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143 久しぶりの二人で野宿

 私たちが出発したのは夜中だったが、昼過ぎには西にある拠点を通過して大陸へ来ていた。

 こっちは北方と違い山脈を越えることもなく、ただ草原が続いているだけだった。


「アークシュリラ。そろそろ高度を上げないと、下から撃たれるよ」

「そっか、ここからは、こんな乗り物を知らない人々が多いんだよね」


 私たちは結構な高さまで上って来た。

 北方には山脈がドコまでも続いている。

 あの向こう側に(れん)と言う国がある。

 山脈の手前側にも、街がいくつか見える。

 しかし、私たちの目を奪うのは、なんと言っても広大な大森林だ。


「この森って街道が通って無いのかなぁ」

「どうだろうね。上空からは木が覆い被さって判らないね」

「邪悪な気配も少しはするね」

 森なら様々な食べ物も有るだろうから、いろんな生き物が居てもおかしくはない。

 居ない方が不自然だよ。


「そうだね。でも、森の周辺から森へ向かう街道は、ここら辺にはないよね。避けている感じだね」

「避けているって、たまたまじゃないの」

「そうかもね。一番大きそうな街で聞いてみようよ。冒険者ギルドにも久しぶりに行ってみたいしね」

「そうだね。これだけ大きな街が幾つも有るから、ここからじゃ見付けられない小さな村もあるハズだから馬を買っても良いね」

「だったらファリチスに、馬を取りに行く?」

「戻って馬で半島を移動するの?」

「違うよ。戻ってここまで馬ごと転移するんだよ」

「じゃ、直ぐに戻ろうよ。今なら、みんなは私たちが戻って来てるって思わないよ」

「そうだね。馬具を着けたら直ぐにあの木の所へ来てね」


転移(テレポート)!」


 私は愛馬に馬具を装着して、直ぐに転移した。

 ヴェルゼーアたちに見つかるかもと思ったが、馬小屋は広場に面している訳ではないので、三人以外にも街で暮らしている人々に出会うことも無かった。


 少しして白い光と共にアークシュリラがやって来た。


「上手くいったね」

「そうだね」


 私たちは馬で近くの街に入った。


「宿屋を決めてから、ギルドに行こうか」

「昔は商業ギルドで宿屋を紹介して貰っていたけど、今回はしないの? それともゼファーブルはこの街のことを知っているの?」

「街のことは知らないよ。じゃ、商業ギルドに行こうか」

「そうだね」


 私たちは馬から下りて、手綱を引いて商業ギルドに向かった。

 少し前までは当たり前にやっていたことだが、カヌーを使い出してからは、移動時はカヌーをアイテム袋に片付ける。

 なので、街中では杖しか持っていない。

 馬を引いての移動が、こんなに面倒くさいとは思わなかった。


「あれっ、商業ギルドって聞いて来たけど、ここは冒険者ギルドだね」

「道を間違えたのかなぁ。来たから寄っていこうよ」

 別に冒険者ギルドでも宿屋は教えてくれる。

 今日は売るモノがないから商業ギルドでなく、冒険者ギルドで聞いても良い。


「冒険者ギルドでも、宿屋は教えてくれるから行こうか」


 私とアークシュリラは冒険者ギルドの扉を開けて中に入った。

 中は大勢の冒険者で賑やかだった。


「ゼファーブル。人が多いね。ナンか有ったのかなぁ」

「そうだね。私もこんなに多いのは初めてだよ。先に掲示板を見ようよ」

「そうだね」


 私たちは低レベルの依頼から順に見ていくことにした。


「ここら辺は半島と変わんないね」

「ウルフとかが多いけど、マダーフォンもいるし、そうだね。次は」

「ここは……オークだって」

「オークを知っているの?」

「オークって、豚の頭をした亜人だよね」

「牙が有るから、豚よりかはイノシシかなぁ」

「エザノーラとどっちが強いかなぁ」

「個体差じゃないのかなぁ。一般的にエザノーラは団体戦が得意で、オークは個人戦が得意だよ」

「じゃ勝てるね」

「そうだね。次は」

「オーガって有るよ。本当なのかなぁ」

「ウソの掲示はしないと思うけどね」


 依頼者の誤りと言うことも有るので、絶対にオーガが居る訳ではないけどね。

 オーガに似ている魔物は居ないから、見誤ったと言うことも少ないと思う。


「オーガって鬼だよね」

 頭に角が生えているから鬼と認識しても良いが、オーガと異なるオニはいる。

「少し違うけど、だいたい有っているよ」


 アークシュリラのアンテナに引っ掛かる魔物は、いなかった様だ。


 これだけ大勢の人が居るのに、余り掲示板を見ている人が居ない。

 集まっている原因を知るために、私たちは周囲の会話を聞くことにした。


 会話によるとナンとかと言う貴族の子供がさらわれたらしい。

 その報酬がスゴいのでみんなは集まっているらしい。


「アークシュリラ。どうする」

「これだけ居れば私たちの出番はないよね。みんな強そうだしね」

「そうだね。これじゃ宿屋なんて聞けないから行こうか」

「久しぶりに、野宿でも良いよ」

「そうしようか」


 私たちは街を出て騎乗し、街道を進むことにした。


「やっぱり森へ行く道はないね」

「神聖な森で入っちゃいけないのかもね」

「逆も有るよね」

「確かに、あるね」


 私たちは随分と進んでから、街道を逸れて野宿をする場所を探した。


「ここで良いよね」

「良いね」

 私たちは馬から下りて、馬を自由にさせる。

 帰って来ないと問題だが、必ず戻って来ることからいつもそうしていた。


 火を熾す場所も出来た。

 アークシュリラはナニか調理をしている。

「じゃ、火を熾すよ」

「こっちも下準備は終わったから、お願い」

 ナニかの肉を焼き始める。

 ファリチスから持ってきたモノだと、見ただけでは陸上にいるモノなのか、海にいるモノなのか想像が出来ない。


「ゼファーブル、出来たよ。装うから肉を皿に移してね」

「ところで、これってナンの肉なの?」

「見て判んないの? ウルフだよ」

「ウルフって、もっと固そうな感じだったと思うけど」

「固いから、事前に摺り下ろしたタマネギに漬けて柔らかくしているよ。これはトン汁じゃなくウルフ汁だよ」

「ナンでウルフなの」

「ファリチスでも安かったからね」


 確かに安かった。

 他の肉である牛や馬は食べるよりかは、荷物の運搬や農作業の労働力として使われる。

 鳥も玉子を産むことが優先されるからね。


「摺り下ろしたタマネギだけで、こんなに柔らかくなるの?」

「そう。リンゴとかでも柔らかくなるけど、タマネギが安くて良いよ」

「漬け終わったら、タマネギは捨てるのが勿体ないね」

「今回は捨てないで、ウルフ汁に入れたよ。お店屋では使う量も多いからソースに使ったりできるけどね」

「そうなんだね」


 ウルフ肉なのに柔らかい。

 言われなければ、ウルフの肉とは思えない。

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