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111 大公との話し合い

 私たちが城に戻ると、ヴェルゼーアは既に城に戻ってきていた。

 ヴェルゼーアから大公と話し合いをする日取り、レファピテルがさっき話し合いでまとめた選挙のことをお互いに伝えあった。


「ところで、ヴェルゼーアの親ってまだ大公って呼ばれているの? 貴族制で無いのなら大公って呼び方はおかしいよね」

「父の大公は大きなとか偉大な公爵と云う意味の大公ではなく、国王を補佐する役職の一つだ」

「アークシュリラ。呼び方は国によって丞相とか摂政などと異なりますが、他の国では宰相に当たる単なる官職名ですよ」

「そうなんだ。私はてっきり偉大な公爵だと思ってたよ」

「呼び方を変えてもやるべき仕事は変わりは無いが、名称を変えると法律や官印である印璽などを変えることになる。その手間と費用が無駄だから変更していない訳だ」


「そうだったんだね。で、大公に会うのは、明後日の昼にみんなで良いんだよね」

「これを話すのだな。これなら父も次を選ばなくて済むが、決まった領主が議会と共謀して悪いことをしても平気だな」

「そう言えばそうですね。相互に辞めさせる権限はありますが、共謀するのなら相互チェックは意味がないでしょうね」

「ナンなら、全住民の三分の一くらいの署名で再選挙をすれば良いかもよ」

「アークシュリラ。三分の一でなく、やはり過半数は欲しいな」

「人数などはここでヴェルゼーアたちと決めても良いけど、大公に決めて欲しいな。でも、その数が余りにも不可能な数字で無ければ良いよ」


「そうですね。私たちが全て作って承認して貰うので無くて、少々不具合を残して置いて大公自身に修正して貰えれば……そう、これをたたき台として、絡んでくれた方が良いですね」


 ヴェルゼーアもこの地を良くするために、どう云った方法があるのかを打ち合わせまでの間にイロイロと考えることになった。

 アークシュリラと私は、ここまで作ったのだから出たとこ勝負で行くことにした。


 大公と打ち合わせの日になった。

 私たちはヴェルゼーアと一緒に会場である、城の応接室に向かった。

 大公は既に部屋にいて、ヴェルゼーアが相方を紹介した。

 名前は双方ともに知らないが、戦争の際に捕縛したから顔は知っている。


「互いに忙しい身で有るので、無駄な話をする時間はもったいないので本題に入ります。ヴェルズンどのは領主を辞める気持ちが本当に有りますか? 辞めても影響力を残そうと思ってますか?」

「そうじゃな。誰一人として意見を聞きに来ないと云うのも、ワシとしては寂しいな」

「それは必要性がないと言うことですよ。今まで全て国王に相談したり、許可を取ったりしていた訳ではないですよね」

「そうだが、長い間やって来たことを否定されている感じがする」


 やはり、ヴェルズンは領主で無くなっても、この地で影響力を持ち続けたいんだな。それで、後継者は自分の意のままになるモノを選んでいるんだね。

 これじゃ、時間がかかるよね。


「もし、ヴェルゼーアが後継者に成っても、ヴェルズンどのにいちいち意見を求めるとは限りませんよ」

「ヴェルゼーア、そうなのか?」

「父上、全てのことを聞くことはないですね。また、父上の時代になかったことは、相談すらしないでしょう」

「そうか、判った」

 ヴェルズンは寂しげに言い切った。


「それでヴェルズンどのの思いと異なるかも知れませんが、これが新しい領主を選ぶ方法です」

 私がそう言うと、レファピテルはみんなで話し合ったメモをキチンと清書してヴェルズンに渡した。


「そうか」

 ヴェルズンはその文章を読み、疑問点がでる度に私たちに聞いてきた。

 アークシュリラが選挙についての解説をして、レファピテルが法律との齟齬などを説明した。


「ヴェルゼーア。これでは庶民から領主になるモノもいるのか」

「父上、我が家も、貴族ではなく庶民ですよ」

「そうだったな。領主と議会が相互に緊張感を持って、良い政治をやってくれれば良いな」

「裁判所に違憲性をチェックさせられると良いですが」

 私たちでは良い方法が見つからなかったので、ヴェルズンに良い手段がないかと云う感じでアークシュリラが言った。


 ヴェルズンは少し考えてからしゃべり出した。

「裁判所では無く、議会が違憲性の法律を作らないか、領主が法律に則ってやっているかをチェックする機関を設置すれば良いのでは……」

 私たちが作って来た選挙についてのルールは、今後の政治体制に変わっていった。

 それはヴェルズンが決めたと言っても良い感じがするモノだった。

 新領主が決まったら引き継ぎをして領主の退任となる。

 そして最後に発布と施行日を決めた。


「父上、領主で無くなっても、政党を作ることは構いませんよ」

「一回ワシ抜きで運営を任せようと思う。それに全てを持って行くことは出来ないが、この城に有るモノでワシらのモノは持って行きたい。国王に返すモノの整理も必要になる。その時間も必要だ」

「父上、そうですね。この城は私たちが居住し続けるより、領主が暮らす方が良いですね。そうなると私も引っ越しですね」

「ヴェルズンどの、引っ越し先はどうされるのですか? ヴェルゼーアは?」

「レファピテル、心配はいらん。ワシはある程度の広さの家を別に建てる」

「でしたら、協力させて下さい」

「間取りが決まったら頼む」


 ヴェルズンとの打ち合わせは、無事に終わった。

 そして、ヴェルゼーアは、自分の暮らす新しい家を探し出すことにした。

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