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185 孤児院に行く

 私たちは倒したブゴーグを孤児院に運んでいる。


《この山が噴火したらどうなるのかなぁ》

《噴火の規模によるけど、山の麓なら被害は出るだろうな》

《そうだよね。でも、孤児院って街の中に有るのが普通だと思ってたよ》

《アークシュリラ、着いたら聞いてみれば》


 しばらく進むと、今度はイルナルが御者台に行き、ロステムルは荷台に移った。

 こんなに短い時間で、変える意味が私には判らない。

 でもこれが二人のやり方なのだろう。


「もう直ぐ着きますよ」

 御者台のイルナルがそう言った。

「山の麓と言っていたけど、まだ森の出入り口じゃないの」

「そうです」

 イルナルの言うとおりで、直ぐに目的地に着いた。

 そこには、結構な大きさの立派な建物が一つ建っている。

 その上、牧場に有る動物が逃げ出さないタメにある柵が、その周囲を取り囲んでいる。


 子供なら簡単に柵の隙間から外に出ることが可能だが、これでやっていると言うことは逃げるコトがないのかなぁ。

 それにこれだけ山から離れていて、その上、間に森が有るのだから少々の噴火なら大丈夫だろう。


 門には扉すら無いので、私たちはそのまま敷地内に入って行った。

 イルナルが馬車を正面玄関に着けると、ロステムルが荷台から下りて建物の中へ入って行った。

 誰かを呼びに行ったのかなぁ。

 それにしても、立派な建物だね。

 一体、孤児はナン人くらい居るのかなぁ。


 少ししてロステムルが一人で戻って来る。

 あれっ、呼びにいったんじゃなかったの。


「では、中で先ほどの魔物を出して下さい」

「判った」

 私たちはヴェルゼーアを先頭にロステムルに着いて行った。

「こんにちは」「いらっしゃい」

 職員らしきモノたちは、通路ですれ違う度に必ず声を掛けてくる。

 こういう所で働く人たちって、やっぱり礼儀正しいね。


「ここには、ナン人が居るのか」

「一歳くらいから14、5才までの子供が46名で、職員が17人です」

「ここの建物は孤児院としては立派だが、院長の趣味なのか」

「いいえ。私たちは街の外れに居ましたが、街の拡大と整備によりここに移りました。もともとこの建物は貴族の別荘でしたものを、街の運営者から無償で譲って頂きました」

「拡張か、体よく追い出されたのだな」

「街から遠いので、大人たちにはそう思えますが、子供たちには広い敷地で伸び伸びと生活が出来ますし、他の人の目も気にする必要は無いので良かったと思いますよ」

「そうか。確かに街の中では、この広さは無理だな。心ないモノたちの目が気にならなくなるのは、確かに良いことだな」

「はい。それでは、こちらにお願いします」

 ロステムルは、机が置いてあるだけの部屋に着いてそう言った。

 倉庫なのだろうか、それとも職員がナニかの作業をする部屋なのかなぁ。

 ヴェルゼーアとアークシュリラが、それぞれ一体ずつブゴーグを机の上に出した。


「これで良いか」

「はい。ありがとうございます」

 二人がブゴーグを置いたので私たちが帰ろうとすると、一人の年配のモノが部屋の出入り口に現れた。


「ありがとうございます。私は院長をしてますアルシャと申します。今イルナルから訳を聞きましたので、お帰りの前に挨拶をと思いやって参りました」

「子供が増えて忙しい中、それはかたじけない。私たちは直ぐに帰るので、仕事に戻って頂いても構わないが」

「いいえ。ナニも有りませんが、お茶の用意をさせましたので、お口に合うか分かりませんが……」

「分かりました。案内をして下さい」

 ヴェルゼーアでなく、レファピテルがそう答えた。


 まぁ、茶を飲むくらいなら構わない。

 食事となれば、さすがの私でも帰ろうと言うよ。


 私たちは院長室でなく敷地で遊ぶ子供たちが見えて、その向こうには畑も見える一室に案内をされた。

 さすがに元は貴族の別荘だけあり、部屋はたくさんある。

 孤児院で使うタメに改築しても、構造的に壊せない壁や柱はそのままにして使うしかない。


 まぁ、この状態で茶に毒などを入れるコトは無いと思う。

 もし私たちの全財産を奪うタメに入れていれば、心の読めるレファピテルが誘いに乗る訳はない。

 それに茶は客用でなく、日常使いの大きめのヤカンに入っているしね。


 この匂いから言って明日葉とビワの葉っぱの茶だね。

 ビワは血の流れをよくするし、明日葉は血液を浄化して貧血の防止になるよ。

 ここでは食事で必要な栄養が取れないから、野草の茶を飲んで居るのだろうかなぁ。

 ここに居る魔法使いでも、治癒や回復の魔法なら使えると思うけど、使える回数はそのモノたちの魔力量によるからなぁ。


 出された茶を飲んで、ヴェルゼーアが言った。

「孤児院の経営はドコも大変と聞くが、ここもそうなのか」

「どこの街でも潤沢にお金が有るわけではないですから、それは仕方がありません。しかし、子供を預かる時に多少のお金と半年毎に運営費も頂いていますから、ここはまだ良い方です」

「そうなのか。大変だな」

 私たちと院長は、庭にある畑で作っている作物や森へ行くことがあるのかとか、たわいのないことを話して孤児院を出た。

 まぁ、お互いに込み入った話をする関係でないからね。

 院長は玄関まで出てきて、私たちを見送ってくれた。


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