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14 村長へ報告をする

 林から出てきたルージュミルパーツを全てやっつけて、私たちは村長の所へ戻った。


「お疲れでした」

「村長、ルージュミルパーツは一匹でなく9匹居たから、それを全て退治したよ」

「9匹もですか?」

「そうエサでおびき寄せたら9匹出てきたんだよ。でも、私たちは林の中に棲息する全てのルージュミルパーツを駆除する依頼でなかったから、林の奥には入ってないけどね。だから、これが全てだとは言えないよ」

「林の奥は結構です。そんな依頼は私どもでは、お金も支払えません。よろしかったら退治したのを見せてくれますか」

「見るだけなら構わないよ。それでどこに出したらいいの?」

「村の中央に広場があります。そこにお願いします」

「判ったよ」

 アークシュリラと一緒に広場に行く。


「子供が居るけど平気なの?」

 村長が数人の人に声を掛けて、そのモノが各家々に伝えに行った。

 そしたら、村人たちは子供を家に呼び戻さず、逆に連れて来たので増えて仕舞った。


「村長。増えてるんだけど」

「見ることも勉強です」

「それなら良いけど、ルージュミルパーツは死んでも尾のトゲを触ると危ないよ。まだ毒抜きはして居ないからね」

 村長は大きな声で注意点を伝えている。


「アークシュリラ、出してあげて」

 アークシュリラは、全てのルージュミルパーツを出す。

 やはり確認したいよね。

 一体だけ体液まみれのが居るけど、絶対に私が仕留めたヤツだね。

 さっき村長が触るなと言ったから、みんなは遠巻きに見ているだけだ。


「村長。外骨格や牙とかなら触っても平気だよ。危険なのは、あくまでも尻尾の先にある二本の突起だけだよ。勉強なんでしょう、尾っぽも棒とかで突っつくなら良いよ」

「そうですか、それではやらせて頂きます」

 村長が先ほどの人たちに言うと、今度は数本の棒を持ってきた。

 子供たちと言わず、みんなが叩いている。

 その中で『スゲーかたいよ』とか『キバがこわい』とか、子供たちの感想も聞こえる。

 私たちも誰かが尻尾に触らない様に注意しながら、その光景を見ている。

 アークシュリラの倒したルージュミルパーツは、剣で外骨格の隙間から心臓を確実に仕留めている様だ。

 私の様に下からではなくてね。


 しばらくして村長が私たちにお礼を言って来た。

 もう充分に理解した感じだ。

 ここに居る子供たちのうち、何人が冒険者になるかは判らない。しかし、きっと半数以上がここで畑を耕すことになるだろう。

 なので退治の仕方や解体は、別の機会にと云うことだ。


 アークシュリラは広場に出したルージュミルパーツを仕舞った。

 それと同時に見学していた村人たちも、それぞれが元々やっていた事をやりに戻っていった。

 広場には元々遊んでいた子供と数人の大人しかもういない。


「村長さん、ルージュミルパーツにやられたモノってどうなったの?」

「薬草を煎じて飲ませていますが、芳しくありません」

「アークシュリラ。ごめん、私は助けたいけどいいかなぁ」

「ゼファーブルが気の済むようにして良いよ」

「村長さん。私が処置をしても良い」

「……」

 村長は何か言いたげだが、次の言葉が出て来ないでいる。

 さっき私が林の中にまだ居るかもって言ったら、退治するお金の心配をしていた。多分、今回もお金の心配をしていると思うけど、私が言うのは失礼かなぁ。


「村長さん、そのモノって咬まれたの、それとも火でやられたの?」

 咬まれたキズや火傷なら、怪我の具合ややられたモノの体力にもよるが、時間が掛かるけど薬草でも治る。しかし、毒は薬草では無理だ。

 なので私は鎌を掛けてみた。

「咬まれました」

「本当に毒じゃないんだね。私たちが帰ってから取り返しの付かないことになったらイヤだよ。私は錬金術師(アルケミスト)だから、患者を見せてくれないかなぁ」


 何処から『ベガトル!』と言う声が聞こえた。

「オヤジ、まだ寝てなければダメじゃないか」

「あなたが魔物を退治してくれたのか? ありがとう」

 この人、死相が出ているね。しかし早期に治療をすれば治せると思うけど、このまま放っておいちゃダメだ。

「はい、退治しました。で、ちょっと良いですか? そこに座って下さい」

 村長のオヤジさんは、私のお願いに素直に応じて地面に座った。

 さすがに自分の体のことは理解しているんだね。


 私は村長のオヤジさんの脈を診たり、目や舌を見たりした。

「違っていたらごめんなさい。患部を見せてくれますか? それともここでは無理ですか?」

 村長のオヤジさんは腕を捲った。

 この何かに刺されたキズは……私はアイテム袋から試薬を取り出して、そのキズに塗った。

「少ししみるかも知れませんが……」

 傷痕から青い泡が出ている。

 と言うことは毒と言うことだ。ここで毒と言ったらルージュミルパーツしか思いつかない。

 違っていても解毒剤は同じで構わない。


「すみません。この薬を飲んで下さい。ご自身でも感じていると思いますが、あなたの体は一時的に良くなっても気力回復薬や薬草では治りませんよ。苦いですがこれを一気にお願いします」

 私はアイテム袋にある解毒剤を与える。

 村長のオヤジさんは、これもまた素直に飲んでくれた。


 私は村長を見た。

 心配そうな顔をしている。

「村長さん、この人がルージュミルパーツに襲われた人なの! このままだったら死んでいる所だよ。それとも死んで欲しかったの? 他には居ないの?」

 治療中の患者の前で、私は村長に言った。


「すみません。村人たちが畑仕事中にルージュミルパーツが出てきて、オヤジがそれを追い払う時に尾に当たってしまいました。父は運命だと言って私に村長を譲ってくれ……」

 最後は泣いていて聞き取れなかった。


「何を運命って、そんな運命なら私が書き換えてあげるよ。諦めたら終わりだよ。でも、最初に私があげたあの薬を飲んだのだから本当は諦めてないんだよね」

「……」

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