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138 お金って

 私はアークシュリラと一緒に麺料理を食べに、(れん)にある街までやって来た。


「麺料理って、種類がとても多いよね」

「そうだね。麺自体も小麦や米などで食感が変わるし、それに入れる具材は無限と云うほどあるしね」

「スープも私たちの街みたいに塩と醤油以外にも、たくさんの種類があったよね」

「ファリチスの人も転移出来たら食べに来るかなぁ」

「来て作り方が判って、ファリチスで提供しても美味しくないかもよ」

「どうして?」

「やっぱりこの麺はここで食べるのが一番美味しいよ。長い時間を掛けて、ここの気候や周囲で取れるモノとかで生み出されたモノだからね」


 そうかも知れない。

 確かに寒い所で冷麺や冷やし中華は食べない。温かいモノを食べる。

 それらはファリチスで食べるべきモノだ。


「アークシュリラ。ヴェルゼーアとレファピテルはその後どう?」

「どうって」

「あなたを見る目や接し方が変わったかって思ったから……」

「みんな、そんな事で変わる人じゃないよ。それとビブラエスにも言ったよ」

「そうだったんだね」

 ビブラエスだけが知らないと、これから先でナニか起こるかもと思っていたけど……私の取り越し苦労だったんだね。


「ところでゼファーブルは、あのローブってまだ着てるの」

「着てるよ。アークシュリラは着てないの」

「着てないよ。このベストで充分だし、もし相乗効果が発動したり打ち消しあったりしたら困るよね」

「そうだね」

 私は効果がいつか出てくるモノと思って、着続けていた。

 それと着ていれば、光の神リファヴェーラが守ってくれる様な気もしたからね。


「マントだけじゃ無くて、普段はリファヴェーラにもらった能力は停止しているよ。だってウルフとかだとそこら辺の石……イヤ素手でも簡単に倒せるから、戦っても面白くないからね」

「祈らないと発動しないんじゃないの、わざわざ停止する必要は無いでしょ」

「発動はそうだけど、ちょっと倒し方を考えていると発動しちゃうことがあったから、停止させたよ」

「その停止は、自分で見付けたの」

「そう、ゼファーブルの杖も休んでいた時が有ったよね。杖でも休むのだからって思ってね」

「そうだったんだね」


「それとね。これを使ってたらヴェルゼーアに後れを取っちゃうよ。ヴェルゼーアはナニも無いのにあれだけ強いのだからね。もし急に能力が無くなっても良いようにしているよ」


 確かに杖はナンの前触れもなく休止に入った。

 私も杖に頼り放しではいけない。

 魔法ではレファピテルに遠く及ばないのは判るが、杖が無くても足元に触れられるくらいには成らないといけないね。

 それに毒の知識があるビブラエスにも、薬作りで追い抜かれるかも知れない。


 そもそも、この杖がいつまで私の手元に有るか分からないのだからね。


「ガンバってるんだね」

「ゼファーブルだってこないだの戦いでは、杖の力を使って無いよね」

「周囲にみんな居たからね」

「そうだね、強力な魔法だと周囲を巻き込むよね。それに街の被害もあれくらいで済まないで、壊滅していたかもね」

 アークシュリラやレファピテルには手を抜いている様に見えたのかなぁ。

 確かに杖の能力は使っていないが、ビブラエスから遠い位置を狙って真剣にやっていたけどね。


「結構、本気だったよ」

「それだったら、ゼファーブルは攻撃系の魔法って苦手なのかもね」

「闇系は苦手だったけど……そうかもね。それで今、姿を消したら見えなくなるよね」

「姿を消すんだからね。当然だよ」

「ヴェルゼーアが姿を消して小屋に入ったけど、どこに居るのか全く判らなかったよ。これから先に、見えないと間違って魔法を放ったり武器で切りつけたりすることが起きるかも知れないよね。私たちの間だけでも見える様に出来ないかなぁ」

「それは出来ないと思うよ。あれってモノを隠す魔法陣の応用だよね。隠したモノは魔法陣を解読しない限り、絶対に見付けられないとあったよ」

「確かにね。でも、解除でなくて居るのが解れば良いだけだよ」

「そう言った改善点なら、また、三人で検討会をやろうよ。別に三人で無くても良いからね」

「そうだね」


 アークシュリラも幾つかの使い勝手が悪いものをあげた。

 私はそれのメモを取った。


 私たちは麺料理などを食べ終えて、店から出る準備をしだす。

「ナンでお金って必要なんだろうね」

「それはモノを買うためだよ」

「それは判るけど……私が料理屋を作ったのは、みんなが私の作る料理を美味しそうに食べて、笑顔になったら嬉しいからだよ。お金のためじゃないよ」

「私もケガや病気が治るなら、薬をタダでも配るからその気持ちは分かるよ」


「そうなんだよね。この世界で暮らす人たちって、自分が作ったモノで他の人が喜んでくれればそれで幸せそうだよね。全員とは言わないけど、冒険者だってお金のためじゃないよ」

「それって……」


「そう、偽の薬作りをして利益を得ていたのは貴族だったじゃん。そう言った一部の連中がお金を得ると幸せになると拭き込んでいるんだと思うんだ」

「私たちはこんなにお金が有っても、昔と変わらないのにね」

 洞穴に住んで薬を作り、街に行ってギルドで売っていた時も幸せだった。

 それに家を建ててアークシュリラと暮らし始めた時も、ヴェルゼーアたちと魔物退治して多少のお金がある今も変わらず幸せだ。


「もし、お金でなく物々交換だったら、一部の貴族や政治屋は食べていけなくなるよね」

「そうだね。民の為に自分が戦場に行って、最前線で戦っている貴族や領主もいるから全員じゃないけどね」

「そう言う民を守って居るモノも居るよね。本来は民を守るから領主とか貴族の地位を与えているんだよ」

「そう云う特権を与えないと、いざ敵が来たり自然災害があったりした場合に、避難とかの命令を聞かなくなるよね」

「そうなんだけど、自分はナンもしないのに、ただ生まれ育った地位だけで偉いと勘違いしているモノが困るよね。ケッゼンもそう言うモノだったのかもね」

「そうだね。お金にがめつそうだったよね」


「私の居たところは物価が少しずつ上がるのが良いって言っていたよ。私は今のままでもいいのにね」

「ナンで物価が少しずつ上がるのが良いの」

「上がったら、その分貰える給金が増えるって言っていたよ」

「でも、それって自分だけが増える訳じゃ無いから使う分も増えるよね」

「そう。手元に残るのは同じだよ。でも、みんなが一遍に上がる訳じゃ無いから困る人も出てくるよ」


「お金じゃなく、必要な処に必要なものを与えれば良いのにね。でも、貴族などは生産していないから持っているモノの価値が下がると困るんだね」

「そう、お金しかないモノにとって価格が下がるのは怖いことだよ。自分の価値も下がったと感じるからね。元々価値が無いのにね」

「そうだね」


 私たちはお店を出て、のんびり散歩をしてからファリチスに戻った。

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