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174 塔が邪魔だね

 しばらく馬を走らせていると、前方に塔が見えてきた。

「あれは魔導師(ソーサラー)の塔ですね。どうしますか」

「ナニもしなければ、攻撃はしてこないよね」

「普通はして来ません」

「普通ってことは、普通じゃないコトも有るってこと」

「そうです」

「だったら、道ではないが、横に逸れるか。みんなもこっちを通っている様だしな」

 旅人たちも草原を進むのか、この付近から草原には草が生えていない所がみられる。


「安全のタメに、それもアリだな」

「あの塔って古いモノだよね」

 蔦などが低層階に伸びているし、塔自体の石も長い年月に亘る風雨の影響と思われる劣化がみられる。


「そうですね。でも、手入れをしていないだけと云うこともありますよ」

「そうか。ゼファーブルもワザと古い様に作るコトも有ったよね」

「近くに街があれば、そこでこの塔に住んでいるモノが危ないモノか平気か分かるかもね」


 私たちは直進して、その先にある街や村に行くわけではない。

 今は目的地すらないから、北へ行っても良いし、南へ進んでも構わない。

 草のハゲ具合からいって、旅人たちは南や北へ同じくらい行っている感じだ。


「じゃ、北と南でどっちに行く」

「ここはカヌーで行こうよ。そうすれば遠くまで見えるしね」

「そうだな。一度上空に上がって、周囲を確認しても良いな」

 私たちは馬からカヌーに乗り換えて上昇し、周りを見回した。

 北には草原が続いていて、その先には大きな湖が有った。

 ここからは判らないが、湖の傍には村も有りそうだ。

 反対に南の方は、少し遠くに街が有った。その先には結構な大きさの森があり、更にその向こうに高い一つの山がそびえている。

 ちなみに塔の先は、広大な湖でなく海だと思うモノが有った。


「これで、無理して塔の傍を通る意味は無くなったな」

「そうだね。湖は気になるけど、とりあえず街へ行こうよ」

「そうだな。湖の周りに村が有っても遠すぎるから、そこで塔の情報は手に入らないと思うぞ」

「街だと図書館もあるでしょう。デアニア王国のセファニラから随分と離れましたから、違った書籍も有るかも知れませんね」

「そうだな。交流のない国々で調べるのも悪くはないな」


 私たちはそのままカヌーで、見えた街を目指した。


「結構大きな街だね」

「中央付近に有るのが領主の館だな。城には見えないよな」

「そうだな。もう少し近くに行ったら下りて歩こうか」


 いつもの様に私たちは、街の傍でカヌーを下りて歩いて街に入った。

「人も多いな」

「それにコボルトなどもいるな」

 コボルトは頭が犬で体は人間の魔物、イヤ、デミヒューマンである。

 その頭部も一種類でなくて、ブルドックや柴犬など沢山の種類がいるよ。


「本当に珍しいですね」

 商売人のコボルトはたまに街道で見かけたり、すれ違ったりしていたけど、ここに居るコボルトは剣を帯びていたり、杖を持っている。

 冒険者と云うことだね。

 デミヒューマンでもエルフだと魔法や弓の扱いが上手いし、ドワーフなら力が有るので冒険者ギルドで見かけることが有った。しかし、コボルトは冒険者ギルドでは見かけたことがない。商業ギルドでなら、たまに居るのを見かけたことがあるけどね。


 先ず私たちは、門に居た守衛に冒険者ギルドの場所を聞いて、そこへ向かった。


「領主の館だと思ったが、ギルドだったとはな」

「商業と冒険者の両ギルドが一緒ってのも珍しいね」

 この2つのギルドは仲が悪い訳ではないが、ほとんどの所では別々の建物になっている。

 冒険者ギルドで珍しい魔物を買い取れば、商業ギルドを通して商人に売られる。また、商人から盗賊や魔物の出没情報があれば、冒険者ギルドに討伐の依頼がでる。

 客層が違うから別々の建物に成っているだけで、情報などはとてもスムーズに連携されている。


「そうだな。本来は別々の建物にある必要性はないが、大きな街だと出入りの人々が多くなるからな」

「そうだね。モノを作って売りに来たのに、討伐隊が帰って来たのとかち合ったら私は嫌だね」


 私たちはそんなコトを云いながら、冒険者ギルド側の入り口から中に入った。


「中は普通だな」

「じゃ、地図と依頼の確認だね」

「のどかだから、とんでもない魔物はいないだろう」

 私たちは掲示されている依頼内容を確認していく。

 天災級の魔物の討伐なら、掲示を見なくても判る。


「おっゴーレム退治があるな」

「この場所ってあの塔ですね」

「ゴーレムだけ退治するの」

「既に魔導師(ソーサラー)は居ないのかもな」

「レファピテル。そんなに長い間ゴーレムだけで居られるものなの」

「ゼファーブル。エネルギーを補充することが出来れば、ゴーレムは永遠に動かすことが出来ますよ」

「だったら、この依頼ってエネルギー源を壊せば良いの」

「そうすればゴーレムはいつか停止します」


 私たちは周囲の冒険者を見回してから、ビブラエスが言った。

「私たちがやらなくても良さそうだな」

「あぁ、ベテランも多そうだし平気だろう。それでは受付に行って宿屋を聞くか」

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