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146 大森林の捜索 その1

 私たちは森林に入ったが、まだ外周部なのでそれほど木々で覆われてはいない。

 なので枝の隙間から空は見えるし、日の光も差し込んでいる。


「アークシュリラ。クモや蛇って森の奥に住んでいて、他のモノに悪さをしていないよね。出会ったらそれでもやっつけるの」

「やっつける気持ちはないけど、私はレファピテルの様に魔物と意志の疎通が出来ないからね。出来れば先に見付けて、出会わないでいたいよ」


 アークシュリラの願いの通り、先に見付けられる様に私もいつもより周囲に注意しよう。 それとクモの巣には、引っ掛からない様にしないといけないね。


 私たちは周りに注意をしながら、どんどん奥に進んでいく。

 それに従い、木々は互いに覆い被さって日の光が届き辛くなってきている。

 辺りの空気も湿気を随分と含んでくる。


 私は森林に入ってから所々の木を杖で軽く撫でて、目印を付けている。

 それは森林の中を進んで行くと、周囲の変化もなく太陽や月とか星が見えないので、どの方角に進んでいるのか判らなくなってしまう。

 そして、同じ所をグルグル廻ってしまう。

 それを防ぐ為に、魔力で私たちにしか判らない目印を付けているんだよ。


「ところでアークシュリラ。邪悪な気配はまだ感じるの?」

「ゼファーブルはナンにも感じないの?」

 私は空気が湿って来たくらいしか感じない。

「感じないよ」

「そうかぁ。でも、強くなってはいないから、生きてないのかもね」

「それって物品ってこと」

「建物かも知れないし、亡くなっているのかも知れないけど……でも、ギルドの人は、建物があるって聞いたことはないって言っていたしね。小さな品物だったら見付からないかもね」


 葉っぱが重なって敷き詰められている所では、指輪やネックレスなどの小さな品物は見付けにくい。

 杖も木の根っこと見誤って見逃すこともある。


 辺りは先程より暗くなって来た。

 もう直ぐに、日が沈むね。

 一日や二日くらい徹夜したところで、この森林の中央部にはたどりつかない。

 アークシュリラの云う邪悪な気配の正体が、中央部に存在しているのかは判らないけどね。

 なので、今、無理をして、これから先で寝落ちする様なことになったら大変だ。

 徹夜を続けると、寝落ちせずとも注意力は散漫になる。

 今の私たちに出来ることは、出来るだけ早く野宿ができる場所を決めることだね。


「ジャイアントスパイダーやサーペントなら木はあまり登って来ないよね。ゼファーブル、野宿は木の上でするの?」

「ジャイアントスパイダーやサーペントは、確かにあまり木は上っては来ないけど。絶対に来ない訳じゃないよ」

「だったら宿屋を借り続けて、その都度転移したら良かったのに」


 それを云ったら、宿屋で無くてファリチスの自分たちの家からでも同じだ。

 一度来たのだから、私たちはこの場所に転移することが出来る。

 しかし、それをやってしまったら、ヴェルゼーアたちと別れた意味がなくなる。

 別にヴェルゼーアたちとはケンカをしたわけでもないし、お互いに言いたいことは言えていた。

 今後に仲違いすることを恐れて、私たちはファリチスを出たのだからね。


 私が言いだしたのか、アークシュリラだったかは定かでは無いが、二人で相談して居るうちに旅に出ることになったんだよ。

 ナンで旅になるかってのは、少しくらい離れて居た方が関係も長く続けられると私たちは思ったからだよ。

 まぁ、アークシュリラは、ファリチスの有るところが半島と知ってからは、大陸の方面に行きたかった事が大きいと思うけどね。


「転移はしないで、私が周囲を覆う土壁を作るよ。そこの中で寝よう」

「良いけど、食事は」

「料理している時にナニかがやって来るかも知れないから、燻製かパンでも囓るよ。アークシュリラも持って居るんでしょ」

「燻製は持って居るよ。それって昔みたいだね。でも、野宿をする度に壁を作るより慣れた方が良いよね」

「そうだね。少しずつ壁を作らない様にするよ」


 そう言われれば、私も壁を毎回作れる訳ではない。

 地形や周囲の状況によりそんなモノを作る訳にはいかないこともある。

 魔物や敵……イヤ、周囲の変化に気が付ける様になることも必要だね。


 でも、今回はヘビがいる森なので、私は木を避けて私たちが寝られる程度の空間を壁で囲んだ。

 木々があまり生えていないところに壁を作ったが、木を移動させてはいない。

 当然、部屋という感じでは無く、それはいびつな形をしている。

 そのために、傍でお互いが寝ることは出来ない。

 それでも中央部で寝るところとくっついているから、問題なく壁の内側で安心して会話は出来るよ。


「ゼファーブル。ジャイアントスパイダーってジャイアントと付くけどそれほど大きく無いよね」

 アークシュリラは冒険者ギルドの図書室や街の図書館へ行って、魔物などの生態も勉強していた様だ。


「そうだね。普通に出会ったら、足を含めても1メートルくらいだからね。足を伸ばして広げるともっと大きいけど」

「成りたての冒険者じゃ無理でも、少し経てばやっつけることが出来るよね。ナンで退治しないんだろうね」

「ジャイアントスパイダーがナン匹いるかは分からないけど、この森林って大きいから見付けるのは大変だよ」

「そっかぁ。駆除依頼が出ても、この森林の何処かでは見付けられないから受託しないよね」

「そうだよ。それに私たちが確認した冒険者ギルドにも依頼は無かったよね」


 冒険者が受託しても、依頼に有った魔物が見付けられない場合は失敗扱いとはならない。

 しかしこの森林の広さだと、1ヶ月くらいで捜索出来る訳はない。

 くまなく探すとなると、数カ月か年単位の期間が必要になる。

 お金に余裕のある冒険者でも、そんなに長期間に亘り報酬が無いときつい。

 そんな依頼を受けるのは、道楽でやっているモノくらいだけど、そう言うモノは辛抱が出来ないから長期間に亘り地道に捜索をすることはない。

 だから、誰も受託しないよ。

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