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145 森林調査の準備をする

 私たちは、冒険者ギルドで知りたかった大森林の情報などをようやく聞けた。

 良い宿屋も教えてもらえたので、私たちはそこを出た。


「アークシュリラ。どうする」

「どうするって、宿屋のこと、それとも森林の探検のこと」

「宿屋の方」

「料理が美味しいと言ってもファリチスに比べたら、どっちもたいして変わんないと思うよ。だから宿代の安い方だね」


 私たちは蛇の羽亭に向かった。


「ここだね。それにしても、蛇の羽亭って珍しい名前だね」

「そうだね。月とか星とかが多いのは寝る処だから判るけど、蛇って夜や睡眠と関係ないよね」

「入って聞いて見ようよ」


 私たちは宿屋の扉を開けて中に入った。

「スミマセン。二人だけど部屋は空いている」

 店の人は私たちを見てから言った。

「二人で一部屋か一人部屋で良いだろう、それなら空いているぞ」

「二人部屋をお願い」

「判った。すまないが、代金は先に払ってくれ」

「良いよ。じゃ三日分ね」

 私は掲示されている金額を払った。


「食事は朝と夜だ。朝は日の出から食べられるが、昼近くで終わる。夜は日の入りから酒屋がやっている間はいつでも大丈夫だ。食べなくとも料金は返さないから注意してくれ」

「判ったよ」

 店員は宿屋のルールなどを話してから、私たちに部屋の鍵を渡した。

 私はそれを受け取って、二人で部屋に向かった。


 部屋は机と二脚の椅子がある。

 そこで軽食なら食べられそうだ。

 なので宿屋で食事が出来なくても、パンとかをお店で買ってくればいい。

 もし買えなくても、私たちがそれぞれ所持している燻製などを食べることも出来る。


 アークシュリラは腰に帯びている刀をベッドに置くと、椅子に腰を下ろして言った。

「蛇やクモだけで、この森林を通らないってのは変だよね。もう一週間くらい街道を進んでいるから、反対側へ行くのに何カ月もかかるよね」

「余り交流が無いのかもね」

「そうか。私たちが来るまではファリチスの周りも、余り交流がなかったよね」


 ファリチスの周辺にあった村も、私たちが来るまでは交易はおろか交流も無かった。

 料理を教える際に、チーズやヨーグルトなどを作っている村のことも教えたから、村同士で直接取り引きを始めたんだったね。

 まぁ、カレー粉の材料は、ほぼ全ての村を巻き込んだ。

 当然、気候も同じなので、自分たちの村でも作る気になれば作れる。

 しかし、その村では昔から薬として活用していたモノなので、沢山実っている。

 なので、わざわざ自分たちの村で作らずに、相互で提供しあいだしたんだよ。


「アークシュリラが感じた邪悪な気配って、クモや蛇じゃ無いよね」

「判んないけど。それじゃない様な気がするよ」

 アークシュリラの能力と云うより、第六感なのだろう。

 でも、それらは人にとっては敵だが、本能でやっているから邪悪な気配を感じることはない。


「じゃ、他にも居るのかなぁ」

「ゼファーブルが洞窟や洞穴が好きな様に、中には森が好きなモノも居るよ」

 深い森林なら、そう簡単に人もやっては来ない。

 なので、静かに研究や修行に没頭することが出来る。

 もちろん研究や修行をするモノが、善人とは限らないよね。


「そっか、そうだね」

「で、宿屋の名前の由来をナゼ聞かなかったの」

「何となく判ったよ。この星では酒の神って蛇を使いにしている事が多いんだよ。この宿屋は元々酒屋だったと思うよ」

「そうなんだね。私の居たとこでも、神様が姿を白蛇になって現れたと云うのが有るよ。でも、酒で大蛇を酔わす方が有名だけどね」


 この推理は、まぁ、当たらずとも遠からずだと思う。

 他の街でも酒が自慢の店は、蛇を店の名前に付けていたのを思い出した。


「じゃ、森林にいる蛇とは関係ないの」

「多分、関係ないよ」

 全体に無関係とは言えない。

 飼っていたモノが逃げたとか、飼えなくなって森林に逃がしたとかある。

 また、小さかった時にエサを与えていたかも知れない。

 酒屋だと、蛇は神様の使いナンだからね。


「とんでも無い魔物は居そうじゃ無いから、三日の間に準備して森林に行こうよ」

「準備って、アークシュリラは必要なモノは持っているでしょ」

「イツもはランタンだけど、スパイダーなら松明が有った方が良いと思うよ。森林の中は暗そうだから灯り(ライト)の魔法をずっと使うより良いしね」

「スパイダーなら松明が有った方が良いけど、灯り(ライト)ナンかを節約しても魔力の消費量ナンかたかが知れているよ」

「そうだけどね」


 翌朝になって、私たちは松明など必要と思うモノを購入して廻った。

 夜と朝の一回ずつ食事をしたが、確かに他の店よりかは調理する技術も高いし、美味しかった。

 ワインとかも、ふんだんに使っていそうだった。


 しかし個々の料理は素晴らしいが、組み合わせはナゼと首を傾げたくなった。

 それはスープもジャガイモのポタージュよりかメインが香草を使った肉を焼いたモノなら、ポトフやコンソメスープの様な澄んだスープの方があうだろう。

 残念ながらポタージュでは、香草の薫りが消えない。


 街自体はそれほど巨大って訳ではないが、やはり三日間では隅々まで見て回ることは出来ない。

 そう言ってもお店の人とかに聞いて、魔法ショップや武器屋とか道具屋などのめぼしいところは行くことができた。


 三日目の朝食を私たちは取って、宿屋を出た。


「料理は三日間とも、とても美味しかったね」

「そうだね。この世界って肉は焼いたモノしか無いと思ってたけど、煮込んだモノも出たよね」

「スープの煮込み料理はファリチス周辺の村でもあったけど、ここではメイン料理だったね」

「でも、一度も澄んだスープは出なかったね」

「そうだね。料理人のこだわりかなぁ」

「それしか無いよね。いろんな料理を知っているのに、澄んだスープは知らないって云うのは考えにくいよ」


 私たちは街から出て、馬でゆっくり進んでいる。


「で、森林に入るのに馬はどうする」

 枝が外周部でも重なり合っているし、所々根が地上に出ているので、この森林の中を馬で行くのは可哀想だ。


「ゼファーブルは、アイテム袋に仕舞えないの」

「大きさ的には大丈夫だけど、生き物だよ」

「じゃ、ベストのヤツなら大丈夫だよ。その中は異空間じゃ無いからね」

「そうだったね」

 ベストは異空間で無く魔法で作られた虚無空間だから、生き物を生きたまま入れても問題はない。


 私たちは馬をベストに入れて、森林の中へと踏み込んでいった。

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