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102 北方を探検に行く

 ファリチスのことに携わらなく成ったので、私とアークシュリラはエマルダより北の地域を見に行くことにした。

 ヴェルゼーアたちには、サバラン聖教国を見てくるので数ヶ月は留守にすると伝えたよ。


 ビブラエスやレファピテルの話だと、そこはサバラン教の国であるらしいからね。

「ゼファーブル。イメロンってどんなとこだろうね」

「ずっと北らしいから涼しいかもね」

 さすがに今は夏だから、北だとしても寒いってことはないだろう。


「全員が信者なのかなぁ」

「そうかも知れないね。信者以外は街に入れなかったらどうする」

「信者に成るってこと?」

「そう」

「私はそうまでして、そこを見に行く必要はないと思うよ」


 エマルダを過ぎて数日が過ぎたころ、前方には山の連なりが遙か遠くに見えて来た。

 あの向こう側にも国があると、ビブラエスが言っていたなぁ。


「アークシュリラ、とっても大きな山脈だね」

「夏だというのに山頂付近は白くなっているね」

「雪が残っているんだね」

「ビブラエスがあの向こうにも国が有るって言っていたよね。そこは麺料理が豊富だとね」

「そうだったね。アークシュリラは行ってみたいの?」

「行けたら行きたいよ。だって麺料理だよ。食べたいじゃん」


 私たちは馬が自分から進むのに任せて、ゆっくりと進んでいる。

「ゼファーブル。右の方に人が倒れているよ」

 アークシュリラが右前方を指し示した。

「本当だね。まだ、生きているのかなぁ」

 冒険者がかなわない魔物の相手をする事があるので、人通りが少ない場所では野ざらしの遺体も落ちている。

 更にほとんどが、通った人に金品は取られている。


「近寄って調べようよ」

「判ったよ」

 私たちはゆっくりと馬を、その人に近づける。

 それは、たまに倒れているフリをして、近付く人を襲うモノもいるからだよ。

 そのモノはずっと倒れて待っているのでは無く、人が近付いてきたら相手が気付かないうちに倒れて近寄ってくるのを待っている。


「襲っては来ないね」

「そうだね」

 倒れている男は見たところ、血が流れている所はない。

 ケガをしてはなさそうだ。

 服装は質素だし、剣を持っては居ない。

 この人は、商人か私の同業者かなぁ。


「じゃ、降りて調べるよ」

 先ず武器やギルドカードなどを探し出して、アークシュリラに渡す。

 そして脈を取って看ると、生きているが少し遅いなぁ。


「どうする」

「治してあげないの?」

「ドコへ行こうとしてたかは判らないけど、この人はまた倒れるよ」

「ナンで?」

「だってお金も食べ物も持っていないからね。持っていたのはナニも入ってない金入れとダガーくらいじゃね」

「金入れがあるから物盗りに会った訳ではないよね」

「多分ね」


 治癒や回復などの魔法を使わなくても、起こして食べ物を与えればこの人は一応元気になる。

 このままにしておけば必ず死ぬ。

 どっちがこの人に取って良いのだろう。

 昔だったら有無を言わずに助けたけど、でも今は少し考えさせられる。


 お店を作って街道を眺めていた時に、重そうな荷物を担いで通る人。人買いに売られて行く人などを幾人と無く見て来た。

 どうしてそうまでして、私たちは生きないといけないのかと思った。

 その答えを、私はまだ見付けていない。

 自殺は良くないけど、この人が旅の途中で倒れたってことは、それが天命だよね。

 じゃ、私に見つかったのも天命だねと考えをまとめて、私は倒れている人を治すことにする。


 私はアイテム袋から気付け薬を取り出した。

「アークシュリラ、この付近にいる昆虫で良いから、捕まえられる。出来れば栄養豊富な芋虫かシェニールが良いけど、いなければイナゴかホイシュレッケでも良いよ」

 アークシュリラが魔法で土を掘り起こして、シェニールを10匹ばかり見つけた。

 このままでは食べてくれないと思うので、杖で原形が判らないようにすると同時に、シェニールの中に溜まっている老廃物なども取り除いた。


 そして気付け薬を嗅がせる。

「少ししたら起きるよ」


 その男が目を覚ました。

「どう、しゃべれそう?」

「ここは……」

 意識が朦朧としているのだろうなぁ。

「ここはイファーセル国の北、多分、エンラント王国の西だよ」

「……」

「ナンで倒れていたの」

 私が聞くと同時に、その男の腹が鳴った。

「そう言うこと。じゃ、これを食べて良いよ」

 さっき作ったモンを与える。

 通常の食い物よりこの場合は、見た目を気にしなければ昆虫の方が良い。


「ありがとうございます」

 男はひとくちひとくちあじわうように食べている。

 さすがに一気に喰うことはしないよね。

 半分を食べて頭を下げた。

「御馳走様でした」

「それで、さっきの質問だけど、ナンでここに倒れていたの?」

「私はイファーセル国のモノです。名前は勘弁して下さい」

「言わなくても、カードとかは預かってるから良いよ」

 その男は自分の持ち物を確認して、言った。

「金入れは良いですが、カードと書状だけは返して頂けませんか」

「イールグッドが持っていたのはこれだけだよ」

 アークシュリラがダガーと空の金入れ、そしてギルドカードを差し出す。


「本当ですか」

「この状態で、ウソを言う必要が私たちにあると思うの?」

「そうですね。そうなると無くしてしまったと言うことかぁ」

 男は地面にうつ伏せて、右腕で地面を数度叩いた。


「無くしたモノはそんなに大切なモノなの? ナンなら私たちが探し出すのを手伝っても良いよ。で、どんな書状なの」

 アークシュリラはサバラン教の国に行くより、こっちに興味が有るようだ。


「私はイールグッドと言います。イファーセル国で通信使(オルドナンツ)をしています――」

 イールグッドは切羽詰まったのか、それとも藁をも掴む思いなのか私たちの素性も確認せずに語った。


「無くしたモノの外観は判ったけど、私たちの素性を聞く前に言っちゃダメだよ」

「いいえ。私の様な見も知らないモノに食料を分けてくれましたので、悪人ではないと思いましたよ。それに文章の内容までは喋ってませんよ」

 内容をしゃべる様だったら、通信使(オルドナンツ)失格だと思う。


「で、話にあったそのマークってガーゼル辺境伯のモノだよね」

「ご存知なのですか」

「良く知っているよ。で、その文章を探すのに期日は有るの、ゆっくりでも良いの」


「最悪でも一週間です」

「イールグッドは内容を知っているの」

「詳しくは知りません」

「それで犯人は判るの? 国を出てから倒れる迄に誰かに襲われたとかは?」

「全く心当たりは無いです」

「だったら三人で一緒に探すのは効率的で無いから、明日の夜にここに来て」

「ここと言っても、目印が有りませんが」

「だったら、あなたが魔法で作れば良いよ。私たちはそれが無くても判るから要らないよ」

 イールグッドは魔法で蟻塚の様なモノを作った。

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