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186 山を調べる

 院長に見送られて孤児院を出た私たちは、アイテム袋から馬をだして少し進むことにした。


「疲れたな」

「仕方ないな」

「アークシュリラ。ブゴーグを全部あげちゃったけど、魔石は良かったの」

「まだ居ると思うから、今回の魔石は良いよ。それに魔石だけを取ることは出来ないから、解体作業もしないといけなくなるよ」

「そうだな。魔石を取ったら早く解体をしないと、腐敗が早まるモノもいるな」

 魔物の中には、ナゼか魔石だけを取って部位毎に解体をしないでおくと、腐敗が早まるモノもいる。


「それじゃ。山の方へ行く?」

「そうするか。これだけ巨大な山だから、ナニか有るかもな」


 私たちはカヌーに乗って森の上空へやって来た。


「この森って魔物は居そうだね」

「居てもそんなに強く無いと思うよ」

「ゼファーブル。どうしてそう思うの」

「院長も森の魔物で困っていると言ってなかったから、孤児院で対応が出来るレベルと言うことだね」

「それもそうだね」


 鬱蒼とした森は確かに魔物が居そうだ。

 しかし、森の中に居る魔物は簡単には草原に出て来ない。

 きちんと自分たちの住む所を理解している様だ。

 なので、人が暖炉とかで使うタメに木々を無闇に伐採して、魔物の住み処を無くさなければ遭遇することも少ない。


 火の魔石で煮炊きや暖を取る機械は有るが、値段が高いので使っているのは貴族やお店などの一部のモノだけだからね。

 今後、火の魔石を使わない機械が開発されて、安価になれば庶民にも広まると思うよ。

 そうなれば、森や林の木を切ることも無くなる。


 如何せん火の魔石が入手し辛いから、高価なので仕方ない。

 なんだか巨大なナニかが動いた気配はあるけど、森の中で人が戦っている雰囲気はない。


「でもブゴーグって普通は草原に居ないよね」

「そうですね。ブゴーグは山の中腹などの植物が生えている所で、通常は生活してますね。高い木に登ることもありますが、普段は低い木をねぐらとして利用しますね」

「この山だと三合目くらいの所だな。ここからでは特段普通の山とそんなに変わりはないが……」

 草原にはあまり木がないので、ブゴーグが好き好んでねぐらのない草原に来たとは思えない。


「煙が上がっている訳ではないから、下りてみても同じだろうな」

 ヴェルゼーアがそう言って高度を下げたので、私たちも同様に高度を下げて着陸した。

 そこはドコにでもある山の中腹で、地面が熱を持っているとか硫黄くさいとかはない。

 もちろん水蒸気も上がってはいない。


「特に異常は無いよね」

「ゼファーブル、そうだね。でも、ブゴーグだけでなく、他の生き物の姿もないよね」

「そうだね。非難したのかなぁ」

 人間より動物の方が、周囲の変化、特に危険に対しては敏感だ。

 まさか、アシュミコルが送ったモノがナニかをしたタメに、ここで生活をしていた生き物が逃げたってことは無いと思いたい。


「やっぱり噴火をするのか」

「どうだろうね」

「それにしても、生き物がほとんどいないこの状態は変です。少し調べてみましょう」

「このまま歩いて調べるより、一度カヌーで山全体や周囲の状況をみてから、オカシイと感じた処を地上に降りて調べた方が早いな」

 私たちは別々に分かれて、カヌーで山頂付近や裾野周辺と飛び回りながら、目視で異常が無いかを確認した。


 とても粗い確認方法だが、なんせ山全体を調べなければならない。

 各自の経験と勘があれば、これでも異常なところは判る。

 四方八方から見たので、一緒に見ていたら見逃してしまう様な異常も見付けられると思うよ。

 そして、怪しい所はみんなで地上に降りて、魔力を使ったり能力を駆使したりして探った。


 そしたら幾つかの魔法の痕跡を見つけ出すことが出来た。

 裾野から順番に、レファピテルとアークシュリラが魔力を解析している。


「これらが二人以上のモノによって、仕掛けられたことが判っただけだな」

「どれが真っ赤なローブを着たモノによって、仕掛けたモノかは判らないからね」

「魔力のサンプルが有れば、良いのですがね」

「これじゃ、掘り出しても解除や解析をすることは出来ないよね」

 魔法陣なら掘り出すことも出来るが、魔法陣でないとどう言った仕組みかが判らない事には、むやみに掘り出すのは山に対してどんな悪影響を及ぼすかが判らずに危険だ。


 そして、私たちは最後に山頂の火口に有った、痕跡を調べている。


「上空から見たより、下りるとさすがに火口は大きいね」

「そうだな。小さな村なら入るかも知れないな」

「ここだけは、魔法陣だったのですね」

「レファピテル。この魔法陣は破損してる様に見えるんだけど……」

「そうですね。これでは正常に機能しないのではないかと思いますよ」

「レファピテル。魔法陣の術式は判るか」


 レファピテルは魔法陣の解読をやり始めた。

 しばらくしてレファピテルは振り返って言った。

「ひとつは完全に破損していて判りませんが、もう一つの魔法陣は山のエネルギーを吸収しているモノですね」

「エネルギーを吸収? 今も吸収しているのか」

「はい。正常時より劣りますが、吸収していますよ」


 山のエネルギーを吸収してナニに使っているのかも問題だが、ナゼ壊れたのに直さないのかも問題だ。


「このままにして置いて平気なの」

「いつかは完全に破損して、この機能が停止しますね。でも、他にエネルギーを増幅しているモノが有れば、吸収するモノが無いのですから危険です。ここと同じ魔力は他にも有りましたからね」


 真っ赤なローブを着たモノが帰ったのは、山の噴火が自然災害でなく人災だからと云うことかなぁ。

 ならば人々で対応するコトが可能だ。

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