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126 ファリチスに帰る

 私たちは街にある市場や商店街とかを見て廻ることにした。

「ここが(れん)ナンだね。麺料理の材料とか器具も売っているよ」

「そうだね。確かに距離は近いけど、行き来するには遠いね」

「西方に作った拠点からでも、山脈を越えることに成るよね」

「随分と遠くの方まで山脈が続いていたから、そうなるよね」

「それで、私たちの暮らしているところと、こんなにも違う食材が有るんだね」

「同じモノでも、料理方法が違うよね」

 私たちでは焼くモノでも、ここでは炒めているとかの違いがある。


「魔物は居そうにないね」

「人々は平和に暮らしているから、見た目では判らないね」

「判ったから帰ろうか」

「そうだね」


 私たちは街を出て、カヌーで東に進んだ。


「ここが私が違う大陸から、最初に着いた港だよ」

「ここが」

「でも、珍しい食材も面白い風景もナニもなかったよ」

 私たちは、着陸しないで、そこを通り過ぎた。

 そして海岸線添いに進むのではなく、南へ進路を変えた。


「この半島にあるモノは、だいたい判ったね」

「そうだね」

「ゼファーブルは違う大陸で、ドラゴンに会ったことはあるの」

「居るらしいけど、ないよ。会いたいの」

「うん、会いたいな。神様がドラゴンでは無理って言っていたからね」

「ドラゴンも飛ぶよ。私たちは飛ぶ相手には全然ダメだよね」

「そうなんだよ。カヌーじゃ戦いにくいし、そこがナンとかなれば良いけどね」

「靴をカヌーと同じ様にしたら、どう」

「靴か。それも手だね。でも、左右を操作しながら戦うのは大変だよ。出来たら羽織るモノの方が良いね」

 カヌーで出来ているから、直ぐにでも作れそうだ。


 しばらく飛んでいるとアークシュリラが言った。

「ここで初めてゼファーブルに会ったんだよね。どうして私が出現したのが草原だったんだろう」

 私は答えが見つけられないでいた。


 アークシュリラがこんなに強くなるなら、出会うのは私でなくてもいい。

 ハルメニアでレファピテルに会っても、たいして変わらないような気がする。

 イヤ、アークシュリラと会っていれば、ヴェルゼーアも国王から逃げ廻ることはなかったと思う。

 それは、国王の暗殺は成功しただろうからね。


 でも、アークシュリラは私と出会った。

 アークシュリラだって、あの時は私以外にも野宿をしていたモノは大勢いたのだから、私以外に声をかけてもよい。

 しかし、私に声をかけた。

 それって「あのモノに声を掛けろ」って神の声がしたのかなぁ。

 その結果、私たちに係わったモノたちで、死んだモノは一人しかいない。


 私とアークシュリラが一緒だと、この星の人々が一番死ぬことが、少なく済んだと云うことなのかなぁ。

 神さま、そう言うことですか? と心の中で言ったが、答えは返ってこない。


「もう直ぐファリチスだね」

 私たちは昼夜構わず、一日中飛行していた訳ではない。

 当然、食事や睡眠などで着陸も何度かした。

 その時に、カヌー以外の方法で空を飛ぶモノを、イロイロと試作もした。


 私たちは、ようやくファリチスに戻って来た。

 ここに家を建ててから、始めて何ヶ月もの間に亘って留守にした。

 街の雰囲気は、畑が出来たり牛を飼い出したりして多少変わっている。

 水車小屋も移動した様だね。


 ビブラエスがやって来た。

「二人とも、長かったな」

「どうしたの」

「お礼を言いに来た」

「お礼? 今回はナニも買ってきてないよ」

「違う。魔法だ。転移する魔法は便利で良い。本当に発見してくれてありがとう」

「じゃ、ビブラエスも使えるの?」

「あぁ、レファピテルには随分と迷惑を掛けたが使える様になった」

「あんたが使えると危険過ぎるでしょ」

「白く光るから平気だ」

「白く光っても近くに行ければ、どんな鍵や罠を仕掛けても無意味じゃないの? 国王の城だって中へ転移することが出来るよね」

「出来るが、それとこれは話が違うぞ」

「同じだよ」


「まぁ、レファピテルが転移させない魔法陣を作って設置したから、もう他の国のモノだと転移では行けないけどな」

「そうだよね。ビブラエスたちが教わって出来たのなら、時間が経てば他国のモノでも転移出来る様になるよね。設置は当然だよ」

「その設置もレファピテルが奥の院に私たちは転移魔法を見付けたから、私が侵入をするのを防いでみろと挑戦したんだ」

「相手は転移魔法を知らないから防ぎようはないよね」

「イヤ、魔法の解説書を送ったから詳細も把握して居る。それで私が侵入するのを国王が三カ月後と決めた」


「それで相手になる奥の院って、ガムデバズラが居るところ」

「知っているか」

「名前はね」

「そうだが、防御しか出来ないレファピテルごときと甘く見たんだろうな。三カ月後に国王の寝所や奥の院にも私は簡単に侵入出来たよ」

「ガムデバズラってスゴくないの?」

「違う。さっきも言った様に我々をナメていたんだな。国王も怒って、高い予算を取っている奥の院の廃止も検討しそうだったよ」

「それで」

「レファピテルが存続を願い出たんだ。まぁ、国に取って魔法使いの集団は便利だし、必要だからな。それでレファピテルに奥の院に出ている予算の25パーセントを、奥の院が支払って防御装置を設置することになった訳だな」

「それって」

「ミスリル貨で数枚だ」

 本の代金より高いね。


「そんなことがあったの」

「そして、レファピテルはガムデバズラが亡くなったら、研究していた全ての書類なとを引き継ぐ資格も手に入れたぞ」

 そう言ってビブラエスと別れた。

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