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117 ルルグスがやって来る

 また穏やかな日々が続いている。

 私はどうしても政治や宗教絡みの案件は、好きになれない。

 それは、人間が生きていく上で最低限のマナー、他の人に迷惑を掛けないすら守られていないからね。

 自分たちの言い分を通すために、他の人の迷惑は無視される。

 それが本当に多数の意見なら諦めも付くが、自分たちの利益のために少数の意見を多数と言う場合もある。

 賛成派が多い所で数をかぞえたり、質問で上手く誘導したりしてね。


 イールグッドも人間としてはいいヤツかも知れないけど……風の噂で発病後に誰かに殺されたと聞いた。

 多分、知っていることを話されると困る連中が、やったことだろう。

 発病中は喋れなくなるのにね。


 アークシュリラにその話をしても、特に怒るでも悲しむでもなく淡々としていた。

 ヴェルゼーアたちも同様だろう。

 それが大人なんだろうね。

 そう言っても、私も犯人を見付けて処罰をしたい訳ではない。


 レファピテルがやって来た。

「ゼファーブル。少し来て下さい」

「どうしたの」

「ルルグスが事件を持って来たらしいのですが……」

 私が必要だと言うことは病気かなぁ。


 ルルグスがビブラエスやアークシュリラに、身振り手振りを交えてナニかを話している。


「ゼファーブル、来たか。ルルグスを落ち着かせてくれ、これでは話を聞くことも出来ない」

「判ったよ。ルルグス、これを舐めてね」

 アイテム袋から一粒の実をルルグスに与えた。

 ルルグスは、それを舐め出すと次第に感情の高まりが収まっていった。


「ルルグス、村でナニがあったの」

「村に騎士の幽霊が出る様になったんだよ」

「そいつは悪さをしているの」

「夜に動き回って、朝にはいなくなるだけだよ。でも、気味が悪いよ」

「その幽霊って人魂に導かれているんじゃないの」

「そうだよ。知っているの?」

「アークシュリラ。知っているか」

「知っているもナニも、私たちがここに住む切っ掛けだよ」


 アークシュリラは事件のあらましを説明した。


「判った。それでは今回は何と戦っている?」

「知らないよ」

「犯人が判っているのに、調べないといけないのですね」

「そうだな。今から行くか」

「そうですね。ヴェルゼーアは居ませんが、私たちで大丈夫でしょう」

 カヌーを使えば一時間も掛からないが、ルルグスは乗せられない。

 一人ぼっちで村まで帰す訳にも行かないので、久しぶりに馬で行くことにした。


「それにしても懲りない連中だよね」

「何処から騎士を調達したかも気になりますね」

 北方の住み処は墓地は無かった。

 そうなると答えは一つしかない。


 エルドマに着いて、村長に挨拶をしてから周囲の捜索に出掛けた。


「その幽霊ですが、エマルダから来ているのでしょうか」

「アンデッドが移動するには、遠いよね」

「そんなに強力な魔法を使えるならば、直接的に闇系統の魔法を使った方が良いですよ」

「そうなんだよね。その点だけが、納得出来ないよ」


 アンデッドを操るには、遠くなればなる程魔力の消費が多くなる。

 なので、近くにある墓地から連れて来た方が楽だ。

 この周辺には墓地はあるが、戦士は眠っていないと聞いた。

 その全てが庶民だとね。


 私たちは、夜に成ってアンデッドが出るのを待っている。

「そろそろやってくる時間だね」

「来たみたいですよ」

 エマルダで見たモノと同じで、人魂に先導された5人の騎士の幽霊が通り過ぎた。


「村から出て行きましたが、ドコへ行くのでしょう」

「あっちはナニもない平原だぞ」

「そうだね。あすこには魔物も居ないよね」

 いくら話しても結論は出ない。

 私たちは人魂の火を目印に騎士の幽霊を追った。

 人魂は平原の一カ所で動かなくなる。


「誰か来たぞ、ランタンのブラインドを落とせ」

 ビブラエスがそう言ったので、全員はランタンのブラインドを下ろして明かりが漏れない様にした。


「月明かりでこの距離だと辛いが、ナンとか口元は判る」

 ビブラエスが神経を集中して読解をしているが、私にはナニも分からない。


 ビブラエスは時々頷いては、再度見つめている。


「終わったぞ」

 ビブラエスはささやき、騎士の幽霊や来たモノもそれぞれが来た方角に戻って行った。


「誰がどれを追うの」

「その必要は有りませんよ。あんな魔力を一カ所で長い時間を使って居たのですから居所は判ります」

「じゃ、ビブラエスから判った事を話してね」


「アンデッドはあの神官にウィシュヴァハと言う神器を探す様に命じられていたぞ。ウィシュヴァハがどの様なモノかは判らなかった」

「では、神官が居たところに行きましょう」

 レファピテルが土の中に残る魔力を集めて、空中に撒いた。

「神官の居所は、ここから近くですね。アンデッドは少し遠くですが、エマルダではありません。どっちから行きますか」

 アークシュリラみたいに、撒いたモノを持ち物で突かないんだね。


「近くの方と言いたいが、アンデッドだね。ルルグスにはアンデッド退治を依頼されたからね」

「判りました。それではカヌーで行きましょう」


 私たちはレファピテルの案内で、アンデッドの住み処にやって来た。

 自分たちで土を掛けたのか、眠りに就くと独りでに土が覆うのか判らないが、そこは綺麗になっている。

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