼書を取って受付に向かった。


「この依頼だが、訳あって私たちで受託前に終わらした」

「この依頼ですか」

「そうだ」

「でしたら、ゴーレムはお持ちですか」

「あるが。さすがに、ここでは出せないぞ」

「そうですよね。では、こちらに来て下さい」

 私たちはギルド内にある解体作業場へ通された。


「ここなら、出しても平気ですか」

「ここなら大丈夫だ。アークシュリラ、出してくれ」

 アークシュリラが一体のアシエゴーレムを出す。


「他にも有りますか」

「有るが、問題でも」

「いいえ。専門家がもう少ししたら来ますが、アイアンゴーレムではないですね」

 受付の人がゴーレムを見ていると、筋骨隆々のモノがやって来た。

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