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99 褒美を辞退する

 ナゼ、オーラガニアが私たちを捜索しているのか、それを調べにビブラエスがオーラガニアに行っている。

 その間、私は矢の改良をしていたが、みんなも無為に時間を過ごすのでは無く、この街や周辺でイロイロなことをしていた。

 それは空中から攻撃をしてくるモノに対してどうやって戦うかやどんな支援が出来るかをそれぞれで研究をしていた。

 それとは別に隣接の村々に出向いて新しいレシピを教えたり、逆に教わったりもしている。


 ビブラエスは乗船して行った船で戻ってきた。

 えっ、もう帰って来たの!

 それで、私たちは打ち合わせをする事に成った。


「先ずオーラガニアで我々を探していたのは、ジャイアントヴェスペをあれだけ退治したからだ」

「ギルドからあれだけのお金を貸してくれと言われれば、理由を聞くよな」

「それで元首は我々のした行為に報いたく、オーラガニアで最高の褒美である上級騎士に任じようとした。それで、先ずギルドに確認したが居所が分からなかったので国内を捜索していた訳だ」

「上級騎士が最高なのか」

「そうだ。あの国は貴族制でないから、爵位などはない。でも、上級騎士は生涯に亘って手当てを受け取れて、政府機関でも自由に出入りが出来るようだ。ハルメニアで云うところの一代限りの準男爵の様なものだな。それ以外だと勲章だけの名誉国民しかない」

「その二つしかないのか?」

「他にも各官が褒美を出すが、元首には主にその二つしかないな。それで我々を探していた訳だ」


「それに成ったら不都合はあるのですか?」

「不都合と云うほどではないが、国家が危険に成ったら声が掛かる。応じる応じないかは自由だが、住んでいる所は毎年報告しないとならなくなる」

「それはそうでしょうね。生涯に亘って手当てを出すのですから、生死の確認は必要でしょうね」

「そうだな。それで、みんなはどうしたい」


 みんなの意見は、上級騎士にならないことでまとまった。

 そして、ファリチスにいる間は、どこからも褒美などは一切もらわないと決めた。

 それはハルメニアでも同じと云うことを確認したよ。

 ファリチスを出て行けば貰っても良いと言うことだが、そんな事態にいつかは成るのかなぁ。

 そう成ったらその時だね。


 我々としては任じてもらう必要もないから放置しても良かったが、このままにして置くとカペランドたちに影響がでそうなので、ヴェルゼーアはカペランド宛に返事を書いた。

 手紙が遅く成った理由も入れてあったよ。

 それともう一通ソルシード宛に、我々に報賞や褒美を与えると風聞に聞いたが、それらを一切断ると記した手紙も書いた。

 国を運営しているモノに直接手紙を書くのも問題がありそうなのと、カペランドから渡してもらうとカペランドが怪しまれるといけないのでソルシードにした様だ。


 その後、船でオーラガニアへ行き来しているモノに確認した所では、私たちの旗を掲げての入港も以前とナニも変わらずに出来ているそうだ。

 それに荷物の積み降ろしやカペランドの倉庫など、特段、問題に成るようなことは起きていないとも云っていた。


 今回のジャイアントヴェスペの件は、オーラガニアではずっと悩みの種と云うことだった。

 退治した数こそ1万ちょっとだが、話し合いをしてジャイアントヴェスペが街道沿いに姿を現すことを少なくしたからね。

 それは私たちが勝手にやったことだったが、その国や街にとっては重大な問題が解決したと言う場合もある。

 そうなると元首や領主としては知らん顔は出来ないよね。

 やっぱり褒美を与えるのが、一番やり易いかなぁ。


 だからと云って、私たちは各国の治安を守ることを使命にしている訳ではない。

 次は退治に行かないかもしれないから、そんなモノをもらえないよね。

 ただし、チーズとかバターなどの素材なら、お礼として有り難く受け取るけどね。

 もちろん、ずっとただで貰い続けることはしないで、必要なお金は次からは支払うよ。


 オーラガニアの方も特に問題はなさそうだ。

 これで以前の様な日常に戻れるが、そうなると私がしなければならない事は一気に無くなる。

 薬のストックは潤沢にあるし、醸造もネービアとペトリフスが滞りなくやっている。

 私がいないとすすまないことは、弓を引くための筋トレしかない。

 まぁ、ヴェルゼーア以外も同様で、時間を浪費しているけどもね。

 ヴェルゼーアは、ザスティーニに留守中の代理は頼むけど、さすがに仕事を分担していないからね。


 こう言った悩みは、物事が順調って云うことだよね。

 毎日、問題が発生したり、事件ばかりあったりすると疲れてしまう。


 朝になって目覚めて杖を見ると、いつもは広げている羽が丸まってナニかを温めて居る様だ。

 まぁ、変われと念じれば、変形するから形が変わっても驚かないけど、今回は私が変われと思った訳ではないのに変わった。

 二匹の蛇がその羽を守る様に覆っている。

 杖は毎夜、この形状になって休憩している訳ではない。

 貰ってから初めて見る形だ。

 また、羽を広げる日が来るのか、それとも蛇だけに成ってしまうのかは判らない。

 多分、無理に元の形になる様に念じれば羽を広げるだろう。

 しかし、それをやっても意味はない。

 自分から広げてくれなければね。


 幸いなことに杖が無ければ出来ない作業は、この村に居る間は少ない。

 錬金術は杖を使った方が早いが、決して出来ない訳ではない。

 魔法も普通に放てば威力が弱くなるモノもあるが、意識して放てば同様の威力で使える。

 ただこの状態が、何日くらい続くのかが私には判断することが出来ないけどね。

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