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137 作戦が終了して

 ケッゼンの馬車がやって来た。

 ヤバい、ここに停めるの? その位置じゃ、窓越しに中の様子が見える。


「「眠り(スリープ)!」」

 私とレファピテルは同時に魔法を掛けた。


「同じ考えだったのですね」

「そうだね」


 空が白みだした。

「まだ、来ないね」

「そうですね」


 それからしばらくしてから三人がやってきた。

「遅かったね」

「これもビブラエスが見付けたぞ」

 それはこの計画書だった。


「読んでたの?」

「ちらっと見た」

「ちらっと?」

「少し読んだが、全部ではない」

「そう言うことにして置こうよ」

「えぇ、家にはしょうもない連中がいます。小屋に居るのが仕方なく参加したモノです」

「話をする?」

「その必要はない」

 ヴェルゼーアがそう云ったが、私はみんなの顔を見た。

 誰一人としてケッゼンたちに、ナニも聞く気が無い様だ。


「まだ、操れる?」

 そう言って、私はレファピテルの方を見た。

「掛けて半日も経っていませんし、一度も目覚めていないので大丈夫です」

「じゃ、机の上の置いてある瓶から、一人一錠を飲ましてね。終わったら私のヤツらをやるよ」


「待て! これを置いておく」

「ビブラエスが忍び込んで、それは国主の執務室にでも置いておけば良いよ」


「出来るか」

「姿を消せるから、簡単なことだ」

 ヴェルゼーアはビブラエスに書類を渡した。


「小屋の方はヴェルゼーアに任せるよ。話なら姿を消して本名は名乗らないでね」

「そうだな、本名を名乗ったらダメだな」

「名乗るなら、どこぞの女神ということにすれば良いよ」

「そして話が終わっても、自分から扉を開けて出てこないで、みんなが出て行ってから出る様にして下さいね。その間はぶつからない様に、天井にでもくっついていて下さい」


 ヴェルゼーアは少々納得がいかない様子で小屋に向かった。

 レファピテルと私で家の中にいたモノに薬を飲ませたよ。


 小屋の方は随分と前に人々が出てきて居たが、ヴェルゼーアは戻って来ていない。

「ヴェルゼーアは遅いね」

 既に発病したモノが扉の開いていた家から出てきた。


「ちょっと見に行く?」

「そうですね」

 一人の少年が祈りながら寝ている。

 心配ごとが無くなって、どっと疲れがでたのだろう。

 私は扉から少し覗いて、ヴェルゼーアは姿を消しているからどこに居るか判らないが、天井に向かってこっちに来いと手招きをする。


「寝ていたのか。私が法の神と名乗ったら、全員が祈り出したぞ」

「小屋に居たのは、みんな心がキレイで優しい人でしたよ」

「そうだったな。で、このままにするのか?」

「危険は無いけど、あれを見たら心にダメージを負うよ」

「そうですね。もし、友達が居たら尚更ですね」

「私がこの子が暮らしていた処まで転移して、置いて来るよ」

「2人同時に転移出来るのか」

「転移は範囲魔法だから出来るよ」


「それなら今から行けば、今日の業務が開始する前にこれを置いてこれる。ゼファーブルがその子を連れて行ってる間に行ってくる」

 ビブラエスが直ぐに国主の執務室に書類を置きに行った。


 そして私が魔法を掛ける。

転移(テレポート)!」

 子供の暮らしていた村のソバに転移した。

 あの子供もちゃんといるし、まだ、寝ているね。

 狸寝入りでは無いことも確認した。


転移(テレポート)!」

 私はみんなの所に戻って来た。

「置いて来たよ」

「お疲れ」


 ビブラエスが置いてきた計画書を国主本人が見たのか、執政官が見たのか判らないが、ケッゼンは大臣を罷免されただけでなく、家も行政には二度と携われない様になった。

 取り潰しとなった訳ではなく、一家はどこかに引っ越したらしい。


 イファーセル国内では、ケッゼンの話題は出ていない。

 屋敷からは一枚の貨幣すら見つからなかったハズだが、捜索もしていないことから闇から闇に処理したようだ。

 犯人が判って捜索している内に、現職の大臣がやっていたことが明るみに出ることを恐れたのかなぁ。

 それでと言うわけではないが、モルロンの領主アビレオンに復興に必要な額をヴェルゼーアが聞きに行った。

 アビレオンは怪訝な顔をしたそうだが、ケッゼンの家から盗って来たお金で充分に足りたので、言われた金額よりちょっと多い額を渡したらしい。


 私は広場のベンチに腰を下ろして、アークシュリラと話している。

「アークシュリラも複数人を連れて転移出来る?」

「出来るけど、今回の様なことじゃないと使わないね。みんなもそうだよ」

 私たちは全員が転移をすることが出来る。なので知っている所なら、わざわざ誰かの転移の魔法で一緒に行く必要はない。

「そう」


「ゼファーブル。薬の分析は終わったの?」

「終わったよ。材料があれだけ有ったんだから、ケチらずに濃くすれば良かったのにね。ほぼ水だったよ」

「濃くしたらどうだったの?」

「飲み過ぎたら臓器を傷めるけど、低レベルの強壮剤にはなるよ」

「濃くしても、それじゃね」

「それは、あくまでもセンチピードだけの話だけどね」

「他の薬草とかを混ぜれば良いの」

「そうすれば、中級か上級の下になるよ」

「そうなんだね」


 一カ月近く経ったが、疫病は収まりそうになかった。

 有償でも無償でも、治癒の魔法を掛けてくれるモノはいない様だ。

 そこで私とレファピテルは反対側から順に治癒の魔法を掛けていって、サバラン聖教国内での疫病は収束させた。


 私はみんなに内緒で、薬師(ファーマシスト)を出身地の近く、ケッゼンとその家来を大陸の方に連れて行こうと考えて捜索したが、誰一人として見付けられなかったよ。

 イファーセル国が連れ去ったとしか思えない。

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