155 エリロヘルスとの対話
召喚の魔法陣につながっている魔力を辿って、逆にリファヴェーラの元へ行くために私たちはその魔法陣の中に入った。
その中は、周囲が真っ暗で道すら無いが、目の前に出入り口らしき明かりが見える。
「直ぐに着くと思ったけど、遠いね」
「あの明るい所が出口だと思うけど、全く近付いていないね」
ずっと歩いているが、全然出口は近付いて来ない。
足は動かしているのだが、同じ処でずっと足踏みをしている様だ。
出入り口の明かりは全く近付かない。
本当に私たちが進んでいるのって聞きたくもなる。
それに全く疲れないし、お腹も減っては来ない。
「アークシュリラ。カヌーって、ここでは使えないかなぁ」
「ゼファーブル、そうだよね。カヌーで進む方が、私たちが歩くよりナン倍も速いよね」
カヌーは無事に浮くことが出来たので、それに乗って私たちは出口を目指した。
あと少しで出口に着くと思ったら、リファヴェーラがもう一人のモノとやって来る。
「お前らはここで何をしている」
「だって、魔法陣の前でずっと待っていたんだけど、リファヴェーラから返事が無いから来たんだよ」
「リファヴェーラ、このモノたちは人では無いのか」
「はい、人です。それに死んでもいません」
「そのようなことはあり得ない。生きている者の速度で進むと、ここまで何年掛かると思っている」
「でも、事実です。エリロヘルス様」
「そうか。ここに長く居ることは我々でも出来ないと云うのに……」
「あの~。二人で話中に悪いんだけど……リファヴェーラ、話はどう成ったの?」
「エリロヘルス様がお前たちを直接見て、決めて頂くことになった」
「エリロヘルス?」
「こちらにおられる方だ」
「で、エリロヘルス。実際に見て、私たちは合格なの? それとも不合格なの?」
「ここまで来られる力を持っているのなら、問題はない。お主らの知りたいことを話しても良い。それでは、私の宮殿に行くぞ」
「私たちだけがエリロヘルスの話を聞いて、それをヴェルゼーアたちに報告するのは二度手間ナンだよね。よければヴェルゼーアたちも連れて来られない? イヤ、連れて来てよ」
「ヴェルゼーアたちか、あのモノたちだと私の宮殿なら平気かも知れぬな」
「リファヴェーラ、連れて参れ! 我々は宮殿の応接に居る」
リファヴェーラはお辞儀をして消えた。
私たちもエリロヘルスの魔法で、とても眩しい所へ連れて来られた。
「ゼファーブル、ここって光の神の宮殿なの」
「知らないよ。エリロヘルスがそう言ってたから、そうじゃないの」
それにしても、ここは眩しすぎる。
光の神だから仕方ないとは云え、これでは私たちの目がやられてしまう。
「あの~、ここって眩し過ぎるから別の所でやるか、光を落とすことは出来ないの」
「そうか。ならば、少し落とすとする」
さっきよりかは幾分良いが、まだ晴天の直射日光に照らされている以上の明るさだ。
「ゼファーブル、ナニを遠慮しているの? エリロヘルス、この部屋だけでも曇天くらいの明るさにしてよ。私たちの目がおかしく成っちゃうからね」
「曇天か、随分と暗いのが好きなのだな」
「他の神々はここに来ないの? 来た時もこの明るさなの?」
「神々は他の者の宮殿には行かぬ」
「それじゃ、話したいことが有ったら、どうするの」
「直接、語り掛ける」
「それって用事が有ったり、寝ていたりしたら迷惑だよね」
「その場合はつながらないから、平気だ」
「そうなの」
そんなやり取りをして居ると、リファヴェーラがヴェルゼーアたちを連れてやって来た。
リファヴェーラはエリロヘルスと話している。
「ゼファーブル、これはどう言うことだ」
ヴェルゼーアが言って来た。
「エリロヘルスがベギャブルのことをこれから話してくれる様だから、ヴェルゼーアたちも直接聞いた方が良いと思ったんで連れて来てと頼んだんだよ」
ヴェルゼーアを始め、レファピテルとビブラエスは頭を抱え込んだ。
「良く直ぐに来られたよね。ビブラエスはファリチスに居たの?」
「私はハルメニアに居たら、ヴェルゼーアとレファピテルを連れたあのモノが突然現れたのだ。訳を聞いて、来るしか無くなった」
「そうだったの、ごめんね」
「良いよ。私たちが一生懸命調べても情報が限られているからな」
二つのグループの話が終わり、エリロヘルスが一通りベギャブルのことを説明した。
「それじゃ。前に封印をしてから500年くらいの年月が経つと言うのだな。今回、我々がまた封印しても500年後には同じことになるな」
「私たちでは、ベギャブルを退治するのは無理かなぁ」
ヴェルゼーアがエリロヘルスの話をまとめて、アークシュリラが尋ねた。
「少しまて」
エリロヘルスは手を私たちにかざして、何やら暖かい光を当てている。
私たち全員に、その光を当て終わると続けて言った。
「個々の戦闘力は人としては素晴らしいが、今の状態だとベギャブルたちと一度に戦っても勝ち目はない。先ずは配下のモノを一体ずつ葬って、ベギャブルに相対せば万に一つでも勝てる可能性はある」
「それって遠回しに、どうやっても私たちでは勝てないって言っているの」
「違う、お前たちは普通の人間なんだぞ。神々の世界から追放されたとは云えベギャブルは神……それを相手に勝てる可能性は、本来なら有るはずは無い。それが僅かでも有るのだぞ」
「でも、確実に勝てる訳では無くても、互角でも無いんだよね。ヴェルゼーアどうする」
アークシュリラが私で無くて、ヴェルゼーアに話を振った。
戦闘のことだからしょうがない。
「そうだな、エリロヘルス。お主の所持しているモノなどで、私たちをパワーアップすることは出来ないのか? 逆にベギャブルの戦闘力を下げるモノでも良いが」
「無くはない。今回のベギャブルと戦うのに必要なのは、魔力を封じるブレスレットと光の神の衣か……リファヴェーラ、それらを用意しろ」
エリロヘルスは僅かな時間で思案した様だ。
「それは貸してくれるのか」
この状態で、見せるだけというのは考えられない。
ヴェルゼーアはくれると思っての発言なのかなぁ。
「貸すのは構わない。でも、衣はくれてやる」
ブレスレットはくれないみたいだ。
「エリロヘルス。これで万に一つが、少しは上がるの」
「アークシュリラと言ったな。ベギャブルの魔力を封じて光の衣が有れば互角より少し劣るぐらいにはなる」
「ヴェルゼーア。互角だって」
「じゃ、ベギャブルの臣下を一体ずつ退治をするか。どうせベギャブルや臣下の居所は判らないのだろうからな」
「そうですね。でも、どうやって調べましょうか」
旅をしていて、訪ねた所で悪魔のウワサを聞く確率は低い。
なんせ世界は広い。
違った大陸までウワサになるのは、ベギャブルによって数カ国が滅ぼされた後で無いとあり得ない。
「私たちには、レファピテルの捜索能力もあるから、一応、封印されていた大陸でウワサを聞くしか有るまいな。アイツらも封印から抜け出したばかりで、それ程遠くに行くとは思えん」
「ビブラエス、そうだな。問題が有れば、エリロヘルスがきっと支援してくれるだろうからな」
ヴェルゼーアはそう言って、エリロヘルスを見た。
エリロヘルスは頷いた。