172 泉の改良をする
私は泉の改良を行ってから、メコリオスに言った。
「メコリオス、判った?」
「ナンで二度も浄化を掛けた」
「クヴェックズルーバーが、少しでも残っていると大変でしょ」
「判った」
「それじゃ、この世界にメコリオスが作ったトラップを、全てこの様にしてよ」
人々のタメと綺麗ゴトを言っているが、これはもう数年のウチに必ず死ぬトラップ以外のナニモノでもない。
「ワシの魔力では出来ないから、その作業はお主に任せる」
「任せるじゃないよ。私はそんなヒマじゃないんだよ。自分で作ったんだから最後まで責任を持ったら」
「昔なら自分でやったかも知れない。しかし、今の状態では不可能だ」
「レファピテル。肉体が欲しいって言っているよ」
「ホムンクルスは、ゼファーブルの範疇でしょ」
「ホムンクルスじゃなくて、アンデッドでもゴーレムでも良いからさぁ。チョチョイと作ってよ」
「嫌ですよ。同じ錬金術師の仲間ではないのですか」
メコリオスは肉体などいらんとか文句を言っているが、本人にやらしたい。
レファピテルが作ってくれないなら、私が作るしかないけど……ホムンクルスにメコリオスの魂を入れたら、勝手なことをやり出す危険があるしなぁ。
「メコリオス、全て同じナンでしょ」
「そうだ」
「じゃ、さぁレファピテルなら、このくらいなら出来るでしょ」
「出来ますよ。しかし私一人では、やりには行きませんよ」
別々に分かれてやってしまおうと思ったが、残念だ。
「どうせ水を必要としている人は、一度は死んだのだから他の処はそのままで良いかなぁ」
みんなにも問いかけるつもりで、私は言った。
「「「ゼファーブル」」」
案の定、今は外野と成っているヴェルゼーアを始め、アークシュリラやビブラエスまでもが一言ありそうだ。
その声を聞いてレファピテルがメコリオスに聞いた。
「それでは、この他に同じモノは幾つ作ったのですか」
「各大陸に2つだ。場所はこのリストの処じゃ」
レファピテルが聞いたのに、地名の書かれた紙がナゼか私の手元に届いた。
私は一瞥して、こんな文字だらけのモノを読むのは面倒だと思い、レファピテルにそれを渡した。
「レファピテル、これだって」
レファピテルは、それを受け取って書かれている文字を見た。
そして、ヴェルゼーアの方を見てから言った。
「ヴェルゼーア。これですって」
「オイ! ナンで、私に渡すんだ――」
外野だったヴェルゼーアが、突然振られてので文句を云っているね。
「レファピテル。どうしても私たちが後はやるみたいだから、メコリオスは消そうか」
「そうですが、その前にヴェルゼーアが怒ってますよ」
「私たちの隊長だから、レファピテルが渡しただけだよ。イヤなら、やらないって言えば良いだけだよ。そもそも私たち二人だけで、みんなを巻き込むことをやるともやらないとも決められないよ」
「それもそうだな。ゼファーブルとレファピテルの言ってるコトが正しい。それではヴェルゼーア、どうする」
「最優先とはいかないが、近くに行ったらやるか」
「そうだね。違う大陸にも行くかも知れないよね」
「ところで扉の方は、どういう仕組みナンだ」
「それは林の周囲の地点1,000箇所と泉に行く500コを順番に廻している」
メコリオスはもう自分でやりに行く気持ちが無いようで、全てを答えるつもりだね。
「蝶番以外には魔法陣とかは無いの」
「魔法陣ではない。蝶番自体が動くコトで、転移の魔法と同じ状況を作る」
昔の技術で蝶番自体にそんなコトをさせるって、流石は物語に成っている伝説の人物だなぁ。
だったらクヴェックズルーバーの濃度も、調整することが出来たと思う。
前言撤回だね。
私の中では、やっぱりメコリオスは残念な人だ。
扉は必ずどれかに当たりがくるように、レファピテルが魔法陣を改良して扉に設置し直した。
それによって蝶番の仕組みは、必要が無くなった。イヤあるとマズいので、私が杖でその仕組み自体を消した。
でも停止のボタンは残して、レファピテルが扉に設置した魔法陣が全て当たりに成るようにもしたよ。
メコリオスは消えもせずに、大人しく私とレファピテルの作業を見ていた。
今も私たちの傍に浮かんでいる。
「ゼファーブル。良く水の中にあるモノが判りましたね」
「錬金術で心臓を動かすのは沢山あるけど、大量に入れた場合に融けずに光るのは一つしかないよ」
「じゃ、ナンで知らないって言ったの」
「あれを悪いことをしていない生き物に与えるなんて、そんな錬金の技を私は知らないよ」
クヴェックズルーバーは罪を犯したモノを一時的に生き返らせるタメに開発された。死刑が確実なモノにも与えるので、だから非常に安価で入手が出来る。
残念ながら、それを蘇生……イヤ、悪用するモノもいるよ。
「そう言うことナンだね。本当に知らないのかと思ったよ」
「それは良いとして、このリストにあるだけで9つも有るぞ。その上、聞いたコトのない国ばかりだから、どの処がここから近いとも判らんな」
「ヴェルゼーア。お主自身が最優先ではないと言ったではないか。飲んだモノには悪いが、私たちでは直ぐにやりにいくコトは出来ないぞ」
「そうだがクヴェックズルーバーを与えられたモノが、最後はどうなるか知らない訳ではないよな。それにあの濃度だぞ」
「知っているが、無理なモノは無理だ」
「私たちではどうしようも出来ないコトだから、助けて貰えば」
「誰が、今の私たちを助けられるんだ」
「死ぬんだから闇の神で良いんだよね。あれっ、もう死んでいるのを生き返らせるのか、だとすると……」
「アークシュリラ。悩まんで良いから、話を続けてくれ」
「だから、死の神であるヴェルデムベゼラに、そのリストにある処に連れて行って貰えば良いんだよ。どうせメコリオスを引き渡すときに呼ぶんでしょ」
「アークシュリラ。神を便利屋と思っているのか」
「ビブラエスはこう言うけど、レファピテル、それは無理なことかなぁ」
「断られたら、命のコトなのでエリロヘルスに頼みましょう。それもダメなら……」
「判ったよ。お前らもゼファーブルの神を恐れない、そう言う点は真似る必要はないぞ」
「ビブラエス。私だって神は崇め奉っているよ」
「それじゃ、どの神を崇め奉っているんだ。言ってみろ」
「え~と……」
「直ぐに出て来ませんね」
「お前らしいな。で、レファピテル、頼む」
レファピテルが私を見ている。
「今は、こいつのコトは無視しろ」
「ゼファーブルが居た方が、神々もしぶしぶだけど話がまとまると思うよ」
「それもあるな。ヴェルゼーア、神々が断ってレファピテルだけでは納得させられないなら、ゼファーブルの力技が必要だな」
「みんなは私をナンだと思ってるの」
「最終兵器だね」
レファピテルは納得はしていない様子だが、ヴェルデムベゼラを呼ぶことにした。
当然のことながら、私も最終兵器には納得はしていない。