187 塔の探査をする
山頂で発見した魔法陣を解析したレファピテルが、このままにして置くのは山にとっては良いことではないと言った。
「どうする。他のを止めるか」
「ヴェルゼーア。この状態では、私たちがやるしかないだろう。レファピテルとアークシュリラならどこがここと同じか判るのだから、それ程時間も掛からない」
「判りました。やりましょう」
レファピテルとアークシュリラは、先ずこの魔法陣にある魔力を把握して、ここと同じ魔力がある仕掛けを探す。
「6つかなぁ」
「そうですね。6箇所ですかね」
私たちはカヌーでその所へ行った。
「先ずはここですね」
「壊して平気なのか」
「掘り出さないと解析は無理です。今、私たちが出来ることはこれを弱めるくらいです」
「レファピテル一人じゃ大変だよね。弱めるってどうやるの」
「ゼファーブルは劣化や低下は使えますか」
「低下なら使えるよ」
「山頂の魔法陣の状態から言って、70パーセント低下する様にそれを掛けて下さい」
「70パーセントだね。解ったよ」
「低下! これでいい?」
「平気です」
そして私たちは、6箇所全ての仕掛けを低下させた。
「これで終わったね」
「まだ、有りますよ」
「そうだよ。これを使ってエネルギーを集めている所がね」
吸収しているだけでは設置した意味はない。
エネルギーを使うタメに設置したハズだ。
「それって、あの塔か」
「そうだよ。良く判ったね」
それしか考えられないが、他で使っていて欲しかった。
と云うか二人は魔力を解析した時に7箇所って判ってるのに、私たちがいつまでもゴーレムを無視しているから6箇所って言ったのかなぁ。
「じゃ、行くか」
「もうゴーレムが居るって判ってるから、行きたくないな」
「エネルギーの供給を減らしたので、もう、たいしたことはないですよ」
「いくらエネルギーが減ってもゴーレムはゴーレムだ。アイツらは動きを止めるまで遅くなることはないんだぞ」
「山のエネルギーだと、マッドゴーレムじゃないよね」
マッドゴーレムは土でなく、泥で出来たゴーレムである。
一般的にゴーレムの中では一番弱いと云われているが、体が泥の為に物理攻撃はほとんど効かない。
なので物理攻撃しか出来ないパーティーだと、土で出来たクレイゴーレムや石で作られたストーンゴーレムの方がやっつけ易いと云う逆転現象が起きるよ。
蛇足だが、ゴーレムは生き物ではないので手足を切れば別だけども、いくら傷ついても性能が落ちることはないよ。
私たちはゴーレムの待つ魔導師の塔を目指した。
「着きましたね。出入り口から入って行きますか」
塔には低い位置に窓はない。
しかし、カヌーを使うか魔法でなら、そこへ行けないコトはない。
「窓は開いてないから、出入り口からの方が楽だな」
「いきなり攻撃をして来るとは思えないが、用心しておくか」
ヴェルゼーアはそう言って剣を抜いた。
アークシュリラも抜刀しているし、レファピテルと私も杖を構えている。
それを見てから、ビブラエスは出入り口扉の鍵穴を専用の工具で開けた。
「じゃ、開くぞ」
「いつでも良いよ」
ビブラエスが扉を開けた。
しかし、扉の先にはゴーレムは居なかった。
「ビブラエス、中に入るか」
罠を調べてからビブラエスは中に進んだ。
「ギルドからは、今は誰も来ていない様ですね」
それは出入り口の扉に、鍵が掛かっていたコトでも判る。
ゴーレムが動けば多少の音がするが、ここは物音一つしない。
私たちが入った室内は、20メートル弱くらいの円形の空間だ。
左右の壁には上へ行く階段があるだけで、机や椅子などの調度品や壁にも絵画とかもなかった。
「上に行くしかないな」
「そうだね、早く見付ないとね」
「で、倒したらそのままと云う訳にもいかないな」
「ギルドへの報告ですね」
「あぁ、そうだが。それは倒してから考えるか」
私たちは二階へ上って来た。
階段は壁沿いにまだ続いているが、その脇に踊り場から続く廊下と云うのか、踊り場の延長されたモノが有ってその先に一つの扉が有る。
「全て扉が無いとありがたかったが、そう言う訳にもいかないな」
ビブラエスが扉の周囲を調べてから、私たちの方を見た。
「鍵は掛かっていない、開けるぞ」
「頼む」
そこは10メートル位の正方形の部屋で、中にはソファーがあり応接室の様だ。
右側の壁には扉が一つあり、正面には一つの風景画が飾られていた。
「応接ですね。あの扉の先が水周りですかね」
「そうだね。水周りが違う階に有ったら面倒だよね」
風景画やソファーなどを全員で調べたが、怪しい所はなかった。
そしていつもの様に、ビブラエスが扉を調べてから中に入った。
そこはレファピテルの言ったとおり、水道や火を熾す魔法陣など水周りの設備が有った。
そして、食器棚に年代物の食器が並んでいる。
扉は私たちの入って来た扉とは別に、反対側にもう一つある。
多分、もう一つの階段に続く部屋が有るのだろう。
「こっちの部屋は、さっきの部屋より狭いね」
「そうだな。それでも6人くらいが座れるソファーがあるな」
「こっちの絵は海だね」
さっきの部屋に有ったのどかな田園風景とは異なり、荒々しい海の絵が掛けられている。
ここも怪しい所はなかった。
案の定、扉の先にはもう一方の階段が有った。
そうなると次の階辺りで、ゴーレムとご対面になる。
そうでないと外観では五階建てなので、ゴーレムがいないコトになる。
でも、ナンでこの塔にゴーレムが居ると判ったのかなぁ。