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181 アークシュリラが倒れる

 カンニラムの召喚を終えると、アークシュリラが倒れた。

 突然、意識が無くなった感じだ。


 私はアークシュリラの脈などを調べて、彼女の体力が非常に弱っていることが判った。

 でも、どうして彼女の体力が、これほど弱っているんだろう。


 落ち着いて、考えろ!


 倒れる前には召喚をしていたけど……アークシュリラ自身は進行役をやっていたが、召喚魔法自体を発動した訳ではない。

 だから、このことで魔力を消費することはないので、こんな風になることはあり得ない。

 もしかすると彼女は、体の中で天の声……転生した時に出会った神と戦っていたのかな。

 もしそうだとすると、私たちのタメに……

 それにビブラエスが明日と言った時に、反対したのはこうなるコトが判っていたからかなぁ。


『ゼファーブル。この状態では薬を使ったり、魔法を掛けたりして治してはいけないぞ』

 そう云う両親の声がした様な気がした。

 それは、ただの第六感なのかも知れない。

 そして、私はその声……感覚を信じることにして、薬をいっさい使わないし魔法も掛けないで、アークシュリラを治す方法を考えてみる。


 答えは直ぐにでた。

 ごめんね、アークシュリラ。今の私じゃ、この状態は治せないよ。


 再び声が聞こえた。

『ゼファーブル、自分の杖を信じろ』

 そうだ。私はナニを弱気に成っているの。

 私が諦めたらお終いだ。

 もがいて、もがいて、悪あがきでも良いし、それが格好悪くても構わないので、なんとかしないといけない。

 そして、私は自分の杖を眺めて、二匹の蛇の頭を右手の掌でゆっくりと撫でてから、羽根を自分の額に当てて念じた。


 どうか、アークシュリラを救って下さい。


 そして、その杖を横たわるアークシュリラの体の中央に置いて、左右の腕で抱かした。


「ゼファーブル。薬や魔法は使わないのですか」

「これが今のアークシュリラには一番良い方法だと感じたよ。それにアークシュリラをベッドに運ばないで、しばらくはこのままにして置いた方が良いね」

「そうか。私には良く判らないが、ゼファーブルが言うならそうなのだろうな」


 心配だが、そばに居ても見守るしか出来ない。

 私たちが傍で見守って居ると、杖が力を発揮することが出来ないかも知れない。

 後は杖の力を信じるしかない。

 それにアークシュリラの体にナニか異変が起こっても、杖や私の両親がきっとなんとかしてくれるだろう。


「心配だけど、外に行こうか」

「誰も居ないで良いのですか」

「私の杖が、必ずアークシュリラを守ってくれるから大丈夫だよ」

 私たちはアークシュリラをそこに残して小屋を出た。


 ヴェルゼーアとビブラエスは本が届く前に、どんな形で届いても良い様にレファピテルに頼んで一つの建物を作って貰った。

 そうしたのはナニかをしていないと、アークシュリラのコトが頭をよぎるからと私は感じた。


 それを眺めながら、私はどうしてアークシュリラの体が弱っているのかを、考えることにした。

 出会ったころに、アークシュリラは天の声に云われて、私に話し掛けて来たと言っていた。

 その声の主は、アークシュリラをこの世界に連れてきたモノだと私は思って居る。

 なので今もその声が聞けても、何ら不思議では無い。


 でも、今まで声の主とやり取りをしていたとしても、アークシュリラは倒れることは無かった。

 しかし、今回は倒れたと云うことは、その声の主の云うことに抗っていたとしか思えない。

 ナゼ今回に限って戦ったのかは本人に聞かないと判らないけど、私が思うにアークシュリラはその指示が変だと感じたから刃向かったと思うけど……


 変だと感じたのは、神々に聞くことでは無いと思う。

 私もヴェルゼーアも図書館とかで一生懸命に調べていて、それが判ることはないと感じていた。

 多分、レファピテルやビブラエスも、薄々その様に思って居たはずだ。

 そもそも今まで調べて居たことの素を辿れば、全てが神々から聞いた内容で、私たちが旅をしていて見付けたモノではない。

 そうなると聞く相手だけど……そんなことで刃向かったりするのかなぁ。


 考えたく無いが、アークシュリラは自分を召喚の生贄にするつもりで、会ったことの無い神の召喚を私たちにさせたのかも知れない。

 だからカンニラムがアークシュリラを見て、態度が変わったのかなぁ。

 だとすると、天の声に刃向かっていたから体力が弱ったのではなくて、カンニラムが報酬として持っていったのかも知れない。

 それだと、カンニラムが消えると同時に倒れたことの説明が付くけど……

 アークシュリラが目覚めて、自分からこのことを話して来たら聞いてあげよう。

 もし、生贄が事実なら、私はこんな危険なことをしたアークシュリラに怒るかも知れないし、殴るかも知れない。

 だから、この件は私から聞くことはやめよう。


 でも、私にも天の声……両親だけど、懐かしい声が聞こえた。

「お父さん、お母さん。どうかアークシュリラを救って下さい」

 私は小さな声だが、強い思いを込めてそう言った。

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