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148 大森林の捜索 その3

 私たちは、更に二週間くらい森林の中を彷徨っている。


「アークシュリラ。もう、多分だけど中央部付近だよね」

「そうだと思うけど、見える所に人工物はナンにもないね」

「そうだね。本当に指輪やネックレスなどの小さな品物だったってこと」

「ゼファーブル。やっぱりここら辺が一番感じるよ。下りて調べようよ」


 私たちは地上に降りて、地面の捜索をする。

 しかし、指輪やネックレスなどの小さな品物は見付からない。


「アークシュリラ。そんな小さな品物で空中まで邪気を出すって異常だよね」

「そうだね。本当は小さな小屋でも建っていると考えていたんだよ」

「そうだったの。それでどうするつもりなの」

 誰かが落としたなら、葉っぱをどかせば見付かるかも知れない。

 しかし、誰かがここに埋めた場合は、どのくらいの深さに埋めたかが判らないことには探しようがないよ。

 人力で掘ったのなら数メートルくらいだけど、魔法で埋めたとなると見当も付かない。


「アークシュリラ。ここでは魔力は感じないの」

 そんなモノを落とすモノだから、人知れずナニかの儀式をしていたかも知れない。

 儀式をして居なくてもナニかが有って、その物品を落としたコトも考えられる。

 アークシュリラなら、そのモノが戦って居れば魔力を感じられる。


 アークシュリラは大地を掌で撫でた。

「あれっ。確かに魔力が有るけど、この世界のモノではないよ」

「それって、どういうこと」

「魔力に繋がるモノがこの世界にはいないと云うことだよ」

「死んだってこと」

「違うよ。術者が死んでも骨は残るから、遺体の場所は分かるけど……今回はナニも感じないんだよ」

 肉体は燃やせば無くなるが、骨や魂魄は残る。その後骨を砕いたとしても、決して無くなることはない。

 魂魄ごと消すとなると、死ぬまでに異空間に閉じ込める以外に、そんなコトは出来ない。


「異空間に閉じ込められたってこと」

「肉体や骨とか魂魄を含めて全てをね」

「そんなこと出来るの? スゴい強い邪気を持って居るモノなんでしょ」

「それしか考えられないよ」

「もし、そのモノが異空間にいるのなら直ぐに見付けるのは無理だね」

「そう。手掛かりが無いと、無理だよ」



「アークシュリラ。場所は分かったから、上空に出てカヌーでどっかの街へ行こうよ」

「ごめんね」

「アークシュリラが謝る必要はないよ」

「ゼファーブルの杖で埋まっているモノを掘り出せない」

「金属か鉱物か分かれば出来るかも知れないけど、この下に埋まっているモノ全てを掘り出すのは別の意味で危険だよ」

「そっか、邪悪な気配が人骨にくっ付いている魂魄だったら、私たちが解き放つことになるよね」

「でも、もしもそれだったら、埋めたら封印すると思うけどね」


 私たちは上空に出て、一番高い塔の建つ街へ向かった。

 そこを選んだのは、行き先はドコの街でも良かったので、高い塔があるから変わったモノが有りそうと思えたからだよ。


「ここの街って結構歴史があるみたいだね」

「建物の感じはそうだね」

 私たちはギルドではなく、図書館でこの地域の伝承や歴史を調べることにした。


「アークシュリラ、この森林って結構昔から有ったんだね」

「そうだね。この本には、大昔にエルフやドライアドも居たって書いてあるよ。ゼファーブルは会ったことがあるの」


 エルフは先端が尖った耳をしている以外は、人間そっくりの種族だよ。

 髪や肌の色は住んでいる地域によって、人と同じ様に異なる。

 そして、魔法や弓の扱いが上手いらしい。


 ドライアドは木の精霊であり、森の管理者と言われている。

 どちらも人間の寿命よりか、何倍も生きられる。


「私はどっちも会ったことはないよ。エルフは別の処に移り住むことも出来るけど、ドライアドは木があるから移動することは無理だよ」

「それもそうだね。でも、この注にドリュアスに進化すれば移動も出来るって書いてあるよね」

「そうだけど、何体のドライアドが居たか知らないけど、全てが進化するのは大変だよ」


「どうして? 時間が掛かってもイツか進化するんでしょ」

「確か、好きな人物を胎内に取り込んで、ナン百年も経たないと進化しないよ」

「ドライアドって、人を食べるんだっけ」

「食べないよ。進化したら元の姿で胎内から出されるよ。出されても、その人を知っている人間は誰一人として生きて居ないけどね」

「ドライアドが好きだってことで取り込むの」

「イヤ、互いに好きと云う感情が必要みたいだよ。ドライアドも力ずくでは取り込まないね。最初は好きでも人って気が変わるから、そう簡単にドライアドからドリュアスには進化しないよ」

「そっか、難しいね」


 この街の図書館は私たちの好奇心を満たす書物が多数有った。

 私たちの目的であった。

 大森林に生息している魔物の情報は、古いモノだがナン冊かに別れて保管されていた。

 更に大森林がまだ小さな時の伝承などもあり、私たちの興味が尽きることは無かった。

 それに私は理論的に知らなかったが、体質的に出来る錬金術関係の書籍も有った。

 これを読んで理解すれば、やったことをお茶を濁らすこともなく説明することができる。


「ゼファーブル。この世界に暦って有るんだね」

「聞いたことはないよ。暦ってナニ」

「日蝕や日の出入りとかを記載したモノだよ」

「日蝕って判るの」

「難しい計算をすれば判るよ。私は計算は出来ないけどね」

「そうなんだね」

 もし事前に日蝕が判れば便利だ。でも、それくらいでしかない。

 今時点で世間に知れ渡って居る薬とかに使用する材料で、日蝕の時にしか採取出来ないモノはないのだからね。


「本の発行はイツなの」

「この本はつい最近発行されたみたいだね。前書きによると太古の時代のモノだって」

「太古って前の時代?」

「判んないけど、昔に私見たいな人がいたのかもね」


 アークシュリラの話によると、その本にある暦は地球の日本や中国と云う処で作られたモノをここに当てはめているらしい。

 もしそうなら、太古にも転生者が居たと云うことだ。

 イヤ、アークシュリラがこの星が誕生して最初の転生者と考えるのは違う、何人も居たっておかしくはない。

 それに一つの時代に一人って訳はない。

 私がアークシュリラに言ったように、転生者が自分から転生者だと言うことはないと思うから、今までに出会った人たちの中に何人もの転生者がいてもおかしくはない。

 この星に来るだけで無く、逆にこの星から違う所へ転移や転生するモノも居るかも知れないよね。


「アークシュリラ。暦って、どういったときに使うの」

「基本的にイツ種を蒔くとか、収穫をするとかだね。暖かくなったら撒いて、実ったら刈っても良いけどね。暦を使えば毎年同じ時に種を蒔くことになるよ」

「今年は暖かいから早く撒くとか、寒いから遅く撒くとか、バラバラにならなくて済むんだね」

「そう言った意味合いが大きいね。遅く撒いて直ぐに暑い季節が来たり、早く撒いて雨が全く降らなかったりすることも防げるよ。でも、気温の高い低いは年により変わるから絶対ではないけどね」

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