168 のんびり
食事も済んで片付けも終わったので、これから寝るまでの間は団欒の時間となる。
「ねぇ、ビブラエス。ここら辺まで来たことはあるの」
「こんなに遠くはないな。私は行っても連辺りまでだな」
「そうなんだね。でもここら辺って歴史のある国が多いよね」
「ずっと続いている国は確かに多いな。それだけ上に立つモノが立派なのだろう」
周囲が納得するかは別として、この世界ではある程度の広さの土地があって建国すると宣言さえ行えば国を名乗れる。
その際に国民になる生き物の有無は関係無い。
それは、人……イヤ生き物がいなくても、国民はアンデッドでも良いし、ゴーレムなどの物体でも良い。ナンなら霊体でも良いからね。
と言っても、仲間同士や一人ぼっちでは、領土がいくら広くても周囲の国々が認めてくれる訳はないけどね。
その上、とんでもないことをしていれば、意思がある民衆はいなくなるか、反乱をしだすよ。
反乱が頻繁に起こると、人や物資の面で周りの国々にも影響が出てくる。
それで文句を言われるだけなら良いが、大体が攻め込まれて無くなるんだよ。
「そうかもね。でビブラエスたちも調べ物は順調なの」
「ハルメニア王国では、名前すら知らない神々もいることが判ったよ。この世の中には、あらゆるモノや事象に神がいる様だ」
「それをまとめるの」
「なんせ神々が多過ぎて、詳細とは云わないまでも概要を書いた本でも無理だな。でも、少しの神々ならハルメニア王国に紹介しても良さそうなのはいるな」
「そうなんだね。それをやって、教会とかは大丈夫なの」
「そこは判らん。宗教ってのは本来、人々の安寧のためにあるハズだ。でも、中には教団や組織の上のモノが立派になる手段となっているからな」
全ての宗教がそうだとは、ビブラエスも言ってはいない。私もたまに、変だと感じる教団に出会うことがある。
組織がダメに成っていても、中にいるモノからするとダメとは感じていないから、自分たちで改革をしようとは思っていない。新しく入ったモノが上に立つモノに問題提起をしても、力関係で無視されることが多い。
それは国やパーティーなど、どんな組織でも起こり得ることだけどね。
「そろそろ、夜も更けてきたから、寝るとしよう」
「そうだね」
翌日も私たちは、馬でのんびりと草原の中を進んでいた。
村があれば寄ってナニを売っているのかとか、村人はどの神を信仰しているかを確認している。
街や都市はどうしても他からの流入者が多いので、そこで元々崇拝されていた神と異なることがある。しかし、村だと流入するモノが少ないから、その場所に昔からいる神々を知ることが出来る。
そこで闇の神々を崇拝している村があれば、情報といかないまでもナニかの手がかりを貰えるかも知れないよね。
でも、部外者にもオープンな村と閉鎖的な村が有るから、村や集落に入る前の情報収集はとても大事になってくるよ。
「消耗品が買えて良かったな」
「塩が無くなりそうだったから、助かったよ」
「他のモノは無くても平気ですが、塩だけは今後は充分に確保して置きましょう」
「ゼファーブルは、塩を本当に作れないのか」
「塩だけは作っちゃダメと教わったから、試したことはないよ」
みんなは魔法で調味料が不足気味だと、私が違うものからそれを作っていることは知っているから、錬金術でどうにか出来ないか聞きたい様だ。
多分だけど塩は作れると思うが、村や街で買えるからわざわざ禁止されているモノを作る事もなかった。
それに、ウワサでも誰かが作ったと聞いた事もない。
万が一にでも神々が、誰かが作らないかを確認していて、作ってペナルティーが有ったら悔やんでも悔やみきれないよね。
「そうか、魔法と同じ様なんだな」
「魔法で出来ることは錬金術で出来るし、魔法で出来ないことは錬金術でも出来ないよ。その逆も同じだよ」
「神々の意思かナニかあるのか」
「それについては判らないよ。レファピテルもそうだよね」
「そうですね。国によって禁忌に指定されているモノ以外は、理由が判りませんね」
しばらく進とあまり大きくない林が見えてきた。
「目的の場所は、あの林の中にある、とても太い木に開いた穴らしいですね」
「村人から聞けたから良かったが、知らなければ、どこにでもある林なんだから普通は素通りするぞ」
塩を買った店主が話し好きだったので、店主の話をみんなで聞いてあげた。
それは村の伝説から、今朝ニワトリが産んだ卵の数まで多岐に及んだよ。
そして、私たちもファリチスなどの話を聞かせた。
店主は旅人が来ることの少ない村なので、イロイロと質問もして来た。
ビブラエスとアークシュリラは、私たちの所の料理としてカレーの作り方を教えて、実際に作って食べてもらったよ。
ピザとかはチーズが村には無いので、私たちがいないと作れないからやめた。
カレーにしたのは、ジャガイモや人参とかの野菜は村でも有ったからね。
それとカレー粉の原料になる草花が、村の近くで自生していることを確認していたのが大きいよ。
粉は渡したよ。
これから何度か作っているウチにそれを使い切ったとして、レシピも渡したから自分たちで粉も作れるよね。
そして林の傍に着いた私たちは、馬をアイテム袋にしまって林の中に入っていった。
林はそれほど木々が密集していないから、太陽の光が地面まで届いている。
なので林に良くある羊歯よりも、普通に草原とかに咲いている草花の方が多い。