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169 蘇生の泉の捜索をする

 私たちは林の中に入って、目的の木を探している。

 店主は直ぐに判ると言っていたから、それほど時間も掛からないで見付けられると思う。


「手入れはしていないと言っていたけど、違うかもね」

「しかし、切り株とかは無いから、木は切っていないようだな」

「そうだな。こんなに太い木を、根ごと抜くことは出来ないよな」


 少し行くととても太い木が見える。


「あれだね。あの木が死者を蘇らせる泉がある所の入り口って」

「でも、あの店主は迷信とも言っていたぞ」

「魔法で死者を蘇生させるモノはあります。ですから自然界に有っても不思議ではありません」

「だったら村外れにあるお墓はナンであるの? 死んだらこの泉の水を飲ませれば良いんでしょ」

「アークシュリラ。魔法での蘇生は何回も駆けているウチに、思考や精神を破壊します。ですから、多くても3回しかかけませんよ」

「例えば、レファピテルが3回掛けて、ゼファーブルにも3回ってこと」

「違います。一人のモノに対しては、誰であっても3回しか掛けられません」

「それってナン回目って判るの」

「普通は掛ける前に確認しますし、ほとんどの術者なら判りますね」


 私たちは幹の太い木に到着した。

 その木には、大人が一人ほど幹の中に入れるくらいの大きな穴が開いている。

 その穴を覗き込んで、アークシュリラが言った。

「穴は緩やかに下に続いているね」

「それじゃ、入るとするか」


 ナゼ私たちがこんなことをやっているかは、闇の神々についてセファニラの図書館で調べたが、そこに有った書物では神々の特徴とか効果など一般的なことの記述しかなかったからだよ。

 ビブラエスやヴェルゼーアたちが知りたい、闇の神々と光や時の神が行ったコトについては全く記述がなかった。

 そこで人々の記憶と云うか、村や集落で長老から聞こうとなったんだよ。だけどその聞き込みは全く上手く行っていない。

 なので、どんな些細な情報でも聞けたら、行くことにしたんだよ。


 それに生き物の生き死って、闇と光の神々に関することだからね。

 あとは、時に関することも行くよ。


「ここって入り口の所では、一人ずつしか通れなかったけど、中は案外広いね」

「そうだな。二人が並んで通れるからな」

 私たちは先頭がヴェルゼーアとビブラエス、真ん中にレファピテルを挟んで最後が私とアークシュリラの順に進んでいるよ。


「ドコまで行くのでしょうか」

「話では、ちょっと歩くって言っていたな」

「そのちょっとってどのくらいなの」

 随分と長い間、私たちは下る通路を歩いている様に思える。


「やっと底に着いたぞ」

 そこは5メートル四方の空間で、前には3つの扉が有った。


「本当に有ったよ。このうち一つが泉につながっていて、他のは林の周囲に転移するんだよね」

「その周囲も、場所は毎回違うと言ってたよ」

「どういう仕組みに成っているのでしょうか?」

「確かに転移の魔法陣で毎回違う所へ飛ばすのは、記述を変えられないから不可能だよね。そうなると魔法だけど……」

「魔法でも、その都度掛けるのなら可能ですが、駆けて置いたら転移先はランダムに出来ませんよ」


「お前たち、転移の解析をするのでなく、泉に行くのだろう」

「そうだった。ごめん」「そうでしたね」


「それじゃ、どれだと思う」

 ハズレて転移させられても林の周囲なので、それほど遠くへ飛ばされる訳では無い。

 しかし、いくら近距離といえど、戻って来て再び挑戦するのは面倒だ。出来ることなら一度で正解を引きたい。


 どれかなぁ。3枚の扉はどれも同じ様に見える。

 当たりは毎回違うと言うんだよね。

 ドコかが変わらないと、独りでにそう言う変化は起こらないハズだけどなぁ。

 見れば見るほど同じに見えてくる。


 みんなも真剣に悩んでいる。


「判らん。音がする訳でも、温度が変わる訳でもない。全く同じだぞ」

「だったら感で行くのか、ヴェルゼーア」

「ビブラエス。お主は、判ったのか」

「多分だがな」

「なら教えてくれ」

「私たちが来たときと今では、この蝶番の色が少し変わった」

「そうなのか。私には同じに思えるが……」

「しかし、変わったのが当たりに成ったのか、ハズレに成ったのかは判らん。それに遠くからではその変化は判らんから、3つを同時に見れないしな」


 もし、3つを同時に見れても、正解だったモノがハズレになりハズレが正解に変わるなら、2つだけが変わる。

 しかし、その2つのうち、どっちが当たりかは分からない。

 3つのうちで一つだけ色が違うのならば、今でも見れば色の違うのが正解だと分かる。

 ビブラエスは3つを見比べて、全て違っていたから断言が出来なかったのかなぁ。


「それぞれを別のモノが見て色が変わったのが分かっても、それが当たりかはビブラエスの言う通り判らんよな」

「これで、この扉の仕組みが魔法陣ではないと、判っただけですね。そうですよね。ゼファーブル」

「そう、これは錬金術で、魔法ではないと思うよ」

「だったらゼファーブルもあの蝶番を作れるのか」

「一定の時間が過ぎたら、同じ効果で内容だけを変えるなら出来るよ。今回は効果が転移で、内容がこの林の周囲だね。でも、今の私じゃ同じ処に行かす……」

 と云って私はふと思った。

 内容は変えることが出来るんだから、地点を無数に増やせば面倒だが出来るよね。

 私は続けていった。

「イヤ、林の周囲全ての地点を指定すれば可能だね」


「それって、今時点で指定されていない場所が有るってこと」

「そうだよ。ハズレは2つだけど、林の周囲の地点を仮に百カ所だとして、98地点の情報は使ってないよ」

「無駄な作業だな」

「イツも同じならもっと前に解読されていたでしょうし、神秘性もありませんよ」

「そうかも知れないな」


「でも、この泉って神々によって作られたと思うよ。扉は錬金術師(アルケミスト)が作ったとしてもね」

「じゃ、ナンで下に来るだけで泉に到着させない。泉の水が必要なモノもいるだろう」

「ナニかの意図があると感じるな」

「それはヴェルゼーアが言った通り必要だからですよ。もし、水を大量に汲んで売り出したらどうでしょうか」

「あっ。泉の水が無くなるかも知れないよね」

「そうです。この泉の水はタダですから、売り手の人々も水を大切に扱わないかも知れません」

「そうだな。街へ売りに行って、売れ残ったら捨てるかもな」

「扉を付けた訳はきっとそれだな。でも、どれが正解なんだ」

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