190 魔法陣の秘密
レファピテルは次々にアシエゴーレムの頭部にあった魔法陣を破壊していって、全ての魔法陣を壊し終えた。
「ビブラエス。ここではエネルギーは感じるか」
「ここでは感じない。この塔に入ってあすこだけだ」
「ゼファーブル。本当に残存なのか? それならビブラエスが、この部屋でも感じると思うのだが違うのか」
「レファピテル。あの扉には魔法陣は無かったんだよね」
「ベッドが有った部屋や扉、その周囲にも魔法陣は有りませんでした。ですからゼファーブルの云う残存で良いと思いますが、あの部屋以外で感じないのはやはりおかしいですね」
「そうだよ。私とレファピテルはこれほど魔力が充満していると解析が出来ないけど、ビブラエスの感覚は私たちのと違うからね」
「ゼファーブル。机の上に有ったノートにはナニが書いて有ったか判るか」
「さらっと見たところ、研究メモだね。じっくり読めば判ると思うけど……」
「今の所、私たちが行ける部屋はこれ以上ない。しかし、窓の位置から云って、上に一つかそれ以上の部屋があるのも事実だ。休憩を兼ねてここで資料の整理をしつつ読もう。レファピテルの本もな」
私とレファピテルは研究室に有ったモノをここに出して、みんなで本の目次などを見ながら整理をしだす。
ただの魔道書や市販本は今は必要ない。必要なのはこの塔で研究していたコトの情報や塔自体の設計図だ。
今、他の冒険者がやって来たら、私たちを見てどの様に思うだろうか。
研究者かなぁ、それとも泥棒?
本に埋もれて居るので、私たちを同業者とは思わないだろう。
まさか塔の住人と思われて、最悪でも攻撃されなければ良いなぁ。
レファピテルの持っていた本は、サラッと見るだけのモノが多いが冊数も多い。
私のノートやメモは数こそ少ないが、内容を把握しないといけない。
どちらでも時間も掛かりそうなので、お菓子やお茶も用意して持久戦に突入した。
分担は自然と次の様になった。
先ずはヴェルゼーアやビブラエスの二人が、全ての本にある目次を見てアークシュリラに渡すモノとしまうモノの仕分ける作業をしている。
それは、二人が魔法を学んで無いので、端から内容を理解することを諦めているからだよ。
次が、独学で魔法を学んだアークシュリラだが、彼女は少しは内容が判るので、二人から受け取った本を内容により仕分けをしている。それでも、やっぱり専門的なコトは理解出来ない方が多いけどね。
専門的なコトや難しい数式は、魔法の基礎を習っている私とレファピテルが、最後に内容を吟味している。
その分担で私とレファピテルの読む冊数は減るのだから、三人の作業も決して無駄ではない。
この本の中にあるか判らないが、地図や名簿などのあからさまに今は関係ないモノを、私たちが読まないで居られるからね。
各自が出来るコトをやるのが、一番早くて確実だよね。
窓の無い処なので、読み出してからナン時間が過ぎたのだろうか。
寝転がったり、歩き回ったりして気分転換をしながら、ヴェルゼーアとビブラエスの全ての仕分けは終わった。
塔の設計図は無かった様だね。
そうなると、今、私とレファピテルの傍にある本は、中を読まないといけないコトを意味している。
まだ、結構な数があるね。
「上の階へ行く方法が判りましたよ」
突然、レファピテルが言った。
「本当に」
仰向けになって読んで居たアークシュリラがそう応じた。
「何処から行くのか」
「ビブラエスが感じたエネルギーがある所からです。この本によるとあの場所で行く所を思って扉を開けるとそこへ行けます」
「それは転移なのか」
「近いですが、転移と違い上下を思うだけの様です」
「それだと一階には行けないのか」
「そうですね。それに、ここにはそれが無いですから、戻るコトも出来ませんね」
四階のエネルギーがナンで有るかは少し解ったが、まだ不十分だ。
再び私たちは読書を続けた。
「レファピテル。これだよね」
今度はアークシュリラが起き上がって言った。
「どれですか? 見せて下さい」
アークシュリラは本をレファピテルに渡した。
レファピテルは真剣にそれを読んでから言った。
「これでナゾは解けました。この方法なら、この部屋にも……イヤ全ての階に同じモノが有りますよ」
「どう言うことだ。私たちにも判るように説明してくれ」
「先ずは山の山頂に有った魔法陣がナゼ壊れたと思いますか」
「それは経年劣化だろう」
「私もそう思ってましたが、この本によると3割程度性能が落ちると自己修復するそうです。ならばナゼ7割も落ちたのかです」
「壊れたとしても、修復するなら元に戻るよね」
「そんなコトが有るのか」
「試しに私がその魔法陣を入れた粘土版を作りますので、ヴェルゼーアが割って下さい」
そう言ってレファピテルは粘土版を作り、ヴェルゼーアに渡した。
「本当に割って良いのだな」
「はい、床に置いて剣で割って良いですよ」
ヴェルゼーアは粘土版を床に置いて、剣を刺して粘土版を割った。
粘土板は幾つかの破片に変わった。
「もっと粉々にしても良いですよ」
「そう言うなら」
再度、ヴェルゼーアがその破片を砕いた。
「これで良いだろう」
「では、少し待っていて下さいね」
少しして、粘土版は独りでにくっ付いて元通りになった。
「どうして元通りになる」
「それは魔法陣を壊して居ないからですよ。それと空気が有れば、この魔法陣は発動しますね」
「その魔法陣の大きさはどのくらいなの」
「今の大きさは米粒くらいですね。ここに居た魔導師はそこまで小さくは出来なかった様ですが」
「これを物理的に破壊するのは不可能なのか」
「時間が掛かりますが、魔法陣以下にすれば可能です」
「それは無理だな」