127 ベストを作る
私たちはビブラエスと分かれて歩いて居る。
「レファピテルってスゴいね」
「そうだね」
「あっ、レファピテルだよ」
私たちはレファピテルの所に行った。
「レファピテル。ビブラエスに教えてくれたんだね。ありがとう」
「えぇ、約束ですからね。ビブラエスから聞いたかも知れませんが、ヴェルゼーアには本の代金は返しておきましたよ」
「うん、大変だったね」
「僅かなお金で、ゴミをたくさん押し付けられましたよ」
レファピテルは笑って言った。
「レファピテル、これはどうかな」
アークシュリラが、私たちが帰り道で作っていたベストをアイテム袋から取りだした。
靴はやはり左右を操作するのが大変だったし、スカーフやペンダントなどだと使えない人が出てきそうだったのでこれになった。
「ベストですね」
レファピテルの顔色が変わった。
「普通のベストじゃないよ。判る?」
「はい。カヌーと同じ性能ですね」
「正解だけど、違うよ」
「そうですね。これは防寒も備わっていますか」
「そう。でも、耐熱もあるよ。それに水中や空気のないとこでも大丈夫だよ」
防寒は山越えで懲りたので直ぐに取り入れた。
ベストの処だけが防寒では仕方ないので、全身を空気の薄い膜で覆う仕様にしたら、耐熱と空気が無くても平気になったよ。
「スゴいですよ。この性能は」
「ヴェルゼーアに渡したら、ジャイアントヴェスペでも互角に戦えるよ。アノートギャスターだって平気かもね」
「そうですね。これを着用していれば、相手は空中に逃げられないですね」
「でも、水の抵抗は防げないから、水中での戦いは不利だね」
ドラゴンはブレスを吐くとアークシュリラが云うので、水と高低温を防げる様にしたよ。
しかし、姿を消すとか耐衝撃は、戦う上で反則と云うので外したよ。
「どういう頭脳をしているのですか。これでは転移と併用すれば、ビブラエスでなくても意図も簡単に侵入出来ますよ」
「対策は見付けることだね。消える機能は無いからね」
「空中もですよ。カヌーと同じならどんな高度も取れますよね。その上、どんな低温でも、空気が無くても平気……また、対応を考えないとダメですよ」
「飛行は耐衝撃が無いからカヌーを使った方が安全だよ。一着あげるから、ヴェルゼーアたちに聞いてよ。問題があれば改善するからね」
ヴェルゼーアやビブラエスがたまに空中に浮いて、様々な事をしている。
レファピテルはきちんと渡してくれたようだ。
「アークシュリラ。杖は成長したけどマントやローブは成長しないよね」
「そうだね。消えているから、着ているのを忘れるよね」
「どんな機能があるのかなぁ」
「ベストと同じかもよ」
「そうだね。でも、私たちが作ったベスト以上の効果は、考えられないよね」
まさか羽織るモノで相手を切るとかは有り得ないと思う。
続けて私がアークシュリラに聞いた。
「付けるとして、やっぱり耐衝撃と消える機能かなぁ」
「スピードや筋力アップかもね」
「そう言うことも有るね」
随分と時間が経ったころヴェルゼーアがやって来た。
「あのベストは良いモノだが、私たちは魔力の消費を抑えられたら嬉しいな」
「魔力だけで良いの」
「レファピテルが言って居たが、耐衝撃や消える機能はいらん。それでは戦う相手に対して失礼だ」
「アークシュリラも同じ様なことを言っていたよ」
実際にアークシュリラは、無敵状態だったら戦う意味はないよって言っていたけどね。
「そうだろうな。アークシュリラだって剣を持つモノだ。卑怯な手を使ってまで勝とうとはしないだろう」
そんなモノかなぁ。でも、アークシュリラは神様からもらった技を使ったりマントを付けたりしているけどね。
「判ったよ。消費はどの位抑えればいいの」
「2割と云いたいが1割でいい」
「それじゃ変わらないよ。ビブラエスも転移魔法を使うんでしょ。いざという時に魔力切れじゃ仕方がないよ。だから、逆に1割だけ消費するでも良い」
「それもそうだな。じゃゼファーブルとアークシュリラが作り易い方で構わない」
「ありがとう。後で追加をするのは面倒だから、一応いろんな機能は入れておくよ」
「そうか」
「使う使わないは各自の自由だよ。着たらいつでも空に浮いてたら迷惑だよね」
「そう言うことか、自分で選択出来るのだな」
「でも、魔力の消費と耐熱、耐寒、そして空気が無くてもは常時発動だよ」
「そうか判った。あとあまりレファピテルをいじめないでくれ」
「イジメてないよ」
「このベストの件で、遅くまで防御の魔法陣を作って居る」
「そう。じゃ、一緒に作ろうって伝えてよ。ここにも魔法陣を設置する必要性が有るかも知れないからね」
「そうか。三人でやれば一人で悩むこともアドバイス出来るな」
「それで色や形などは」
「考えていない」
「じゃ、三人で決めてよ。役割が違うから別々でも良いからね。私とアークシュリラだって、違うモノになるよ」
「判った」
「先ずは私たちのを作って居るから、後で連絡してね」
私とアークシュリラはその後、二人で考えられる機能を盛り込んだベストの製作に入った。
「思いつく限り盛り込んじゃおうよ」
「こんな機能を入れたらだめですよ」
「レファピテル。必要最低限でも良いけど、私たち三人が考え得る機能を入れようよ。そして対策を考えた方が一度で済むよ」
「そう言う考えもありますね。今は導入を見合わせても、近日中にどうせ追加するのならそうですね」
完成したモノはレファピテルらに渡した試作を、圧倒的に凌駕するモノになったよ。
レファピテルも製作に携わっているから、その機能を知って卒倒しそうだった。