130 街を壊したモノとの戦い
私たちはカヌーでモルロンへ向けて飛行をしている。
その道すがらにヴェルゼーアが留守にしていた時に起こった、アルニムラのことなども説明している。
「そうか、私が居ない間にそう言うことが有ったのか」
「そうだよ。でも、アルニムラは大人しくお酒や燻製を売っているって聞いているよ」
「そうだな。モルロンはアルニムラの住んでいる所から遠い。エザノーラたちが悪さをしているのでは無いと思うぞ」
「じゃナニ?」
「解らん」
ナン日か野宿をしてモルロンに着いた。
「これはヒドいな」
そこには街全体では無いモノの、三割程度が地震か戦争が有った見たいに建物だったモノが崩壊して瓦礫になっている。
「生存者はいるのか」
「ヴェルゼーア。落ち着いて下さい」
「そうだよ。ナニでこうなったかを調べないとダメだよ」
レファピテルとアークシュリラは大地に手を置いたり、建物や木々に触れたりして、その記憶を確認している。
二人は互いに顔を見合って、頷いた。
「分かりましたよ。これはジャイアントライノビートルの仕業ですね」
「違うよ、レファピテル。ジャイアントスタッグビートルだよ」
「こっちで確認してよ」
「確かにここはそうですね。じゃアークシュリラ、こっちは」
「ここはジャイアントライノビートルだね。それにジョーヌミルパーツも感じるよ」
「そうですね。これは今回なのか、以前なのか判別は難しいですね」
「判ったよ。カブトムシとクワガタにやられたと言うことだな。もしかすると黄色いムカデもいると云うことか」
「ビブラエス。昆虫名で言っても弱くは成らないよ」
「と言うことは、手紙の差出人は、どっかに避難しているのか」
レファピテルが杖を高々と掲げてから言った。
「遺体は無さそうですから、そうですね」
そして、アークシュリラとレファピテルは届いた手紙の文字の部分を何度も手で撫でてから、今度は二人して同じ方向を指さして言った。
「あすこだね」「この方角です」
「同じってことは、そこに居るんだね」
「今は魔物って、いないのか」
「これらの残骸の何処かに居ますよ」
「先に挨拶するか、とりあえず退治してからの二つだけど、どうする?」
「挨拶をしている間に、アイツらは逃げないか」
「じゃ、先に退治しようよ。逃げられると面倒だよ」
「そうだな。挨拶が数日くらい遅れても問題はないし、既に私たちがここに到着しているとは思っていないだろうな」
「アークシュリラはどれをやる」
「私はその三匹ならジョーヌミルパーツだね」
「ならば私はジャイアントライノビートルだ。三人でジャイアントスタッグビートルの相手をしてくれ」
「してくれって、その三人だとまともな武器もないよ。それに一遍に出て来るとも限らないでしょ」
そんなことを言っていると、瓦礫が崩れてくる。
今まで平気なモノが、ひとりでに崩れる訳はない。
「出た!」
私たちの匂いに気付いた、ジョーヌミルパーツが現れる。
「こいつが先に出て来るとは、ツイてないな」
直ぐに大きな羽音を立てて二匹の黒い物体がやって来た。
「じゃ頼んだぞ」
アークシュリラは既にジョーヌミルパーツとやり合っている。
ヴェルゼーアもそう言い残してジャイアントライノビートルに挑みだした。
「ヴェルゼーア、頼んだぞじゃないよ!」
「それでは、私たちも始めますか」
目の前にはジャイアントスタッグビートルが居るが、私たちよりジョーヌミルパーツが気になる様だ。
ジャイアントライノビートルやジャイアントスタッグビートルは、カブトムシやクワガタの巨大なモノだが、コイツの好物は樹液ではなくてセンチピードだ。
産卵期やセンチピードがいないと、ミルパーツも喰らうことがある。
私たちがナニも返事をしなかったので、レファピテルがもう一度言った。
「どう、しますか?」
「急所を刺せれば良い。レファピテル、支援してくれ」
「支援は構いませんが、ビブラエス、無茶はダメですよ」
そう言ってビブラエスは空に舞って、ジャイアントスタッグビートルの角による攻撃を躱しながらその背に乗った。
そして、ダガーを甲殻の隙間に刺す。
レファピテルと私は幾つかの魔法を放って、ビブラエスに集中出来ない様にしている。
ジャイアントスタッグビートルは、ジョーヌミルパーツより私たちの方に向き直った。
「私たちを敵と認識したようだね」
最初は挟もうとしていたが、私たちが小さすぎてそれは無理だった。
そこで、今度は大きな角を振り回して、私たちを攻撃してくる。
たまにそれを使い瓦礫を飛ばしても来る。
ビブラエスは、ジャイアントスタッグビートルの背中にいて、まだ頑張っている。
良く見えないが、腕がかなり奥まで埋まっているようだから、結構深くダガーが入っている感じがする。
隣で爆音がして、土が爆ぜた。
ジョーヌミルパーツが土を吐いた様だ。
向こうで羽音がして瓦礫が舞った。
「ヴェルゼーア。相手を飛ばさないでくれ」
ビブラエスがその風圧で飛ばされない様に、しっかりとしがみついて文句を言う。
「スマン」
ヴェルゼーアも空に舞って、ジャイアントライノビートルを追っている。
周辺には、大量の土ぼこりも舞っている。
私とレファピテルは相変わらず、火、土、氷の弾丸や刃とかの魔法を腹部目掛けて放ち続けている。