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121 戦いが終わって

 アークシュリラが二人のエザノーラたちと戦い終わると、その音を聞きつけた様に奥から声がした。


「何事だ!」

 ナンか偉そうなのが自分から出て来てくれた。

 そして縛り上げられているモノを見て、剣を抜いてアークシュリラ目掛けて振り上げた。

 こっちを向いたまま、アークシュリラは相手の剣を本差しで受ける。


「卑怯者! 正々堂々と戦えないの! でも、さっきの二人より強いことは認めてあげるよ」

「なにを、小癪な!」

 アークシュリラは楽しそうだ。

 これでは、私たちがやることがない。


「ビブラエス、捕らわれた人々はドコに居るの?」

「多分、棟の上だ」

「レファピテル。私たちだけで先に救出する? それともこの戦いを見てる?」

「ゼファーブル、アークシュリラの支援は?」

「アークシュリラが笑っているから平気だよ。ジャイアントヴェスペの時みたいに真顔じゃないし、アノートギャスターを見に行った時とも違うよね」

「そうですね。戦っているよりか子供と遊んでいる感じで、楽しんでいますね。しかし、一人だけ残したら可哀想ですよ」


「強かったけど、単調過ぎてあきてきたから終わりにするよ」

「ナンだと」

 アークシュリラが峰打ちでアルニムラを黙らせた。


「終わったけど」

 私はアイテム袋から解けにくいロープを取り出して、もう一度三人を縛り上げる。


「じゃ、救出だね」

「次はビブラエスの出番だよ」

 ビブラエスは全ての部屋の鍵を意図も簡単に開けて、確実に証文などを奪っている。

 さすがに忍び込んだ時に、調査済みなことはあるね。

 難なく連れ去られていた人々を救出した。


「数は合ってるの」

「合いますね」

「証文とも一緒だ。で、どうする」

 ビブラエスは連れ去られた所まで輸送するか、このまま自分で帰ってもらうかを聞いているようだ。


「ビブラエスかレファピテルが各街まで行って、馬車で来てもらうように依頼して来てよ。残った方とアークシュリラが話し相手になってね。私は下の三人の性根を叩き直してくるからね」

「でしたら、その三人に各街に戻してもらった方が良いですね。そうすれば少しは心を入れ替えたって思われますよ」


「じゃ、みんなで行こうか」

 縛り上げられているモノの所に戻ってきた。

 そして縛られている三人が見える位置に、私たちが並んだ。

 意識を失っている三人に気付けをして、意識を戻させた。


威風(マジャステート)! これで私たちを恐れて悪さは出来ないよ。あんたらが連れて来た人々を各街に行ってきちんと謝罪して返してきてね。それともう二度と他の生き物に迷惑を掛けちゃダメだよ」

「……」

「返事は!」

「分かりました」


「あんたらは共通語を話せる様だけど、もし、人を喰らう必要が有るのならば、同じ亜人で牛の頭をしたミノタウロスみたいに、人々が生活している処から離れて暮らすことだね。もちろん、勝手につれ去ったら退治をされるから、近くにある街の人たちと相談してよ。人だって他の生き物もたべているけど、その多くは自分たちで飼育しているモノだよ。でも、人は大人になるまで二十年近くかかるから、出来れば他の生き物が飼育には向いているよ」

「検討します」


「後ろに居る人々を、元々住んで居た街まで送ってあげてね。そして、最後にファリチスにルーデルンを連れてくるように」

「はい」

「じゃ、どこの街に誰が行くかの分担は、あんたらで決めて良いよ。私たちは先に街に行って、あんたらが来ることを知らせて来るからね」

「お願いします」

「みんなも帰りにナンかされたら、私たちはファリチスに居るから伝えに来てよ。もし、連絡があったら今度はこのくらいで済まないからね」


 ビブラエスとレファピテルは、各街にエザノーラが連れ去ったモノを返しに来ることを伝えに行った。

 その際に戦わないとかいじめないようにとも伝えたよ。


 私とアークシュリラの二人で、ファリチスに向けて飛行している。

「また、強くなった?」

「ジャイアントヴェスペの時は手こずったし、アノートギャスターが相手ではまだ無理だから訓練しているよ。今回はオオカミだったけど、犬の頭をしたコボルトの親分みたいなモンでしょ」

「そう」

 たまに素振りをしているのを見るけど、確実に強くなってる。


「ゼファーブルも、強力な魔法を使える様になってるよね」

「私は杖のお陰かなぁ」


 ファリチスに戻るとエルセントがやって来た。

「終わったけど、ルーデルンが帰って来るのは当分先だね。戻って来たら連れて行くけど、いつもドコに居るの」

「野宿をしてます」

「そうなの」

 老人と言えども男性を家に泊めることは出来ない。諦めてもらおう。

「それと、今後はいくら貴族が声を掛けても、調べもせずに行っちゃダメだよ」

「今回のことで懲りました」

 貴族によってはそれを許さないモノもいるけど、旅をしている吟遊詩人なら逃げることも出来る。

 余りにも有名で、どこに行くとか来ることが先に知られていると、ダメだけどね。


 数日して、レファピテルとビブラエスが戻って来た。

「各街はどんな感じだった」

「返してくれれば、あの場所に居ても良いと言ってましたね。お互いに話し合えば良い結果になると思いますよ」

「アークシュリラはバケモノか」

「ナンデよ!」

「エザノーラ二人が相手でも、余裕だったからだ」

「ビブラエスが言うほど、あのモノは強くなかったよ」

「そうか、私たちと……イヤ、ヴェルゼーアと戦った時も強かったが、今は更に強くなっているな」

「ヴェルゼーアだって強くなっているよ。ジャイアントヴェスペの時も、一緒に戦ったから判るよ」

「そうですよ、ビブラエス。アークシュリラだけが強くなっている訳ではないですね。ヴェルゼーアだってガンバっていますよ」

「そうだな」

 それは単に負け惜しみではなく、ヴェルゼーアのガンバりを一番近くで見てきた二人の思いの様な気がした。

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