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112 疫病の調査に出向く

 しばらくして選挙に関する法律が正式に発布され、ヴェルゼーアや大公のヴェルズンたちの新居も無事に決まった。

 それでヴェルズンたちは、城内にあるモノの整理のために忙しそうだった。

 それは国王からファンセン家に代々預けられているモノを返したり、新領主が使っても問題のないモノに変えたりしていたからね。


 ヴェルゼーアは、個人的なモノは余りないと言っていたが、幼少期の品々が結構あった。

 それらの整理をしているうちに、月日は過ぎていった。

 もちろんビブラエスはとっくに戻って着ているが、ヴェルゼーアたちは疫病で生き物たちが死ぬことが無いので放置している感じだ。


 とうとう法律が施行されて、第一回の領主と議会の選挙が公示された。


「誰が立候補をするのでしょうか?」

「誰でも良いが、定員には達して欲しいな」

「ヴェルゼーアたちは立候補しないの?」

「私たちは立候補はしないぞ」

「そう。ならば引っ越しの方はだいたい整理もついたから、ビブラエスの見て来た方をやろうか?」

「そうだな。もう我々が、この選挙では係わることは無いからな」


 ビブラエスの話では、疫病に罹ったモノのうち何名かが、夢遊病の様に徘徊をし出しているそうだ。

「ゼファーブル。この薬は罹り憎くするが、病を治すことは出来ないのか?」

「それはあの疫病に特化したモノじゃないから、治らないよ。病気の原因が特定出来ないことには、治療薬は無理だね」

「でしたら私が行って、罹患しているモノに治癒の魔法を使いましょうか」

「治癒の魔法なら私も使えるよ。ビブラエスの話ではたくさんの魔法使いが来て治癒をしているのでしょう」

「そうだ。でも、病人の足元を見て、お金にならないモノは後回しにしている」

 死ぬことが無いのなら、順番は支払いの多い少ないでも良い。死ぬなら病の重い軽いだけどね。

「レファピテル。行って無料で治癒をしたら、その魔法使いたちが黙っていないだろう。なんせ確実に利益のでる商売だからな」

「悲しいですが、そうですね」


 レファピテルの言いたいことは判る。私も治癒魔法を使って患者からお金を巻き上げるのは違うと思うからね。

 そんな考えでは、甘いと云われても仕方がない。


「ゼファーブル。原因が特定出来れば薬を作れるの?」

「アークシュリラ。絶対にとは云えないけど、作れると思うよ」

「じゃ、調査に早く行こうよ。ヴェルゼーアたちには悪いけど、選挙の結果に興味は無いしね」

「そうか。でも、我々は誰が新領主になるか見極める必要がある」

「違いますよ、ヴェルゼーア。引き継ぎに大公どの一人では大変ですから、我々が手伝う必要があります」

「判ったよ。来れたら来てね。無理なら仕方がないよ」

「ゼファーブルはこの調査に、どのくらい係ると思っている」

「そうだね。一ヶ月くらいかな。発生の原因が近くに有ればそんなに係らないかな」

「判った。一ヶ月だな」

「投票日から数えると我々の方が、長くなりそうですね」

「自分の国だから気の済むまで居た方が安心だよね。もし、来られなくても恨まないよ」

「そう言ってくれると助かる」


 私たちはヴェルゼーアたちと別れて、空飛ぶカヌーに乗船しエバマ大河の周辺にやって来た。

「結構、徘徊をしているモノが多いね。魔法使いはナニをしているのかなぁ」

「アークシュリラ。ここから見ると、もう魔法使いはほとんど残って居ないね。ただ治癒の魔法を使ってるだけで原因を無くしてないから、二、三回罹ったらお金を支払うのがばかばかしくなるよ」

「そうだね。それとこれじゃ宿屋もやってないだろうね。で、原因はナンだろう」

「周囲を見てみようよ。ここだけか、上、下流も同じかをね」


 私たちは再びカヌーを上流域に進めた。

 陸地には夢遊病のモノが居る。しかし、私たちが空を飛んでいても気にするモノは少ないと判断して、ゆっくりと周囲を見て回るコトにした。

 2、3日ばかり飛んで来たら、もうここでは普通に生活をしている人々が結構現れた。

 それから更に上流域を一週間掛けて見回った。


「上流はあの街から少しの処だけだね。やはり、ここら辺はナンともないね」

「今度は下流域だね」

「そうだね」

 下流域も同様に調査をした結果、同じ様な状態だった。


「ゼファーブル。疫病は、あの辺りだけだね」

「だったら一ヶ月なんか掛からないよ」

 私たちは再び疫病が流行っている所に戻って、街に入った。

 以前の賑わいがウソの様に、人々がゾンビの様に徘徊をしている。


 ヴェルゼーアが居れば、(おさ)に話をすることも出来るけど……黙って処理をするのは、人数的に云ってやはり手間だ。

 私たちは、ダメ元で(おさ)の家を訪ねることにした。


「スミマセン! (おさ)の家と聞いて来たモノですが、誰かいませんか?」

 家の中から一人の少年が出てくる。


「ここには今はボクしか居ないよ。父や母は……」

 少年は泣き出してしまった。

「私たちは疫病を治しに来たんじゃないよ。終わらせに来たんだよ。だから両親に合わせて」

 少年は見せても良いのか迷っていたが、ゆっくりとしゃべり出した。

「見せても良いけど、見たことは秘密にしてくれる?」

「約束するよ。私はゼファーブルと云う錬金術師(アルケミスト)だよ」

「ボクはサルーザ。じゃ付いてきて」

 サルーザが、どう考えたのか判らないが、私たちはサルーザの両親に会えることになった。

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