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191 魔法陣の欠陥

 床に置いてある粘土版をレファピテルが拾い、魔法陣を消してから言った。


「アークシュリラ、私の言う通りに魔法陣を作って、この粘土版に入れて下さい」

「それを私がやるの? レファピテルと比べられるのは……」

「アークシュリラは一般的な魔法使い程度の力量が有りますよ。ですから自信を持って、出来るだけ小さく作って下さい」

「判ったよ」

 レファピテルが指導して、アークシュリラは自分が作った魔法陣を粘土版に入れた。


「今度はビブラエスが壊しますか」

「同じヴェルゼーアで良い」

「そうか」

 再びヴェルゼーアが粘土版を破壊すると、魔法陣が壊れた音がした。

 粘土版は一回目と同じ感じに割れているから、アークシュリラの魔法陣が大きかったと云うコトだね。


「見ての通りです。普通はこの粘土版くらいのサイズが、魔法陣を小さく作る限度です。ですから二人は心配は要りませんよ。自己修復さえ残っていれば良いのですから、ダミーでも良いのでもう一つ魔法陣を仕込めば、さっきも魔法陣が壊れる音はしますね」

 そう言って粘土版に杖を当てて、それを消した。


「そうなのか。それではナゼあの魔法陣は壊れたままなのか」

「簡単に云うと修復の魔法陣が壊れたから、自己修復をしなかったのです。バックアップも機能しなかった様ですし」

「私たちの運がよかったのか」

「でも、そんな偶然が重なるコトはありえません。そうですよね。ゼファーブル」

「そうだね。ゼロでは無いけど……」

「これがアークシュリラが見つけた魔法陣の仕組みです。これを見ておかしなコトに気付きませんか」

 レファピテルはそのページを開いて、私に本を渡して来た。


 う~ん。これが吸収で、こっちが増幅ね。

 相互でやり合う感じに成っているんだね。

 スゴいなぁ。


「判ったよ。そうだね、これは偶然じゃ無いね」

「ゼファーブル。そのまま言ってくれる」

「バックアップを含めて修復は元々機能はしないよ。だって考え方が間違って居るからね。それに今やった実験もレファピテルがこれを参考に考えたモノだよね」

「そうなのか」

「細かいコトを言っても仕方ないので、ここに書かれた魔法陣を作って見るよ」


 私はレファピテルと同じ様に粘土版を二つ作った。

 こうだね。

 一つは山頂にあった吸収する魔法陣で、もう一つはゴーレムにあった魔法陣だ。

「じゃ、一つをヴェルゼーアが持ってて」

「私がか」

「そう」

 私はヴェルゼーアに粘土版をわたす。


「じゃ、エネルギー……今回は魔力を流すよ」

「こっちが光ったぞ」

「あっ。それはエネルギーが来たって判るようにしただけだよ。続けるよ」


 私が魔力を流し続けると魔法陣が壊れる音がしたが、ヴェルゼーアの持っている粘土版は光っている。


「ゼファーブル。今、魔法陣が壊れた音がしたが、まだこっちは光っているぞ」

「そう、今のは、自己修復が壊れただけだよ」

「ナンでだ」

「本来は増幅にも同じ様に設置すれば問題は起こらなかったけど、確認が面倒だったのかなぁ。全てを吸収する魔法陣の所に集約したから、キャパオーバーしただけだよ」


「そういうことか」

「それで私たちが見付けた時には、7割も機能ダウンしてたってことだね。レファピテル、これで合っている」

「そうです。吸収はアシエゴーレムを動かすのに充分なエネルギーを集めていました。今、計算した所では20体以上を動かせますね」

「まだ、アシエゴーレムが居るのか?」

「居ないでしょう。吸収の論理上の性能ではその数ですが、作れなかった様ですね。ゼファーブル」


魔導師(ソーサラー)で、ホムンクルスの様なゴーレムを作った才能は認めるけど、素材が不足してるよ。ノートによると、それを補うために禁忌に近いことをして居たようだよ」

「それ以上は言わんでいい」


 錬金術では自分の死に直結するモノを、素材に使うのは禁忌になる。

 この魔導師(ソーサラー)は自分の命を素材に使っただけだけど、ヴェルゼーアは何と勘違いしたのだろう。

 もちろん命は分割出来ないし、手で触るコトも出来ない。

 素材として利用出来るのは、そう血液や歯などの骨だよ。

 死期が近いモノが、そう言ったモノを使うコトはたまに聞くコトがある。

 しかし、どれも理論上の性能が、ナゼだかでないんだよ。


「ゴーレムが作れなかったコトも判ったけど。レファピテル、他の階に行く装置はどこにあるの」

「そうでしたね。それはずっと目の前の壁に有りますよ」

 みんなで壁際までやって来たが、そこにはナニもない。


「本来、ここに全ての階に行ける装置があったのですが、エネルギーの増幅を減らしたことでそれは消えました」

「アシエゴーレムと階段にエネルギーを使っていたのだな。なので20体ものエネルギーが必要だったと言うことか」

「元に戻さないと出てこないのか」

「さっきレファピテルが言った、上下を思うってやつはこれを作ってからは、あまり使わなかったみたいだよ」

「便利だと思うんだけど……」


「上下を思うだけだからね、でも常時出ているモノで他の階に行ければそれは使わないよね。上の階に行こうよ。私とレファピテルがエネルギーを入れるからね」

「ここではダメなのだな」

「エネルギーの注入装置があの扉だからね」

「判ったよ。上に戻るか」


 散らかしたモノを片付けてから、私たちは、また、四階の扉の前に戻っていく。

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