131 ラムゼルに会う
ジャイアントスタッグビートルはビブラエスのダガーが神経に届いたのか、私たちがずっと放っている魔法が効いて来たのか少し苦しみだした。
そして目の色が黒から青になる。
「ビブラエス。目の色が変わったよ」
「判った」
ジャイアントスタッグビートルは角に魔力を溜めて、私たちに向けてそれを放った。
私たちは放った瞬間に空中に舞った。
今まで私たちが居たところに、大きなクレーターが出来ていた。
「レファピテル、間一髪だったね」
「危なかったですね」
ビブラエスも空に留まっていた。
「お疲れ」
「神経を切ったと思ったが、すまん」
「仕切り直しだよ」
ビブラエスのお陰で、ジャイアントスタッグビートルは飛べない見たいだった。
「飛べない様ですね」
レファピテルがそう言うと、アークシュリラがやって来た。
「ビブラエス、相手に飛び乗ったのはスゴかったよ。レファピテルもね、後は私に任せて」
そう言ってアークシュリラは腹側に潜って、本差しで柔らかい腹をえぐった。
ヴェルゼーアがやって来た。
「アークシュリラに後れを取ったな」
大量の体液がアークシュリラにかかり、ジャイアントスタッグビートルはしばらくして地面に伏した。
それでアークシュリラはその躰の下敷きになる。
「アークシュリラ!」
ヴェルゼーアがジャイアントスタッグビートル目掛けて飛んで行くと、横腹をダガーで切り裂いてアークシュリラが出て来る。
その足元には、ジャイアントスタッグビートルの魔石が転がっている。
「これで全てかなぁ」
「ジャイアントスタッグビートルとジャイアントライノビートルの気配はしませんね」
「ジョーヌミルパーツは」
「まだ、居るね」
「そうだな」
ヴェルゼーアとアークシュリラは駆けて行った。
「二匹ですから二人で良いでしょう」
「そうだな。私たちが行ってもやることがないな」
「戦ってると強力な魔法は使えないですよね。ゼファーブル」
「そんなことは無いけどね」
「魔物はどうする」
「街の復興のために使ってもらいましょうよ」
「アークシュリラは自分が倒した魔物の魔石だけは欲しいと思うよ」
「甲殻だけでも、結構な金額に成りますよ」
ジャイアントスタッグビートルもジョーヌミルパーツも甲殻は綺麗だ。
多分、ジャイアントライノビートルも綺麗だと思う。
「終わった様ですね」
二人が帰って来た。
「それじゃ、挨拶に行くか」
「そうですね。アークシュリラは……」
「どうしたの? ここに居るよ」
アークシュリラが聞いた。
「さっき体液を浴びてましたから、綺麗にする必要があると思ったのです。その必要はないですね」
「ベストの効果だよ。水中でも服は塗れないっていうのが役立ったよ」
みんな揃ってラムゼルの所へ行った。
「ラムゼル! どこに居るの?」
隠れているらしく見付からなかったので、私たちはラムゼルを捜索している。
「ラムゼル!」
野ウサギの様に、一人の女性が地面から顔を出した。
「居たぞ」
ビブラエスがそう言って、隠れる前に捕まえる。
私たちはラムゼルのそばに行った。
「手紙をもらって来ました。で、私たちはナニを助ければ良いのでしょう」
ヴェルゼーアが挨拶をした。
「スミマセン。私の街が魔物に襲われて。普段は勇ましい冒険者たちは全員逃げてしまい、手紙を書きました」
「ジャイアントスタッグビートルとジャイアントライノビートルですか?」
「えぇ、知っているのですか?」
「私たちで倒しました。でも、一匹ずつですか?」
「そうです」
「他には」
「他は居ません」
「では、責任者と一緒に来て下さい。他のモノにはまだ私たちが倒したことは内緒でお願いします」
ラムゼルは穴に戻って、男性を連れて来た。
「私は領主をしているアビレオンと言います。退治に来て頂いたと聞きました。お金でしたら支払いますので街を救って下さい」
「判りました。他のモノは付いて来ない様にして下さい」
そして、アビレオンは家来を呼んで命じた。
「儂はこの者たちと少し行って来るが、お前たちは付いて来ないで民を守れ。民も全員ここに残る様に」
「はっ」
「では、行きましょう」
街までの道すがら、ヴェルゼーアがアビレオンにいきさつを話した。
「そうですか、退治は終わったのですか」
「ラムゼルにも聞きましたが、ジョーヌミルパーツは居ませんでしたか」
「居ませんでした」
私は手紙のことなどをラムゼルに聞いたが、ナニも答えなかったし、私たちに質問もしてこなかった。
結局、ラムゼルは街に着くまで一言も発しなかったよ。
ヴェルゼーアたちの会話が聞こえているので、そばに居るレファピテルに聞いた。
「レファピテル。本当に残って居ないの?」
「もう残って居ません」
私たちは街に着いた。
「仕方ないことですが、随分と壊されてしまいました」
「そうですね。それで魔物はここと、あすこら辺にありますが、ここには商業ギルドはありますか」
「有ります」
「甲殻は傷つけない様に倒しましたので、魔物を売って復興に役立てて下さい」
「それではあなたがたの取り分が減りますよ」
「私たちも国などに属している慈善団体では無いので、お金は必要です。しかしこの様に使う目的が決まっている方から無理に頂きません。一日も早く復興させて下さい」
「うっぉぉぉぉぉぉ」
アビレオンはその場に崩れ落ちた。