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178 真っ赤なローブを着たモノ

 朝になって、私は今日一日をどう過ごすかを考えている。

 昨夜聞いた話では、図書館に行っても私の知りたいコトは判らないだろうな。

 もう買い物も済んだし……


「ゼファーブル。今は街の外へ行かない」

「どうしたのアークシュリラ」

「特に理由は無いけど、ここにも知りたい情報は無かったからね。気分転換をしようと思っただけだよ」


 ヴェルゼーアとビブラエスの二人は、今日は街をぶらつくと言って既に出かけているので、私たちのほかに今はレファピテルしかいない。


「レファピテルも行く?」

 アークシュリラがレファピテルに声をかけた。

「私も良いのですか」

「ナニ、遠慮してるの? 良いに決まってるよ」

 そして三人で街の外を歩いている。


「昨日、二人が見たケガをしたコボルトは、あの山で襲われたって宿屋の人が言っていたね」

「それっておかしいよ。あんなに離れている場所なのに、街に着くまで誰も治癒を掛けないって考えられないよ」

「怪我が、たいしたことないと思ったのかなぁ」

「それはないですよ。あの怪我なら普通は掛けてやりますね。それに通行人も多いですから、尚更ですよ」

 話せない程の傷を負って、街まで来る意味はない。

 それに旅人はそれほど薄情ではないから、治癒魔法が無理なら薬での治療くらいはしてあげる。


「そっか。そのコボルトも神官みたいなモノも、訳ありナンだね」

「そうですね。ところでアークシュリラはもし転移で並行世界に行けたら、自分が居た世界に帰りたいのですか」

「地球かぁ。帰ってもここより面白くないと思うから、帰らないよ。レファピテルは他の星へ行ってみたいの」

「私は魔法のない世界が想像出来ないので、自分の力だけで生きて行く自信は無いですね。しかし、色々なコトを経験したいと云う感情もありますので、良く判りません」


「そうなんだね。でも、私とゼファーブルが考えているのは、並行世界に行く方法で無くて過去を知る方法だよ。たまに私もゼファーブルも、ごちゃごちゃになるけどね。だから、昨日の夜にレファピテルが話してくれた、占星術師(アストロジャー)のやっているコトに近いんだよ」

「そうだったのですね。それを云うために私を誘ったってコトはないですよね」

「ないよ、ただの気分転換だよ。で、レファピテルは、時の神ってナン名くらい知っているの」


「時の神々はあまり知りませんね。過去を管理するルリナンドと、未来を管理するベギュエスヴェくらいです」

「そう、他の神々と違い。その二人が時の神全てであるとされるよね。それに比べて他の属性の神々は沢山いるんだよ。どうしてそんな分け方をしているんだろうね。特に並行世界は闇の神々でなくって、時の神々が管理しても良いと思うんだよ」

「アークシュリラは、そこに解決の糸口が有ると言うの」

「そう。時の神で無いから、私たちでも突破出来ると思うんだよ。ゼファーブルは錬金術で色んな釜を使っている時に、手順以外でショートカットしたコトはない?」

「時間を短くする方法だよね。魔力を多くすれば短時間で出来るよ。でも、これでは見るコトは出来ないよ」


 確かに魔力を多く掛ければ、時間を短くするコトは出来る。逆に魔力を少なくすれば時間が長く掛かるコトになる。

 使った魔力×時間=完成品

 これは不変の法則だ。

 でも、これでは見に行くことは出来ない。


「レファピテルも魔力を多くすれば、効果が高く成るのは判るよね」

「えぇ、判ります。しかし、ある程度からは、いくら魔力を消費しても変わりませんよ」

「そこなんだよ。魔法は途中でリミターが有るのに、錬金術などはないよね」

「確かに。魔力を多く使えば、瞬時に作り上げるコトも出来るね」


 私たちはそんな話をしながら歩いていたら、前の方に真っ赤なローブを着たモノが歩いている。


「あのモノって、例のモノだよね」

「あの様な色のローブを来ているモノは、そんなに多くないですよね」

「それにしても、とても目立つ色だね」


 私たちがここに来た目的はないので、しばらくあのモノがドコに行くのかを追跡してみるコトにした。


 そうこうするうちに、真っ赤なローブを着たモノは消えた。


「消えましたね」

「そうだね。転移したのかなぁ」

「転移って、ここまで広まったんだね」

 私たち三人が見付けた転移も、既に幾つかの魔法の本に書かれている。

 でも、それはどんなに遠くても大丈夫と云うモノではなく、あくまでも近距離に限られたモノだよ。


「そうですね。私たち以外でしたら、ここからどんなに遠くても歩いて一日の距離ですね」

「転移でなく姿を消しただけかもね」

「なんで、姿を消したの」

「私たちが尾行していると気付いたのですかね」

「じゃ、曲がって違う方向に行こうよ。別にあのモノがナニをしていても構わないからね」


 私たちは不自然でない様に少しそのまま進んで、そして今まで進んで来た方向からそれて進むコトにした。

 方向を変えたので、道からそれているタメに周りには誰もいない。

「二人とも、あのモノは付いて来ていない?」

「少し待ってね」「判りました」

 レファピテルとアークシュリラは、目を瞑って念じた。


「いないですね」

「周囲には誰もいないよ」

「ありがとう。ここで錬金術師の祖であるノーティックを呼んで、さっきアークシュリラが言っていた疑問を聞くつもりだけど良いかなぁ」

 私はずっと調べても、手掛かりすら見付けられないとの思いはあった。

 でも、アークシュリラと思考実験をしているのは楽しかったし、昨日レファピテルとやった時は勉強になったのも事実だよ。

 その思考実験を繰り返していれば、いつかは正解に辿り着くとも思っていた。

 しかし、私たちの関係者以外の転移を目の当たりにして、そんな悠長なコトは云ってられないと強く感じた。

 なので、ヒントだけでも貰えればと思ったから言ったんだよ。

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