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149 ロベルトの召喚

今までは一人称一元視点で書いて来ましたが、この話だけは三人称神視点(複数視点かな?)で書いています。

書いている私も違和感がありますから、急に変わって読者の皆さんは違和感だらけかも知れませんね。

それにいつは2,500文字前後で一話としていますが、今回は4,000文字を越えて少し長いです。

途中で挫折するかも知れませんが、出来ましたらついてきて下さい。


 話はサバラン教の神官たちが、ドワーフの村であるエマルダから追放になったころに遡る。


 サバラン教の神官たちは、死者をアンデッドとして利用したことでエマルダの村近くにあった教会で暮らすことを禁じられた。

 そう云っても、裁判が終わったら直ぐに有無を言わさずに追い出された訳ではない。

 二週間だが、教会内に有るサバラン教の品々や私物をまとめる時間は許された。


 この時間を与えたのは、サバラン教の神官たちは温情と受け取った者も居た。

 しかし、後でサバラン教から文句が来ても良いようにとの配慮と、教会に残るゴミの量を減らしたいと云うエマルダ側の実情が大きい。


「ロベルト殿、これからどうしますか」

 裁判所から教会へ戻って、直ぐにもう一人の司教(プリースト)であるベネディクトがロベルトに聞いてきた。


 布教の拠点である教会を失ったのだから、普通ならもうロベルトたちが教団内で出世する望みは皆無である。

 そればかりか、下手をすると降格になる場合もある。

 今の地位のままならば、残りの人生を冷や飯食いになるが教団内で過ごしても良い。

 しかし、何階級も落とされて暮らすのは、さすがに年齢的に御免蒙けたい。

 わずかな時間に、ロベルトは色々と考えてからベネディクトに言った。


「私は教団を去ることにするよ。お前は私の命令でやっていたことにして国へ戻れ」

「それでは、全てロベルト殿の所為になりはしませんか」

「成るだろうな。しかし、それが一番良い方法だ」


 神官たちをベネディクトに預けることにした方が良いだろう。

 ベネディクトは、まだ若いがロベルトと同格の司教(プリースト)である。

 この者は口が上手いから、自分たちの言いつけを従順に守っていただけの下級神官たちを、きっと救ってくれるに違いないとロベルトは考えた。


 数日後にロベルトと神官たちは、荷物の整理が済んだこともあり、最後の食事会をして別れることにした。

 食事会と言っても豪華なモノではなく、ライ麦で作った固いパンとヤギの乳で野菜を煮込んだスープの軽い食事だ。

 中には涙を流して居るモノもいる。

 神官たちは、ロベルトが自分の仕業にして教団を去ることを知っている。

 ロベルトは、自分が国に戻らずにみんなと別れてどうするのかを知りたそうな雰囲気を感じたので、みんなに向かって言った。

「みんな私はほとぼりが冷めるまで、大陸の方にでも行くよ。でも、心配しないでくれ」


 食事会が済んで、ロベルトは出発した。

 馬車は司教(プリースト)なので専用のものがあるが、大陸までの道のりは長くて遠い。

 本来は御者が運転をしてくれるが、今回は自分で運転をしている。

 ベネディクトは御者がいないと何かと大変と言ってくれたが、ロベルトはその申し入れを断った。

 ロベルトと一緒に来れば、平穏無事に過ごすことは出来ない。

 その上、あの中から一人を選ぶことは、ロベルトには出来なかった。


 一人なのに騎乗でなく馬車にしたのは、ロベルトが長い期間に亘って調べ上げた魔法陣や魔法に関する覚え書きなどが、キャビンに乗っているからだ。


 実際に死者をアンデッドとして利用していたのは、ベネディクトの方だった。

 みんなで一度国へ戻って、ことの顛末を全てで無くとも少しは知っている神官たちが真実を語っても、ロベルトの方があの教会内では一番の年長者だから、それを止めさせることをしなかった罪を受けるだろう。

 その上、ベネディクトの方が教団幹部の覚えが良いので、教団内での審問で正しい裁定が下るとは思えない。

 自分一人の責任となる恐れがある。


 それと、あの教会にベネディクトが来た際に聞いたウワサでは、彼は随分とあくどいこともやっているようだ。

 なのでベネディクトが教団にどの様に報告をするのかが判らないことには、ゆっくりと大陸への旅をしてはいられない。

 この近辺に居たら、国から追っ手が差し向けられることも考えられる。

 ロベルトは大陸への道のりを急いだ。


 急いで出発した訳ではないが、ベネディクトたちと教会にあった金銭を分けたのでロベルトの手持ちは少ない。

 以前の様に、気軽に宿屋に泊まることも出来ない。

 野宿をするのは本当に久しぶりだ。

 ロベルトは少しなら魔法を使えるが、ウルフくらいに成ると動きが速いので狙いが定まらない。

 結構な日数が掛かって、ロベルトは満身創痍になりながらようやく大陸へやって来た。


 馬車を運転しているロベルトは、神官たちと別れた時の優しいロベルトではもう無かった。

 それはロベルト自身が長旅の疲れ――追っ手がイツ来るかもと云う恐怖心とベネディクトに対する複雑な感情などが絡み合い、もう正常に物事を判断することが出来なくなっていた。


 大陸に入って、直ぐにロベルトの目の前には森が有った。


 ロベルトは、この森ならば人に見つかることもなく、ゆっくりと魔物を召喚出来ると考えた。

 そうすれば、教会へ返り咲くことも……そんなチンケなモノでなく、この世界全てを支配下に治める力を手に入れればいい。


 森と街道がぶつかる分かり易い所に馬車を魔法陣で隠して、森の奥にとロベルトは進んだ。

 思ったより大きな森だったんだな。

 しかし、生息している魔物はそれほど強くはない。

 これなら自分一人が隠れ住むには最適だが、これでは召喚の供物が足りない。

 手頃な処で、ミミズを供物として召喚出来るモノから順次召喚をしていく。

 直ぐに、召喚したモノを生贄にし、更に強い魔物を召喚していく。


 まだ強さで云ったら、ベテランで無くても冒険者なら意図も簡単に退治されてしまうレベルだろう。

 これでは、全然ダメだ。

 ドラゴンとは云わないまでも、天災級の魔物で無ければ世界征服など出来ない。

 出来れば魔導師が生きたままアンデッドとなったベスミラーチェか、悪魔の王であるルシフェルに劣るモノの悪魔の国で大公爵になっているアスタロトぐらいの実力は欲しい。

 それを使役出来れば……


 ロベルトは一人しかいない森林の中で、大きな声で笑った。


 召喚魔法をずっと使い続けているので、随分と魔力の消費が激しい。

 あと数ヶ月、この作業を繰り返せば……


 しかし、そんな強力な魔物を召喚したことはない。

 仕えてくれるのだろうか。

 ここに来て、自分には出来ると云う、根拠のない自信が不安に変わって来た。


「何を怯えているんだ、私が世界の王になるんだぞ! 召喚くらい出来なくてどうする。私に平伏さないモノなど居るはずはないじゃないか」

 ロベルトは自分に言い聞かせた。


 半年ぐらいしたが、どうしてもアスタロト級の悪魔……イヤ、下級の悪魔すら召喚出来ない。

 供物が少ないのかも知れないな。

 かくなる上はロベルトの躰に憑依させるしかない。

 ロベルトが魔法陣の中に入って、召喚しようとした時に何処からか声がした。


「お主はこの世界を終わらせたいのか」

「誰だ、私の邪魔をする気か」

 ロベルトは声のした辺りを目で追った。


「探しても、お主にはワシの姿は見えぬ」

 ロベルトから見えないと云うことは、別次元の存在なのか。


「お主の力ではルシフェルは当然のこと、アスタロトはおろかヴァプラですら制御は出来ぬ」

「あなた様は……」

「お主ごときが、ワシの名を知る必要はない」

「ならば、力をわたくしに与えて下さい」

「お主に力を与えても、有効に使いこなせん。ワシは無駄なことはせぬ」

「しかし……」


「召喚した魔物を供物にすることは万死に値するが、まだ、お主をワシの元に呼ぶわけにはいかない。呼んだらヴェルデムベゼラに文句を言われるからな」

 ヴェルデムベゼラは死を司る悪魔だ。

 それを呼び捨てにするモノは、そんなに多くは存在しない。

 サバラン教はサバラン神を唯一の神として崇めて、他の神は全て悪魔として扱う。

 その為に、他の神々のことは基本的に悪魔として教わっているので、神官なら誰でも知っている。

 今、語りかけて来ているのは、サバラン神ではない。


「……」

 ロベルトが考えがまとまらずに答えないので、その声は続けて言った。


「この様なことをしなければ良かったのだが……やってしまったコトの責任は償ってもらう。死した後、供物にしたモノ一体に付き数千万阿僧祇(あそぎ)那由他(なゆた)に同じ数を乗じた期間、ワシの所で奴隷となるがよい。残りのわずかな期間をこの地で大人しく生きていろ」

「……」

「それでは、お主をエマルダの近郊へ戻す。今まで生きてきて知り得た召喚魔法に係わる記憶は、死ぬまで一切失われる。死した後に全ての記憶が復活する」


 そう言い終わると、ロベルトは黒いモヤに包まれて消えた。

 声の主はロベルトの作った魔法陣を砂粒になるまで破壊して、召喚されたモノも消した。


 ロベルトは、気付くと馬車の中に居た。

 しかし、馬車は動いていない。

 ロベルトは馬車から降りてみたが、その馬車に見覚えはない。

 多分だが、ここはエマルダの南方だろう。

 それにナゼ自分が、高位の神官の格好をしているのかが判らない。


 ロベルトは自分が乗っていた馬車の御者台にいる、威厳に満ちた者に尋ねた。

「この馬車は私の物ですか」

「そうだ。お前の物だ。でも、私はあるお方からの指示でこの様なことをしている。お前の家来ではないから、言葉遣いには注意するように」

「分かりました。それでは私は乗っていて良いのでしょうか」

「構わない」

「それでは乗車しますので、車を進めて下さい」


 その者と少ししか会話はしなかったが、御者の威厳と云うのか品格は自分と比べて桁違いだ。

 その上、醸し出すオーラは人のモノとは思えない。

 間違っても逆らうことはしない方が良い。

 この馬車がドコに向かうのかは知らない。

 御者が連れて行ってくれた所で、土地が有ったら畑でも耕そう。

 幼い頃に、両親の畑を手伝って……ロベルトも一緒に作物を作っていた記憶がある。

 ロベルトは、自分が神官でなく農夫だと思った。


 蛇足ながら、ベネディクトも国へは戻らずに、エマルダ近郊でアンデッドを集めて新しい拠点作りをしていた。

 それをゼファーブルたちに見付かり、薬により夢遊病にされた。

 そして何日か後に過って崖から転落したのか、誰かにやられたのかは定かではないが、海に漂うベネディクトの遺体をカペランドたちが見付けたのは別のお話である。

これは三人称神視点(複数視点かな?)じゃないって感想は甘んじて受けます。

どうしても、アークシュリラが見付けた邪悪な気配を書くにあったって、ロベルトの視点だけでは書けませんでした。

召喚した魔法陣のその後やロベルトが南の方に居たのも書きたかったからです。


他の作品を読んで勉強をします。

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