179 召喚して聞こう
私はアークシュリラやレファピテルと街の外れを散歩していた。
そしたら真っ赤なローブを着たモノが転移して消えたことで、この調査に時間を掛けていてはダメだと思った。
私は二人に錬金術の祖である、ノーティックを呼び出して聞くことを提案した。
「だったら水の神カンニラムか、海神ゾーグーでも良いけどね」
「水の神はネプラリオンで、カンニラムは河の神ですよ。アークシュリラ、どうしてその神々なのですか」
「もう、私たちでは時間をいくら掛けても、判らないからどっちでも無い神に聞いた方が早いよ」
「どっち?」
「あれっ? 闇の神々と光と時の神々のコトを聞くんでしょ」
「違いますよ。ゼファーブルが聞こうとしているのは、ナゼ魔法に制限が有るのに錬金術では魔力を掛ければ掛けるほど時間を短縮出来るのかですよ」
「そっちね。それなら、確かに聞くモノとしては適切だね。でも、それも水の神々でも良いと思うんだよ」
アークシュリラは、どうして水の神って云うのだろう。
当事者でないのなら土や風でも良いはずだ。それに火なら赤いローブのモノについても聞ける可能性もある。それを水と云うからには理由があるハズだ。
「なんで、そう思うの」
「水って基本的に争いを好まないと本で読んだから、闇の神々と光と時の神々の戦いに参加してないと思うんだよ。それに水は風と同じで永遠の象徴だから、並行世界にも少し関与していると私は思うんだよ」
なんか答えのピントがずれているなぁ。
アークシュリラ自身も自分が言ったのに、ナゼ水の神なのかを納得して居ない感じがする。
アークシュリラが転生した時に出会った神によって、そう云わされているのかもしれないね。
だったら私がこれ以上詮索をしないで、素直にアークシュリラの言ったことに従うのが一番良い結果を招くよね。
「私がノーティックを呼ぶのと違い、神々を召喚するならこんな場所でなく室内が良いよね。それに闇の神々と光と時の神々のコトを聞くなら、ヴェルゼーアとビブラエスが居ないとダメだよ」
「そうですね。二人が居ない処で聞くのは可哀想ですよ」
レファピテルもアークシュリラがいつもと違うと感じたのか、ナゼと言う疑問をこれ以上聞いては来なかった。
そしてレファピテルがヴェルゼーアとビブラエスに念話でこのコトを伝える。
二人から宿屋に戻ると言われたので、私たちも宿屋に戻るコトにした。
「本当に神に聞くのか」
「これほど、闇の神々と光と時の神々の戦いに付いての記述がないのだから、ドコの街でも無いでしょう。それに、ゼファーブルたちも知りたい情報が無い様です」
「そうか、私たちのタメって訳ではないのだな」
「うん。このペースでは、完成させるのに十年くらいの時間が必要だね」
「でも、私たちと違って、ゼファーブルたちは時間だけが問題なのか」
「私たちの方は、最悪の状態で事実は別にどうでも良いから、思考実験だけでナンとかなるよ」
「そうか、その十年は思考実験を繰り返して、正解に辿り着く時間か」
「そうだね。でもヴェルゼーアとビブラエスは事実を知りたいのだから、時間を掛けてもダメだよね。それにこの星にある全ての図書館に行っても、目的の本が有るとは限らないよ」
「確かにな。ビブラエス、ゼファーブルに頼んで良いか」
「仕方無いだろう。もう、あれから何か月経って居ると思う。私たちは長寿命の生き物でも不老不死でもないから、全ての図書館へ行くことは時間的に出来ない」
「そうですよ。私もそれしか方法はないと思います。それに昨日会ったコボルトを襲った魔物がナンであるかとか、真っ赤な魔法使いもナンか怪しい動きをしています。それにあすこで作業をしている奥の院のモノたちのコトもあります。私たちはこの件であまり長い時間を割くべきではありません」
「レファピテルの云う通りだな。奥の院のモノもこのままにして置くことは出来ないな。でも、呼ぶのはゼファーブルに頼むが、聞くのはヴェルゼーア、お前と私でやろう」
「そうだな。それも任せては私たちの存在意義はないな」
「私は良いけどアークシュリラはどう」
「そうなんだよ。真っ赤な魔法使いは私たちの少し前で転移したんだよ。転移事態は珍しく無いけど、私たちに見せ付ける様だったよ」
「そうか、この街に居るモノでその魔物を退治することが出来れば良いが、私たちが退治をする可能性もあるし、その真っ赤な魔法使いの存在も気になるな。私たちが幾つもの案件を抱えていると、いざという時に身動きが出来なくなるな」
「明日、宿屋の精算が済んだら、奥の院のモノたちの居る処へ戻って召喚をした方が良いよな」
「召喚をするって決めたのなら今直ぐにやった方が良いよ。でも、ゼファーブルとレファピテルたちの体調次第だけどね」
「今で良いよ」「私は平気ですよ」
「判った。ビブラエス、良いな」
「ヴェルゼーアこそ聞く内容は決めたのか」
「実は何度も召喚して聞いた方が早いと考えていたから、既に決めてある」
私たちは街から出て、エンギルたちが閉じ込められていた処に転移した。
そこでは奥の院のモノたちが、今も黙々と作業をしていた。
「あの建物の一室を借りるのか」
「ビブラエス、違うよ。ゼファーブル、石造りの家をあの建物の傍に作ってよ」
「だったら私とヴェルゼーアは責任者に断ってくるから、ゼファーブルとレファピテルはアークシュリラの云う建物を作ってくれ」
ビブラエスとヴェルゼーアは奥の院の責任者の処へ行った。
アークシュリラの云う通りに石造りの小屋を私とレファピテルはこしらえた。
アークシュリラにしては珍しく神殿の様な作りなので、小屋と云うよりか祠だね。
やっぱり、普段のアークシュリラじゃないね。
ビブラエスとヴェルゼーアは、奥の院の責任者と長話をしないで直ぐに戻って来た。
私とレファピテルは、その祠に作った部屋の中央に召喚の魔法陣を描く。
それで呼び出すのは水の神ネプラリオンや海神ゾーグーでもなくて、アークシュリラの云うカンニラムだ。