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116 ウィスキーを飲む

 サバラン聖教国内にいるモノのほとんどが罹患したことを、上空から確認した私たちはファリチスへ戻ることにした。

 いくら解毒剤が有っても、私が治療をする訳ではない。

 なので、ここで見ていても仕方がないし、その上、発病したモノが周辺にはいないが余り気分の良い状態ではないからね。


「ヴェルゼーア、このカヌーだったら急いで行けば、ファリチスからハルメニア王国まで一週間も掛からないよ」

「そうだな。とても便利だ」

 一週間と言ったが、もっとスピードを出せば日数は短縮出来る。

 しかし、鳥などが顔にぶつかると事故になるよ。


 私たちはファリチスに戻って、のんびりと暮らしている。

 魔法使いが今度は北方へ行っている。

 サバラン聖教国での治療でひと稼ぎしようと思っているモノだろう。

 しかし、今頃行っても話せるモノはサバラン聖教国には居ないだろうね。

 だから支払いの交渉は無理だと思うよ。


「ゼファーブル。三年くらい経ったからあの蒸留酒を飲んで見ようよ」

「そうだね、アークシュリラ。ちょうど良いよね」

 直ぐにヴェルゼーアたちと試飲をする事になった。


「もう三年か、月日が過ぎるのは早いな」

「イロイロ有りましたよ」

「そうだね」

 アークシュリラが一人ひとりにグラスを渡して、それに注いだ。


「乾杯は変だけど、ヴェルゼーアが発声して」

「みんなの健康とこの地の平和のために、アクラメイション!!」

「アクラメイション!!」

 ヴェルゼーアのかけ声のあとに全員が続けた。


「薫りが素晴らしいですね」

「これは樽の匂いだね」

「酒を入れる前に樽を焼いたのが、この色にも成っているのだな」

「そう、色付けと薫り付けを兼ねているよ。それに樽にする木の種類によっても味が変わるよ」

「しかし、これでは食事中に飲むにはキツいな」

「水などで薄めても良いよ。チーズなどの濃い味や乾燥させた種や豆類だったらそのままでも大丈夫だと思うけどね」

「ヴェルゼーア、両親に持って行ってやれ。領主を降りたお祝いにな」

「良いですね。国王には別に船で送れば良いですから、数本で足りるでしょう」

「アークシュリラ。これは5年10年と長い時間を掛ければ、味が変わるよな」

「当然のこと変わっていくよ。でも、30年以上は時間と売値の関係で作っても無駄だよ。樽の中でも自然と蒸発するしね」


 それから数日して、ヴェルゼーアはハルメニア王国に出発した。

 それと前後して船便も出航していった。

 当然のこと、ファリチスで暮らす全員に配って各自で飲んでもらった。

 そして、お店でも呑める様に成っているよ。


 私はエマルダのダルフさんの処へ行った。


「変なん病気が流行ってるって聞いたから、解毒剤をあげるよ」

「お前はどうして、そこまでやるんだ」

「私の剣をメンテナンスしてくれる人が病気になったら、大変でしょ」

「そうか」

 納得してないね。

 でも、さすがに私たちが撒いたとは言えないから、これで納得してもらう。


「でも、流行ってるのはすごく遠いぞ」

「病気は風によって運ばれるからね。人では遠くても案外と近くで発生しているかも知れないよ。ダルフさんと(おさ)、それに信頼出来るモノに瓶を預けて、発病したら一日一錠を飲ませてよ。噂では発病したら自分で飲めないからね。もし、私の処へ来られるなら治療に来るから呼んで欲しいけどね」

「判った」

 そしてダルフさんに5つの瓶を渡した。


 ダルフさんの方が終わったから、後は平気かなぁ。

 あすこは大風で菌が来る可能性が有るからね。

 私はファリチスに戻ることにした。


「アークシュリラ、このカヌーってレファピテルたちが作ったら出来ると思う?」

「性能は悪いけど作れると思うよ」

「じゃ、ドコまで作れるか作ってもらおうよ」

「そうだね。どうせ他の国とかにも真似されるよね。だったら作り方を知っていてもどこまで作れるか調べても良いね」


 レファピテルを捕まえて、カヌーの作り方を教えた。

 そしてカヌー作りをしてもらう。

 その作業中は付ききりでアドバイスはしたが、手出しは一切していない。

 イロイロとレファピテルは試行錯誤して、ようやく完成させた。

 一人で作ったから、二週間掛かったよ。


「出来ましたよ」

「どんな感じ?」

「速度は馬より速い程度ですね。連続飛行も一時間が限界で、その後は魔力を補充しないと成らないです」

「カヌーに補充するの?」

「違います。自分にですよ」

「レファピテルでもこれが限界なら、他の人ではもっと質の悪いモノしか造れないね」

「そうですね。アークシュリラやゼファーブルのスゴさを再認識しましたよ」

「そんなにスゴくはないけど、このカヌーはどうするの?」

「魔力の少ないモノでは扱えませんから、放置しても問題はないです。しかし、盗って下さいと言わんばかりなのも気になりますから、燃やしましょう」

 レファピテルの判断で、カヌーは燃やされた。

 私からはとてもじゃないが、わざわざ作ったモノを燃やそうとは言えないよ。


 それからレファピテルやビブラエスなどは、自分のカヌーと判るマークを入れたり、色を変えたりしてカスタマイズして楽しんでいた。


 ビブラエスが、サバラン聖教国上空から見て戻って来た。


「ゼファーブル。サバラン聖教国はもう既に国として機能していないし、イファーセル国も疫病になるのを恐れて戦争をやめたと宣言したぞ」

 疫病の蔓延している所を攻め取っても嬉しくない。

 兵士を進軍させて罹患したら、国民から文句を云われるからね。

 これが独裁体制や専制体制なら力ずくで黙らせるかも知れないけど……イファーセル国は一応民主的な国だからね。

 それは出来ないよね。


 私もサバラン聖教国へは何回も行っている。

 それは、あの薬が人間以外の生き物にどう云った影響をしているか調査して、人間以外には影響がないことを確認したよ。

 私じゃ見えない処も有るので、杖の力でも疫病の状況は調べてみたから大丈夫だろう。

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