180 カンニラムを召喚する
私はカンニラムをあまり知らないし、会ったことも無い。
なので、その神を召喚するタメにレファピテルと気持ちを一つにして、私たちは魔法陣の前に座って祈り出した。
「我ら、ゼファーブルと」
「レファピテルは河の神カンニラムに」
「「伏して願う――」」
しばらくすると魔法陣の中から水が溢れ流れて、一体のモノが現れた。
宿屋や今は奥の院の宿泊場所になっている建物でやらなくて、本当に良かったよ。
「妾を呼んだのはお前たちか?」
「そうです」「そうだよ」
「それで要件はなんだ」
「私たちが調べても判らないコトが有るので、判る範囲で教えて欲しいのだけど……」
「我々を崇拝してもいない、見も知らぬお主たちに妾がナゼ教えないとならん」
「私はアークシュリラ。そうだよ、私たちはカンニラムしか頼めるモノが居ないしね。それでも無理かなぁ」
カンニラムはアークシュリラを見て、目を少々見開いたのでナニやら感じた様子だ。
「判った。それでは何を聞きたい」
ナゼ、納得したかは判らないけど……今のウチに話を進めないとね。
「最初はヴェルゼーアたちだよ」
「そうか。私はヴェルゼーア、カンニラムに尋ねる。この地に閉じ込められていた神々のコトは知っているのか」
「知っている。闇に属するモノたちだな」
「ナゼ、この様なことに成った」
「それは神々のコトであって、人々には関係のないことだ」
「この地で栄えていた、ガシララ王朝の痕跡が全く無くなっている。だから関係ないと言われても、はいそうですかとはならない。教えてくれないか」
「そうか、お主らはガシララ王朝の……それを知ってどうする」
「私たちは闇の神々を懲らしめ様と考えていたが、どちらが正しいのかを知りたい。そして私たちのこれからの行動指針とするタメだ」
「そうか、この地ではその情報は残って居ないから、妾を呼んだのだな」
「そうだ」
「判ったが、正しい歴史と云うのは時に残酷だぞ。お主らがそれを受け止められるか調べる。しばし待て」
カンニラムがそう言うと、部屋の中が水で満たされていく。
祠から外には水は洩れていない感じだから、あくまでもこの空間サイズの水の塊ってコトなのだろう。
それに私たちにはベストが有るので、水の中でも苦しくもない。
もう一度カンニラムが念じると、多分、ベストの機能が停止したようで、一瞬苦しく成ったが今は元通りで息苦しさもない。
「判った。明後日にヴェルゼーアの処にナゼ戦いに成ったかや、ガシララ王朝に付いての書物を届ける。それで不足なら、もう一度妾を呼べ」
「それはどのくらいの量だ」
「どの程度の内容を知りたい」
「私たちが知っている、通常の歴史や伝説の知識程度でよい」
「なら少し厚い本で200冊くらいだ」
「それで、その本を見て内容を公開しても良いか。それによってカンニラム自信が、不利益になる様なことは無いのか」
「構わないが、公開すると嫌がる神々がいるコトも事実だ。それをすると、今後それらの相手をすることになるから、良く考えるのだぞ」
「判った」
「私はビブラエス。闇の神々などで私たちが知らない神々がいるが、それは私たちが無知だからか」
「それもあるが、一部には消された神々もいる」
「それを知る方法は有るのか、悪さをしたためにその地位で無くなったのなら仕方ないが、それ以外なら復権させてやりたい」
「判った。それも書籍にして送る。最初は妾が属する水の神々だ。各属性の神々については、その後に各々の属性からビブラエスの元に届く」
「判った」
そして二人はその後もいろいろと質問やそれを知ることでやってはいけないことなどを聞いた。
闇の神々と光や時の神々のこと、ガシララ王朝に付いてはひとまず終わった。
「次はゼファーブルとレファピテルの番だよ。どちらが先に質問をするの」
「ゼファーブルが先で良いです」
「ありがとう。私はゼファーブルだけど、魔法で過去や未来に行くことは出来ないの」
「行くことは出来ない」
「占星術師は確認出来るモノがいるのに無理なの」
「占星術師はそこに行っている訳ではない。星々の位置などで起こるコトを予測するだけだ」
「でも、その通りに成るモノもいるけど、それも予測なの」
「そうだ。中には神々に聞くモノもいるが、妾の予測も絶対とはいえない」
「神々も並行世界へいけないの」
「妾も行くことは出来ない。例えば一つの世界に、ゼファーブルは一人しか存在は出来ない。だから行くのは不可能だ」
「それだと、私が生きていない時代なら行けるってことにならない」
「言い方が悪かったな。全ての生き物が存在するコトが出来る時間は、決まっている。それ以外の世界では、存在はしないし出来ない」
「判ったよ。意識も不可能と言うことだね」
「そう言うことだ」
「じゃ錬金術とかで魔力をつぎ込めば、時間を早めることが出来るのはナゼ」
「時間か、それは早めては居ない。エネルギー量をいじっているだけだ」
「私はレファピテルと申します。錬金術と違い魔法では魔力をいくら込めても途中で効果が変わらないのですが、それはナゼですか」
「魔力を込めれば魔法の効果も変わる。それは込める量が少ないだけだ。単純に1の魔力と2の魔力では変わる。それがある程度に達すると今までより多くの魔力を必要となる。魔法により違うが、効果を今まで以上に上げるのに必要な魔力が、10だったり100だったりになる」
「そう云うことなのですか」
「そうだ」
それからも、私とレファピテルの質問もしばらく続いた。
「アークシュリラ、お主は聞くコトはナイのか」
「真っ赤なローブを着た魔法使いってナニモノなの」
「あいつか。あのモノはアシュミコルが送ったモノだ。火山の調査に行っていたが、戻って来た所をみると人々で対応出来ると云うことだな」
「神の使いだったの」
「そうだ」
私たちは、カンニラムから今時点で知りたいコトを聞き出して召喚を終えた。
カンニラムが消えると同時に、アークシュリラはそのまま倒れた。
「「「「アークシュリラ!」」」」