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101 新しい長にアリマーズがなる

 新しい(おさ)を決めるに当たって今回は私たちの中からではなく、常時いるオーラガニアから来たモノたちから決めて貰うことは事前に言ってある。

 オーラガニアのものたちも当初はとまどっていたが、すんなりと(おさ)はザスティーニではなくアリマーズがやることに決まった。

 私たちはザスティーニと折衝することが最初から多かったから、オーラガニアから来たメンバーの中で中心的な人物かと思っていたけど違った様だ。


 常時いると言っても(おさ)だけが仕事では無いから、船で荷物の運搬をするためにここにいないこともある。

 それで一応、(おさ)の代理も決めている。

 国でないから、その他の役職は必要なら決めて貰えば良い。

 私たちだけの時は、代理すら決めていなかったからね。


 私たち以外に(おさ)をやってもらうと言っても、私たちが何処かに行くと言うことでは無い。

 今まで通り、ファリチスで暮らし続けることには変わりない。


 ヴェルゼーアもこれで肩の荷が下りて安心した感じがする。

 (おさ)を降りて自由になったからと言っても、相談されれば助言もするし、打ち合わせに呼ばれることもある。

 更に言えば、最初にここに住んで居たと言うだけで、私たちから(おさ)を選び続ける必要はない。

 折角、多くの人々が新しく来たのだからね。

 人って習慣になっている事を変えるのを嫌がる。それでずっと同じことを続けていられれば良いけど、そうは言ってられない。

 変わっていくのも必要だ

 アリマーズに(おさ)が変わったことで、お店を毎日やるとかもっと漁を真剣にやるかは判らないが、良い様に変わっていけば良いと思う。


 そんなことを思っていたら、ハルメニア王国から酒造りのモノが何名かやって来た。

 ヴェルゼーアとしては自分が(おさ)の時に、自国民を呼ぶのはやめていたのだろう。

 いくら研修と言っても一週間程度で帰る訳では無い。

 更に、自分たちにとっては仲間であるが、これからどんどん知らないモノがやって来るのかなぁと言った不安感を私たちに与えかねないからね。


「ヴェルゼーア。ハルメニアでは甘藷は取れるの」

「栽培出来ると思うが、作って見ないことにはなんとも言えないな」

「甘藷がダメだと、お酒が造れそうな作物ってあるの」

「トウモロコシで出来ないかと考えても居るが、そうなると人々が食べる分が減るので問題だな」

 お酒造りより国民の食糧の方が大切だ。

 さすがに、トウモロコシが無いから酒を呑めとは言えない。


「糖竹は?」

「あれは育てるのは無理だろうな、砂糖も作れるから出来れば良いのだけどもな」

「そうかぁ。育たないんだったらダメだよね」

「でも、ハルメニア王国は広いから作れる処もあるかも知れないし、活用していないだけで、それに似た様な作物もあるかも知れないからな」

「そうだね。ブドウは育つんでしょ。だったら育つかもよ」


「まあ、一通り研修が終わるまでにビブラエスが捜索に行くと思うよ」

「お酒造りが本格的に成ったら、ここのが売れなくなるね」

「そうかも知れないが、ブドウもこことハルメニア王国では品種が違う。気候が違うからだと思う。だから同じ様に酒を造ったとしても出来るモノが違うってこともあるよな」

「そうなるとカペランドが忙しく成るね」

「上納金ではないが、少し納めさせるか」

「それはアリマーズたちが決めることだよ」

「そうだったな」

 ヴェルゼーアは大きな声で笑った。


 ヴェルゼーアの云ったとおり、エマルダでは同じカレーでもごはんよりうどんの方が人気がある。

 麺料理は全般的に、汁が粘度を持ったモノが人気があるよ。

 それはここより寒いからかも知れないね。

 また、ジャガイモはここの周辺より多く生産されているから、ポテトチップスやフライドポテトは安く手に入るよ。

 グラタンもジャガイモのヤツは安いけど、魚介類は市場でも少ないのでシーフードだと高級品に成っているよ。

 たまに、ダルフさんにお土産で海産物を持って行くと、奥さんに非常に喜ばれる。


 馬で二週間くらいの所でもこうなのだから、ハルメニアだったらお酒以外の料理やお菓子も似ていないモノに成るかも知れないね。

 酒粕があるから、米が有るハズだよね。

 そうなるとカレーライスは人気が出そうだし、チャーハンやピラフ、ピラフが出来ればパエリアやドリアとかも作れると思うよ。


 しっかりここで研修を受けて、ハルメニアで確実に料理を広めて欲しい。

 もしかすると、団子とかも作るかもね。


 半年が過ぎてヴェルゼーアと甘藷のことを話したことすら忘れたころ、ヴェルゼーアがやって来た。


「嬉しそうだけど、どうしたの」

「私の父の領土で甘藷を作ることが出来たと報告があった」

「よかったね」

「栄養豊富な土地より、少し痩せた土地の方が良いようだ。これで今まで不毛の土地だった処でも作物が育てられる。甘藷は酒の原料以外にも多少なら食事にもなるからな」

「甘いから食べ続けると飽きるんじゃないの?」

「それは今後の課題だな」


 アークシュリラが暇そうに歩いているのが目に入った。

 私は窓を開けてアークシュリラを呼んで、ここに来て貰った。


「ゼファーブル、ナニ?」

「甘藷って料理に使えるの?」

「甘藷?」

「そう。お菓子でなく、普通の料理に成るかってこと」

「天ぷらにしても美味しいよ」

「天ぷらか、良いな」

「甘藷を粉にしたら、くず餅の様なモノも作れるよ」

「あれを石臼とかで粉にするのか?」

「違うよ。甘藷を切って水に浸けておくと白く濁ってくるから、半日くらい放って置いて沈殿したモノを乾燥させるんだよ」

 ヴェルゼーアは真剣にメモをとっている。


「出来た粉がくず餅に成るのか? それなら葛粉と同じ様な使い方も出来るな」

「出来るよ。ジャガイモから作った片栗粉の代わりにも成るよ。でも、味は好みだね」

「そうか、そう言った使い方も有るんだな」


「さっきヴェルゼーアが云ってた石臼で挽けばパンやクッキーにも使えるよ。でも小麦粉は必要だけども、使う量は減らせるよ」

 その後、アークシュリラの家に行って様々なお菓子などを作ったよ。


 アークシュリラが作り方を言って、ヴェルゼーアが作業をしている。

 出来あがった料理はどれも素晴らしかったよ。


 当然、甘藷を水に漬けて出てきたモノを粉にしたモノも、甘藷自体を粉にしたモノも無かったので私が杖をかざして作った。

 それとは別に、アークシュリラが料理を作っている間に出来ると云うので、甘藷を適度な大きさに切って水に浸して置いたよ。

 試食が終わってからヴェルゼーアはそれの水を捨てて、沈殿して残ったモノを乾燥させて粉も作っていた。

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