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12 村に到着する

 もう、このエラそうな人と話していてもラチが明かない。

 私は冒険者ギルドから帰ることにした。


「まて、受けさせないとは言ってないだろう。只、お前さんらの実力が判らんと……」

 ようやく偉そうな格好の人も、自分が言っていることに気付いた様だね。

 私がこのルージュミルパーツ退治を受託するために、わざわざテストなどを受けるのが面倒くさいと言っていることにね。

 それにテストを受けたら、私たちの実力も把握されてしまいそうだ。

 しかし、今このランクですって言っても、それは過去の実績で今時点の強さではない。

 ランクは上がりはするが、落ちることはないからね。

 だから足腰の悪いお年寄りや筋肉が弱って剣を振れない人が、若くて活きの良い冒険者よりランクが上と言うこともある。

 アークシュリラは素振りの速度など、日に日に強く成っていると私は思うよ。

 魔物討伐をしていないから、正確に評価されていないだけだ。


 私たちは冒険者ギルドを出て、帰ることにした。


「ゼファーブルさん、アークシュリラさん、待って下さい!」

 さっきの受付にいた人の声がする。


 私たちは止まって、声のした方を振り向く。

 そこには、受付の人が居た。

「ナニ? まだ、用があるの?」

「ゼファーブルさんとアークシュリラさんは、ギルマスがなんと言っても絶対に退治に行くのですよね」

「アークシュリラ。行くよね?」

「ゼファーブル、絶対に行くよ」

「本来ですと、この様に実力があるのにランキングされていない人の場合、ギルドの職員と試合をして仮のランクを与えてから依頼を受託して貰います。また、試合をするのがどうしても嫌な人も居ますが、その場合は初心者から地道に上がってもらいます」

「それで」

「今回は受託にランクの条件はないですから、テストを受けずに受託して下さい」

「また、私たちはギルドへ戻らないといけないの?」

「いいえ、処理しましたので、これをお返しします」


 受付の人は私たちのギルドカードを差し出した。

 カードを受付に忘れて来たことに、今更ながら気付いた。

 これで私たちがケチが付いたから、もう受けないと言ったらカードが無くても処理を取り消せるのかなぁ。

 まさか未達成とはしないよね。

 私もギルドを困らせて楽しんでいる訳ではないので、そんなことはしないよ。


「ありがとうね」

 私たちはカードを受け取った。


 ルージュミルパーツが出没している村は、私が想像していた村だった。

「このまま行こうか?」

「そうだね。わざわざ住み処(すみか)に戻る必要はないよね」

「アークシュリラ、私はどんな支援をすれば良いの」

「う~ん。もし、私がルージュミルパーツに食べられそうに成ったら、水でも掛けてくれれば良いよ」

「そんだけで良いの? 防御力向上の魔法とかはかけないで良いの?」

「出現しているのは一匹だよね。じゃ、二匹現れたらそれで、もし三匹以上だったら一匹ぐらい受け持って欲しいけどね」

「判ったよ」


「でも、アークシュリラはルージュミルパーツって見たことはないでしょ」

「うん、見たことはないよ」

「センチピードの大きいヤツだよ。ジャイアントセンチピードとは大きさ的には変わらないけど、大きな違いは火を吐くくらいかなぁ。もちろん名の通り赤い体をしているよ」

「火を吐くの? 遠隔攻撃をするんじゃ、ちょっと厄介だなぁ。でも、冒険って感じだね。ワクワクするよ。ゼファーブル、それと私はセンチピードやジャイアントセンチピードも見たことないよ」

 私が上手く説明出来ていなかったんだね。


「センチピードはムカデを大きくした魔物だよ。体長は1.5メートルぐらいかなぁ。それがいるだけでも一般的な住民にとっては充分に脅威になるけど、しかし、普通の冒険者ならやっつけられない敵ではないよ」

「そうなんだね」

「ジャイアントセンチピードは更に大きく、その体を覆っている外骨格は鎧の様に硬いんだよ。だから退治するにしても、あるていどのレベルにならないと難しいかなぁ」

「1.5メートル以上ね。判ったよ」


 そんなことを話していると、出没している村に到着した。

「それじゃ、村長に情報を聞くかなぁ」

「そうだね」

 村人にギルドから来たことをつげて、村長との面談を頼んだ。


 そしたら私たちは、一軒の家に連れていかれる。

「村長! 居るか? デモルトだ。ギルドからやっと来てくれたぞ」

 おもむろに扉が開き、若いほっそりした人が出て来る。


「私がここの村長をしていますベガトルと云います。それでは中にどうぞ」

 この人たちも大変なんだね。なんだか疲労感が漂っているよ。


「魔物が現れたのは、先ほど村に入って来たところから、更に奥にある林の方です。畑仕事をしているモノが数名ほど襲われました……」

「判りました。それで居たのは一匹だけなんですか」

 アークシュリラが村長に聞いた。

「判りませんが、現れるときは一匹です」

「ゼファーブル、複数が居るってことも考えた方が良さそうだね」

「そうだね。ところで村長、ルージュミルパーツを退治したら、それは要りますか、私たちで処分して良いですか」

「われわれでは使い道がないので処分して下さい」

「ありがと。もし村で使うと言われると綺麗に退治しないといけないので、ちょっと手間かと思ったから聞きました。そのお礼と云ってはナンですが、この薬を差し上げます。私たちが作った気力を回復する薬です。お疲れな様子なので、でも、私たちを信用出来ないとおっしゃるなら、服用せずに捨てて下さい」

 私たちは村長の家をでた。

 気力回復薬と言っても、もらった杖の性能を確認するために、アークシュリラが倒した動物の本来は捨てる臓物から私が作ったモノだ。

 それなので捨てられても構わないし、薬自体も普通に自然に還っていく。


「ゼファーブル、じゃ行こうか」

「そうだね。先ずは畑の方だね」

「林の中で火を吐かれたら、火事にならないの?」

「私が水を撒くし、枯れていない木は簡単に燃えないよ」

「じゃ、そっちは、おねがいね」

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